異世界営生物語

田島久護

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相良仁、異世界へ転職!

この世ならざる者

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「まぁまてジン。今はそれよりこれから行う作戦の話をせねばならん」

 立ち上がって直ぐ教会へ向かいダッシュしたが、町長のその言葉に驚き足を止めた。教会から拉致されて既に一週間は経っている。町長の口振りからして国との話が纏まったのだろうか。

「村を攻めるんですか?」
「攻めるなど人聞きが悪い。私たちは村の北東に怪しい連中が居ると報告を受けたら行くだけだよ」

 にこやかにそう言う町長。村も気になるし、このままあの兄妹に抗議に行くのは後回しにして話を伺うべく頷く。するとここでは何だからと町長の部屋に移動した。

「先ず前にも話したが、あの村は他国からの政治犯など訳アリの者たちが昔から多く逃げ込んで来たところ、というのは覚えているか?」
「はい。自警団の人たちも……アリーザさんもそうなんですか?」

「その前に尋ねたい。お前は本当に記憶喪失の人間なのか? 正直に答えて欲しい。あの曰く付きの村に記憶喪失の人間が迷い込んで来たと言うのは疑問符が付く。何せルート的にあの方向は元不死鳥騎士団があった方向だし、今そこはこの世ならざる者アンワールドリィマン の巣窟になっていて暗闇の夜明けすら近寄らん。そんな方面から来たとなると警戒せざるを得ない」

 また謎の単語が出現する。騒動に巻き込まれている所為でまだまだこの世界の生物等を全く把握出来ていない。なのでそのこの世ならざる者アンワールドリィマン が居るとどう危険なのかもわからない。町長がそこまで危険視する存在、しかも暗闇の夜明けすら近寄らないなんて凄いのは間違いないんだろうけど、ここは正直に訊ねてみよう。

「申し訳無いのですがこの世ならざる者アンワールドリィマン とは何なのか教えて頂いても宜しいでしょうか。全く分からなくて」
「幽霊とも魔性の者とも違う、文字通りこの世ならざる者アンワールドリィマン と言うカテゴリーの存在だ。詳しい情報は人の形をした影で兎に角強いというものだけだ。侵略したり侵攻したりというのは今のところ確認されていない。以前魔法の暴発によって滅んだ国があるのだがそれの前後に現れたのだから仕方が無いが」

 情報も少なく未知に近い存在が占拠する場所から来たと聞けば、疑うのも無理はないと理解した。そんなヤバい場所の近くに転移させられたと今更知り震え上がる。割と難易度高い状況から生き延びたんだなぁ……ひょっとするとこの世界に来てやっと運が良くなったのかもしれない。

だがそれに喜んでも居られない。町長に説明するのに運が良かっただけでは説得力に欠けるので、ここは何と説明したものかと考えた。ふとノガミ師匠が頭を過ぎり、師匠はそう言う系統の人だったと思い出し町長には話しておこうと覚悟を決めた。

「町長、他の方には他言無用に願います」
「勿論」

「実は俺は」
「お待たせしました」

 丁度話そうとしたところでティーオ司祭とシスターが部屋に入って来た。それを見て俺は立ち上がり掴みかかろうとしたが、シスターに抱き付かれ動きを封じられてしまう。

「落ち着け、余計な話をするな。ジンはお父ちゃんの知人の子供って話にしておくらしいぞ?」
「何だそれ!?」

「町長、実は彼は」

 ティーオ司祭の俺に関するでっち上げ話が始まる。俺はゲンシ・ノガミの親友のソウジ・サガラの息子で、父親はこの世ならざる者アンワールドリィマン 退治の専門家で俺もそれに同行し世界を旅していたが、元不死鳥騎士団のアジトに出現したこの世ならざる者アンワールドリィマン たちは強力で、父親は死亡し俺も行方不明になっていたと言うものだった。

「そうか……あのゲンシ殿が弟子にしただけでなく秘伝の必殺技を伝授したと言うから何者かと思ったがそんな理由があったとは。これで他の者も納得しよう」
「出来れば内密にしておきたかったのですが、父がどうしても技を教えるときかなくて……」

 思いっきりノリノリで俺に教えるよう促した人物とは思えないな。どうやら町長の家に来た時に門兵の人とか町長が驚いていたのは、師匠が俺を弟子にしただけでなく必殺技まで教えたと聞かされたかららしい。

そして師匠はこの兄妹と違いしっかり事情を説明してくれていたのだ。ホントマジでここ出たら覚えとけよ! と思いながらこらえつつ話に同調した。

「す、すいません未だに記憶が戻らなくて」
「いや良いんだ。そう言う話なら納得だ。辛い記憶だから無理に思い出す必要は無い。気が済むまで町に居てくれ! バックアップするから」

 何だか面倒な方向に進まなきゃ良いなぁと考えながら、今はその話をしに来たんじゃないと思い出して話を戻すべくアリーザさんの名前を出してみる。すると三人とも黙ってしまった。

「そう言えばアリーザとも縁があったなジンは」
「そうだったんですね。なら避けては通れない」

「アリーザは元不死鳥騎士団を擁していた国の大臣の娘だったんだよ」

 シスターの言葉を聞いて驚く。更に町長から自警団の人たちはその大臣の子飼いであり、その国は不死鳥騎士団の壊滅と共に他国に侵略され、今は別の国になっていると言う。その後この国に流れて来て村の自警団を買って出たらしい。

彼らは自分の国を諦めていないらしく、元不死鳥騎士団のあったところで再建したいという野望を抱いていて、アリーザさんを旗印にお金を集めていたりしているようだ。

「で、我が国にも協力依頼をして来たが、その内容は到底受け入れられるものでは無かったので、村に滞在する許可は出したが協力は拒否せざるを得なかった。と思ったら今度は不死鳥騎士団を滅ぼした相手である暗闇の夜明けに協力を依頼したと聞いて頭を痛めたよ」
「錯乱していると取られても仕方が無い話ですよね。自分たちが国を失うきっかけになった者たちに協力を依頼するとは」

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