【魔力ゼロ】と嘲笑されて男爵家を追放された私。――実は、この偽りの世界を修復する『古代の究極魔法』を使える唯一の器でした。

ninjin

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飢餓と、待望の守護者

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 鬱蒼とした森を抜け、広大な草原に入ると、ハスクの空腹は一気に限界を超えた。地平線の先に人の営み、すなわち食料の存在を見たハスクは、使命や運命など忘れ、無我夢中で駆け出した。ついさっきまで動けないと訴えていたとは思えないほどの猛烈な勢いだったが、それはマナによる最適化プロトコルを使っていない、ハスク本来の貧弱な体力での最後の奮闘だった。そして、村の入り口、石を積んだ粗末な門の前で、彼女の体は限界を迎えた。ハスクは石畳の上に倒れ込むように座り込み、乾いた咳を繰り返しながら、呼吸を整えることしかできない。遅れて、アルカが静かに到着した。彼はマナの力で身体機能を最適化しているため、全く疲れを知らない優雅な姿のままだ。

 アルカは目の前で息切れしているハスクを冷静に分析した。

「体力低下。疲労物質の過剰な蓄積。現在の生体機能は、燃料不足による緊急停止状態と解析される」

 ハスクはぜえぜえと息を吐き出しながら、精一杯の力でアルカを睨んだ。

「ふふっ……そんなの、わかってるわよ」

 アルカはハスクの行動を理解できない。

「理解不能だ。体力低下の上に燃料不足であると認識しながら、回復プロトコルを実行せず、あえて燃料を使い尽くす行動を選択した。貴様の生命維持システムは非効率的だ」
「もう、動けないわ……」

 ハスクは力なく呟き、空腹で腹の虫が泣く。

 二人がそのような奇妙な会話を交わしていると、村の門番の小屋から、一人の老いた男性が静かに近づいてきた。老人は白髪を束ね、皺の深い顔には穏やかな知性が宿っている。老人はハスクとアルカを一瞥すると、深く頭を下げた。

「お待ちしておりました。正当なる器様と、その守護者様」

 老人の言葉に、ハスクは困惑して口を半開きにした。老人の言葉の意味を理解できず、ただポカンとしている。しかし、アルカは違った。彼は老人の言葉と、周辺の環境データを瞬時に解析する。

「解析完了。この村はエルフ族の意思を託されたコミュニティである。そして、村の周辺には、マナの器を持つ者もしくはその守護者しかその存在を認識できない結界が施されている」

 アルカはハスクに向き直り、簡潔に説明した。

「我々がこの村を視認できたという事実こそが、貴様がマナを扱える器であり、俺がその守護者として認識された証拠だ。老人の問いかけに、異論はない」

 アルカは老人に視線を戻し、一切の無駄なく命じた。

「貴殿の指示に従う。まず、ハスクに食事と衣服を与えよ。生命維持のための最優先事項だ」

 老人は静かに微笑むと、「わかりました」とだけ言い、二人を村の中へと案内した。


 老人の家に通されたハスクには、すぐに焼きたてのパンとシチューが差し出された。アルカは食事は不要と断り、ハスクが食事をする間も、周囲の構造と老人の行動を静かに解析していた。ハスクは、その素朴だが、心の底から満たされる食事に感激した。男爵家の古い小屋での日々では、こんな温かい食事を口にすることはなかった。食事が終わると、老人は二人に服を用意した。

「これは、はるか昔、エルフ族から我々が預かったものです。ドワーフ族の技術で作られたと聞いております」

 ハスクとアルカは、みすぼらしいメイド服と汚れの目立つ服から着替える。

 ハスクに用意されたのは、淡い藤色を基調とした、動きやすい上下一対のローブだった。ローブといっても、裾は膝丈で、分厚い生地がしなやかに体に沿う。肩や肘、膝のあたりには、硬質な革のような素材が補強として縫い付けられており、見た目からは想像できないほどの頑丈さを感じさせた。腰には、革製のベルトと、小さなポーチがいくつか付属している。デザインはシンプルながらも、機能美を追求した、熟練の冒険者が身に着けるような風格があった。
 そして、アルカの服も、ハスクと全く同じデザインのローブだった。ただし、色は深緑色を基調としており、彼の青い瞳と白い肌に深みを与えている。袖や裾の長さ、補強材の位置までハスクのローブと一致しており、それは二人が一つの目的のために作られた対の存在であることを示唆しているようだった。

 アルカは、自らが身に着けた服を瞬時に解析する。

「この繊維は、マナで作られた糸が緻密に織り込まれている。一般的な魔力魔法を通さず、極めて高い強度を持つ。これは、貴様の身体を保護し、マナの運用を補助するために設計された戦闘用装備だ」

 みすぼらしい格好だった二人は、これにより、ようやく普通程度の身なりと、高い防御力を手に入れた。

 老人は準備が整った二人を連れて、村の裏手にある小さな祠へと案内した。

「先祖代々、この祠を守り、あなた方を待ち続けていました」

 二人が祠に着くと、祠に祀られていた小さな水晶が、甲高い音を立てて割れた。その中から、脈打つような紅い光が現れた。紅い光は、祠の天井の下で妖しく揺らめき、ハスクの体に引き寄せられるように吸収された。その直後に厳かな声がハスクの脳へ響く。

『お待ちしておりました、エレメンタルマスター』

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