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正体がバレる

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 「ハツキちゃん!火炎竜王の抜け落ちた鱗を持っているの?」

 「抜け落ちた鱗???いえ、持っていないわ」

 「そうよね。私の聞き間違いだったのね。火炎竜王の抜け落ちた鱗は、耐えず灼熱の炎を吐き出して、持ち帰るのには特別な魔道具が必要になると聞いた事があるわ。火炎竜の鱗と同様に入手は不可能ね。でもね、火炎竜王の抜け落ちた鱗は、火炎竜の鱗10個分に相当する価値があり、私の呪いも解除することができるのよ」

 「そうなの・・・あの火炎竜王めぇ~どうせくれるなら火炎竜王の抜け落ちた鱗にしてくれればよかったのに、今から文句を言いに行ってやるわよ」


 私は拳を握りしめて火炎竜王に説教をすることを決意した。


 「ハツキちゃん何をそんなに怒っているのかしら」


 私の怒りのポーズを見たブランシュ王女は心配そうに私を見つめている。


 「いえ、なんでもないわよ。でも、火炎竜王の鱗ならあったのに本当に残念だわ」

 「えっ、火炎竜王の抜け落ちた鱗でなくて、火炎竜王の鱗なの?」

 「そうよ。でも、使い物にならないから踏みつけて潰しちゃうわ」


 私は使い物にならない火炎竜王の鱗を踏み潰して、込み上げてきた怒りを抑えようとした。


 「本当に火炎竜王の鱗なの」

 「そうよ。間違いないわ。火炎竜王の抜け落ちた鱗じゃなくてごめんね」


 私は頭を下げて謝った。


 「ハツキちゃん・・・火炎竜王の鱗は抜け落ちた鱗の数倍の価値があるのよ」

 「えっ」

 「私の呪いを解くには、正確には火炎竜の鱗10個とAランク以上の魔石が10個、もしくは火炎竜王の抜け落ちた鱗とAランク以上の魔石が5個。そして、火炎竜王の鱗なら、Aランク以上の魔石が一個必要なの」

 「えつ」

 「だから、あとは魔石さえあれば私の呪いを解けるのよ」

 「本当なの」


 私は床に投げた火炎竜王の鱗を拾い上げた。


 「ハツキちゃん、火炎竜王の鱗は王者ランクの素材よ。もっと大事に扱ったほうがいいわよ」

 「ごめんね。てっきり使えない素材だと思って捨てちゃいました」

 「・・・」

 「でも、これがあればブランシュちゃんの呪いも解けるのね」

 「そうね。でも素材を加工する前に、火炎竜王の鱗を私の体に当ててもらっていいかしら」

 「いいわよ。でも、何をするのかしら」


 私は火炎竜王の鱗を氷漬けになっているブランシュの体に押し当てた。すると、ブランシュを覆っていた氷が溶けて無くなっていく。そして、周りを見渡すと部屋の中の氷も消えていくのである。


 「ありがとうハツキちゃん」

 「呪いが解けたのかしら?」

 「いえ、違うわ。火炎竜王の鱗の力で水系魔法の効果を無効にしたのよ」


 水系魔法とは氷・水なのどの物質を利用した魔法のことである。


 「じゃぁ、呪いは解けていないのね」

 「そうね。でも、水系魔法の呪いだから、呪いの進行も抑えることができるので、体が楽になったわ。あとはAランク以上の魔石を用意できれば問題ないわ」

 「Aランク以上の魔石・・・そういえば」


 私は麦わら帽子に付けていた赤の魔石のブローチを外した。


 「これを使って」

 「これは何かしら」

 「Aランクの魔石よ。これがあれば呪いを解除することができるわ」

 「ハツキちゃん・・・ありがとう。でも、火炎竜王の鱗にAランクの魔石をどうやって手に入れたの???」

 「それは・・・」


 私はブランシュ王女に嘘はつきたくないと思った。私は本当は怪力で丈夫な体があるので、ブランシュ王女が思っているような悲劇のヒロインではない。この誤解を解く必要があると思っていた。でも、ここで私の正体がバレてしまうと、もう平穏な生活を送れないのではと不安でもあった。

 「実は・・・」

 「僕が用意したんだよ」


 私の胸ポケットからプリンツが飛び出してきた。


 「えっ、このワンちゃんハツキチャンのポケットの中にいたの?しかも、しゃべれるの?」

 「プリンツちゃん、どうして出てきたの?」

  
 私はプリンツの行動に驚きを隠せずに冷や汗がタラタラ流れ落ちてきた。


 「僕の存在を隠すのはもう限界だよね。だから、僕が全てを話すよ」

 「どういうこと?」

 「僕はハツキお姉ちゃんの守護魔獣のプリンツだよ。いずれ黒の厄災の王になるヴォルフ族だ」

 「黒の怪物のヴォルフ族・・・」

 
 ブランシュの顔が真っ青になり目が虚になった。


 「そんなに怖がらなくても大丈夫だよ。僕はハツキお姉ちゃんの友達は襲わないよ」

 「そうよ。ブランシュちゃん。プリンツちゃんは怖くないわよ」

 「でも、どうして・・・黒の怪物がハツキちゃんの守護魔獣になったの・・・あ!そういうことね。魔獣に守護してもらうには、様々な方法があると読んだ事があるわ。1番効果的なのは魔力を餌にして手懐ける事、しかし、ハツキちゃんは魔力量が0のはず。いや、魔力量が0になったと言った方が良いのかしら」

 「どういうこと?」

 「ハツキちゃん、私は全てわかってしまいました。なぜ、あなたが魔力量が0なのか」

 「・・・」

 「ハツキちゃんは、ヴォルフ族と守護魔獣契約をするときに、自分の一生分の魔力を授ける魔力奴隷の契約をしたのね」

 「魔力奴隷???」

 「本当に魔力奴隷契約が存在するなんて、私は今でも信じられないわ。でも、ハツキちゃんが魔力量が0なのが証拠ってわけね」

 「あの~さっぱり意味が・・・」

 「ハツキちゃん、どのような経緯で魔力奴隷契約によって守護魔獣契約をしたかは私は聞くことはしないわよ。でも、そんな残酷な契約をして、手に入れた貴重な素材と魔石を私に渡してもいいの」

 
 ブランシュはとんでもない誤解をしているが、成り行きに任せることにした。


 「いいわよ。それでブランシュちゃんが救われるなら」

 「ありがとう。初めて会う私のために、こんな大事なものを渡してくれるなんて。絶対にこのお礼はするわ」

 「お礼はいらないわよ。でも、一つだけお願いがあるの。このことは内密にしてね。プリンツちゃんの存在をみんなに知られたくないのよ」

 「そうね。ヴォルフ族と守護魔獣契約をしたなんて誰にも言えないよね。これは2人だけの秘密ね」


 こうして、プリンツの機転とブランシュ王女の勘違いで、私の怪力はバレることはなかったのであった。
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