【魔力ゼロ】と嘲笑されて男爵家を追放された私。――実は、この偽りの世界を修復する『古代の究極魔法』を使える唯一の器でした。

ninjin

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転移の球体と赤い発光の囁き

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 通路を防ぐ巨大な球体を前にして、ハスクは動かそうと試みた。体重をかけ、力任せに押すが、球体はびくともしない。直径五メートルほどのその岩が、非力なハスクの力で動くはずもなかった。

「無駄な行為だ。物理的な押力でこの構造体を動かすことは、貴様の身体能力では不可能と解析される」

 ハスクの無謀な行動に、アルカの青い瞳は理解不能というシグナルを灯した。

 アルカは球体の解析を始めた。

「この球体の表面は、天然の石ではない。極めて高い技術で加工されており、ドワーフ族が古代に使用していた転移装置と酷似している」

「転移装置……!」

「この装置を使用するには、地下の壁にマナを注いだように、球体の特定のマナ鍵穴にエネルギーを供給する必要がある」

 アルカはさらに解析を続けたが、どこにも鍵穴らしき凹凸を見つけることはできない。

 ハスクは一歩前へ出ると、自信に満ちた笑みを浮かべた。

「私に任せてよ」

 ハスクは手のひらに、先ほど成功した米粒ほどの小さなマナの球体を集中させる。そして、特に意味もなく、勢いよくジャンプした。

「ここよ!」

 ハスクは球体の適当な位置に、マナを集めた手を押し付けた。次の瞬間、ハスクの体が光を伴い、球体の中へ吸い込まれていく。アルカはその光景を見て、一瞬で論理に到達した。

「理解した。鍵穴はない……。全てが鍵穴だったのだ」

 アルカはすぐに、掌にマナを集束させ、球体の表面に触れる。ハスクと同じように、彼の体も光を伴い、球体の中へと吸い込まれていった。


 二人が吸い込まれた先は、陽光が降り注ぐ森の中だった。背後には、彼らが辿ってきた洞窟への入口を示す球体が静かに鎮座している。この球体に触れれば、洞窟へと戻れることもすぐに理解できた。

 転送先に着くと、ハスクはアルカに向かって、勝利を確信したような顔で言った。

「転送できたわね。私のおかげよ!」

 アルカは周囲の環境解析をしながら、感情のない分析結果を述べる。

「マナを押し当てる部分は、球体の表面のどこでもよかったのだ。貴様がジャンプしたのは、無駄な体力を消耗したに過ぎない」

 ハスクはアルカの冷たい対応に、頬を膨らませてすねた。
 
「すこしくらい褒めてくれてもいいのに……」

 アルカはハスクの拗ねた態度には一切の関心を示さず、転送された場所の解析を続ける。

「この植生とマナの流れから、ここはエルフの里があった場所であることは間違いない。しかし、エルフが生活している痕跡は全くない」

 アルカはさらに続けた。

「おそらく、五〇〇年も村は放置されたまま森へ変貌した。ここにはもう何も残されていないだろう。五〇〇年前の痕跡を探すのは、無駄な探索となる」

 アルカの分析は正しい。ハスクは空腹を感じ、生存プロトコルが稼働し始めている。

「私は食事を必要としない。マナがエネルギーだからだ。だが、お前ら人間は違う。今はお前の生命を維持するための食べる物を調達する必要がある。我々は戻ることはできない。先へ進むしかない」

 ハスクの直感が、アルカの論理に抗った。

「絶対に何かあるわ」

 ハスクは根拠のない確信だけを信じて、アルカの判断を無視して辺りを探索し始めた。アルカは無駄な行為だとわかっているが、何も言わずにハスクのあとを追う。ハスクの探索は、アルカの言ったとおり、何の成果も得られない徒労に終わった。

「無駄な探索が終わった。先へ進もう」

 アルカがそう告げた、その時だった。ハスクは突然、大声をあげた。

「アルカ、あれを見て!」

 ハスクが指さしたのは、一本の朽ちた老木だった。その中心は折れて空洞になっており、暗い穴の奥に微かに光る物体がある。ハスクは走り出すと、老木の空洞の中に手を差し入れた。彼女が手に取ったのは、水晶のような透明の塊だった。

 ハスクがそれに触れ、手に取った瞬間、水晶のような塊は『パキリ』と割れて砕け散った。その中から、赤く発光するマナに似た発光体が出現する。緑色ではない、炎のような紅い光。その発光体は、ハスクの中へ吸収された。

『お待ちしておりました、エレメンタルマスター』

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