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真実に辿り着く

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 「マカロンさん、ありがとうございます。早速、お父様に報告をしてきます」


 リリーちゃんは颯爽と調理場から姿を消した。


 「リリーちゃんと一緒に王都に行くなら、バナーネから逃げる必要もなかったわ。でも、いまさら取り消すことも出来ないし、3人で王都に向かうしかないわね」


 私は大きな不安を抱えながら調理場の椅子に腰をかける。


 「あなたも今日からはビスケット様の配下になったのよ」

 
 パンケーキちゃんはビスケットを通じてヒパティカと仲良くなったみたいである。


 「はぁ~い」


 ヒパティカは笑顔で返事をする。


 「ビスケット様の配下になったあなたに重大な任務を与えるわ」

 「はぁ~い」

 「重大任務とはパンケーキ様に捧げる歌を覚えることよ!」


 パンケーキちゃんはドヤ顔で言う。


 「はぁ~い」


  ヒパティカは、嬉しそうに返事をする。


 「ビスケット様~ビスケット様~世界で一番甘~いビスケット様~♪さぁ続くのよ」

 「ビチュケットちゃま~ビチュケットちゃま~しぇかいじぇいちゅばんあま~いビチュケットちゃま~」

 「感情をもっと込めるのよ」

 「はぁ~い」

 「ビスケット様~ビスケット様~貯蔵庫の~バナナ~は甘くて~素敵だったけど~ビスケット様~には~勝てないのよ~」

 「ビチュケットちゃま~ビチュケットちゃま~ちょぞうこの~バナナ~は甘くて~ちゅてきだったけど~ビスケットちゃま~には~かちぇないのよぉ~」

 「いい感じで歌えているわね」

 「はぁ~い」

 「まずはこの歌詞をきちんと覚えるのよ!」

 「はぁ~い」


 ヒパティカちゃんがビスケット様に捧げる歌を覚えている時、私は椅子に座ってふさぎ込んでいて、危険の芽を摘み取る事が出来なかった。


 30分後


 私はまだボーっとして椅子に座っていた。


 「マカロンさん、お父様から王都へ行く許可をもらってきました」

 「そうなのね」


 私はボーっとしているのでリリーちゃんの話しはうわの空であり空返事をする。


 「お父様は護衛の兵士を数名つけると言いましたが、パンケーキ様がいますのでお断りしました」

 「そうなのね」

 「王都への旅路の計画も私が立てましたので、マカロンさんは大船に乗ったつもりでいてください」

 「そうなのね」

 「マカロンさん、話は変わりますが一つだけ気がかりなことがあるのです」

 「そうなのね」

 「先ほどから妹のヒパティカが歌っている歌の歌詞に奇妙なフレーズがあるのです」

 「そうなのね」

 「もしかしてマカロンさん・・・お父様のバナナを盗んだのはパンケーキ様なのでしょうか?」

 「そうなのね・・・えぇぇぇぇぇぇーーー!今、リリーちゃんなんて言ったのかしら?」


 私は驚きのあまり椅子から転び落ちる。


 「パンケーキ様とヒパティカが歌っている歌詞の一部に貯蔵庫のバナナは甘くて美味しいというフレーズがあります。このフレーズから推察される事は、パンケーキ様が果樹園の貯蔵庫を破壊して、バナナを盗んだと自白しているように思えるのです」

 「・・・」

 「マカロンさん、なぜ?黙り込むのでしょうか?もしかして、私に何か隠し事をしているのでしょうか?」


 リリーちゃんは迫力満点の顔で私に急接近する。


 「実は・・・貯蔵庫のバナナを盗んで食べたのはパンケーキちゃんなの」


 迫力に負けた私は素直に自白した。しかし、今から精一杯の言い訳をして、私だけは罪に問われないように努力するつもりである。


 「リリーちゃん、でもね、これには深い事情があるのよ。それに、私はこの件に関しては何も関わっていないのよ」

 「マカロンさん、何も言わなくても私には全てわかってしまいました」


 私にはリリーちゃんの顔が悪魔のような形相に見える。


 「・・・」


 私はリリーちゃんの雰囲気に飲み込まれて、ビビッておしっこを漏らしそうである。


 「信じて、私は何も悪くないの・・・」

 「マカロンさん、言い訳などききたくありません」

 「ひえぇ~~」


 私は恐怖のあまり目の前が真っ暗になり死を覚悟した。


 「マカロンさん、なぜ、初めから私に正直に話してくれなかったのですか?そうしてくだされば、ダンディライオン家も家族会議を開かずに事を穏便に済ませる事ができたのです」

 「ごめんなさい」

 「いえ、謝る必要はありません。見抜けなかった私が悪いのです」

 「え!どういうこと?」


 リリーちゃんの言葉に私の理解が追いつかない。


 「ありがとうございます。マカロンさん、すべてこうなる事を見越しての算段だったのですね」

 「???」

 「先ほどの発言から推測すると、これは、マカロンさんの計画ではなくパンケーキ様の独断の計画だったのですね」

 「そ・・・そうよ。すべてパンケーキちゃんが立てた計画なのよ」


 リリーちゃんの言っている意味は理解できないが、私は自分が共犯でないことをアピールする。


 「やはり、そうでしたか・・・」

 「そうよ!そうなのよ」


 私はホッとため息をついて一安心した。


 「さすがパンケーキ様です!」

 「え?」

 
 私はキョトンとする。


 「パンケーキ様は、お父様が作ったバナナでは誕生祭にて王家甘味勲章を得る事は不可能だと感じたのでしょう。だから、パンケーキ様は貯蔵庫を破壊して、バナナを奪ったのでしょう」

 「え?」

 「パンケーキ様は、前人未到の王家甘味勲章を2年連続受賞するという快挙を成し得るために、ダンディライオン家に試練を与えたのでしょう」

 「え?」

 「だから、何も言わずにバナナを奪って、ダンディライオン家がどのように対処するのか見定めていたのですね。しかし、慈悲深いパンケーキ様は、私に解決の糸口を見出すためのヒントは与えてくれた」

 「え?」

 「それがビスケットってことだったのですね。パンケーキ様、本当にありがとうございます。ダンディライオン家はパンケーキ様から与えられた試練を無事に乗り越えることが出来ました。パンケーキ様の期待に応えるためにも、私はビスケット作りを完璧にマスターして、王家甘味勲章を取りたいと思います」


 リリーちゃんは感無量である。


 「が・がんばってね」


 私はリリーちゃんがとんでもない勘違いをしてくれて九死に一生を得た。


 


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