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第一章・引きこもり旅立つ!
第16話 引きこもり、初クエストの準備をする
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「あいつ何だよ」
「気持ち悪い」
小学校の頃、同級生達が体育座りで見ている中で、俺は一生懸命登り棒をし一番で下に降りた。
先生は他が登り切れて無かったので俺にもう一度登るよう言う。
するすると登りまた降りてくるともう一回登れと言われる。
そしてまた登って降りる。結局授業が終わるまでやらされた。
あの時の経験から例え上手く出来たとしても目立ってはいけないと悟った。
クラスの人気者を差し置いてするする登る俺を誰も称賛しなかった。
それから中学生になって孤立は続いたけど、弱いと更に虐げられると思って登り棒を見つけては登ってたっけなぁ。
「はひゃぁ!?」
俺は寝覚めの悪さにしかめっ面をした後、何気なく横を向くとファニーの顔が間近にあった。それで女性の様な悲鳴をあげてしまう。驚くだろう。親以外に隣で寝ていた覚えなんて二十年以上ない。
「ん……目が覚めたのか?」
ファニーは上半身を起こし右手で目をこすりながら俺にそう尋ねた。俺は顔を横に向けたまま硬直していた。何と言って良いのか解らない。普通なら役得だと思うだろうが、俺の場合見た目は完全に思いっきりファニーの方が下なのでおっさんだ。いや同年代だってビビる。
「さぁ朝ごはんを食べて路銀を稼ごうぞ」
ファニーは何も無かったかのように俺のベッドから出て背伸びをしている。
「そ、そそそそそうだよね」
俺は動揺を隠したかったが口は正直だった。機械のように上半身を起こしカクカクしながらベッドをから出た。
「何とか歩けそうか?」
ファニーがいつの間にか横に来ていた。凄い緊張するな。
「あ、ああ。な、なんとかいけると思いますです」
「ん?」
おかしな口調になっている俺の顔を覗き見るファニー。俺は首がグキッと音を立てるほどの速さで顔をそらす。そして悶絶した。凄く痛い。これは今日一日響きそうだ。
「歩けるのなら下に行こう。クエストに向かわねばならんからの」
「そ、そうだねぇ……あははは」
俺は自然にしようとしてまた不自然になり乾いた笑いをしつつ、部屋を出る。
「あらおはよう二人とも」
階段を下りるとミレーユさんの声が届く。綺麗な女性は声も綺麗だ。嫌な夢を見た後だから余計に清々しく感じやっと朝を迎えられた気になる。
「おはよう」
「おはよう」
俺とファニーはミレーユさんに挨拶しながらカウンターの椅子に腰かける。
「朝は軽めが良いかしら」
「それで。昨日色々あったからサッパリしたものが良いな」
「我もそれで」
「はい、今すぐ用意するわね。その間に依頼内容を確認して頂戴」
「了解」
ミレーユさんは奥へ下がり俺はカウンターの上に置かれていた依頼内容の紙に目を通す。昨日の件で依頼内容の掛かれた紙を俺が持っていないだろうと考えて準備してくれていたのだろう助かるなぁ。
俺は感謝しながらじっくりと読むと依頼内容はこうだった。
”スライムが大量発生して移動する為、
付近の畑に被害が出ているので追い払って欲しい”
なるほど。スライムっていうのはぷにぷにしたグミのような感じを想像していたが、畑に被害が出るとなると粘液を出し地面を移動し易くしているのかな。
強酸を吐いたりするかもしれないからちょっと心配だ。折角貰ったばかりのリードルシュさんの剣が解けたりしないだろうか。
「大量と言う数が解らんが、まぁコウなら余裕だろう」
「どうだろう……数が解らない点も不安だし。ファニーに火を吐いてもらうのも手だけど、そうなると焼け野原になるか」
「うむ。我も何か武器を持った方が良いな」
「そうだね。今後も考えると何かあった方が良いけど、ファニーの力に耐えられるものも中々ないんじゃないかな」
「我自身武器を所持した記憶が無いから解らん」
「爪と炎だけで十分強いからね竜は。取り敢えず安めの武器を幾つか手に入れて試してみようか」
「後でリードルシュの所へ寄ってからクエストに出ようぞ」
「了解」
結論が出たところでミレーユさんが戻ってきて、焼いたパンの上にハムが乗っているものと小さな器に入った野菜が出てきた。
この世界にもパンがあるのか。文化の進み方も世界が違っても変わらない点が多いなと感じる。
それはそれで有難いし何だか人類の過去を旅しているみたいで楽しい。
「依頼内容は大丈夫かしら」
「勿論。ミレーユさんに気を使ってもらったのが解る内容だった」
「ふふふ。そう言ってもらえると何よりだわ」
「ミレーユさんはこの仕事長いの?」
「そうね小さい頃から手伝っているわ。今は父が隣街に出向いているから私がメインになっているけど、普段はギルド長の父がメインよ」
「そっか……そうなるとお父さんが帰ってくるとミレーユさんは、サポートになるのか」
「安心して頂戴。貴方達は私が受け持つから。他の冒険者とは少し違うようだしね」
「それは有り難いね」
「うむ。知らない人間に多く会うとコウは人酔いするからの」
「そうかもしれないわね」
「酷いな二人とも」
俺とファニーとミレーユさんは笑いあう。引きこもりネタも意外に役に立つ事もあるもんだ。
俺とファニーは食事を済ませ二階で身支度を手早く済ませると、ミレーユさんに挨拶をして冒険者ギルドを発ちその足でリードルシュさんの店に顔を出すと
「昨日のはやはり貰い過ぎだ。ムチにブーメラン、剣に斧も付けておく。その娘の力加減を試すのには支障あるまい」
と言われて武器を色々渡して来た。俺が遠慮するとどれかその娘に
合ったものがあれば定期的に購入してくれれば良いと言われ押しつけるようにして渡されてしまった。そしてこうも付け加えられた。
「お前の防具に関しても色々考えておく。俺としては久々に怠惰の衣を脱ぎ捨てる気になったんだ。稼いでもらう為の先行投資。ダンディスの言い草ではないがな。とにかく稼いでおけ。今度は出来に見合った金額を頂く。覚悟しておけよ」
そう言われ笑顔で送りだされた。リードルシュさんが本気で作る防具。俺はそれが楽しみであると同時に怖くなって依頼先へと急ぐ。大金を用意しておかないと、リードルシュさんの気持ちを裏切ってしまう。
ああいう良い人を裏切りたくない。自分がされた事を人にしたくない。気持ちも足も速くなり、ファニーに首根っこを掴まれて文句を言われファニーに合わせて踏みしめるように歩いて街を出る。
「気持ち悪い」
小学校の頃、同級生達が体育座りで見ている中で、俺は一生懸命登り棒をし一番で下に降りた。
先生は他が登り切れて無かったので俺にもう一度登るよう言う。
するすると登りまた降りてくるともう一回登れと言われる。
そしてまた登って降りる。結局授業が終わるまでやらされた。
あの時の経験から例え上手く出来たとしても目立ってはいけないと悟った。
クラスの人気者を差し置いてするする登る俺を誰も称賛しなかった。
それから中学生になって孤立は続いたけど、弱いと更に虐げられると思って登り棒を見つけては登ってたっけなぁ。
「はひゃぁ!?」
俺は寝覚めの悪さにしかめっ面をした後、何気なく横を向くとファニーの顔が間近にあった。それで女性の様な悲鳴をあげてしまう。驚くだろう。親以外に隣で寝ていた覚えなんて二十年以上ない。
「ん……目が覚めたのか?」
ファニーは上半身を起こし右手で目をこすりながら俺にそう尋ねた。俺は顔を横に向けたまま硬直していた。何と言って良いのか解らない。普通なら役得だと思うだろうが、俺の場合見た目は完全に思いっきりファニーの方が下なのでおっさんだ。いや同年代だってビビる。
「さぁ朝ごはんを食べて路銀を稼ごうぞ」
ファニーは何も無かったかのように俺のベッドから出て背伸びをしている。
「そ、そそそそそうだよね」
俺は動揺を隠したかったが口は正直だった。機械のように上半身を起こしカクカクしながらベッドをから出た。
「何とか歩けそうか?」
ファニーがいつの間にか横に来ていた。凄い緊張するな。
「あ、ああ。な、なんとかいけると思いますです」
「ん?」
おかしな口調になっている俺の顔を覗き見るファニー。俺は首がグキッと音を立てるほどの速さで顔をそらす。そして悶絶した。凄く痛い。これは今日一日響きそうだ。
「歩けるのなら下に行こう。クエストに向かわねばならんからの」
「そ、そうだねぇ……あははは」
俺は自然にしようとしてまた不自然になり乾いた笑いをしつつ、部屋を出る。
「あらおはよう二人とも」
階段を下りるとミレーユさんの声が届く。綺麗な女性は声も綺麗だ。嫌な夢を見た後だから余計に清々しく感じやっと朝を迎えられた気になる。
「おはよう」
「おはよう」
俺とファニーはミレーユさんに挨拶しながらカウンターの椅子に腰かける。
「朝は軽めが良いかしら」
「それで。昨日色々あったからサッパリしたものが良いな」
「我もそれで」
「はい、今すぐ用意するわね。その間に依頼内容を確認して頂戴」
「了解」
ミレーユさんは奥へ下がり俺はカウンターの上に置かれていた依頼内容の紙に目を通す。昨日の件で依頼内容の掛かれた紙を俺が持っていないだろうと考えて準備してくれていたのだろう助かるなぁ。
俺は感謝しながらじっくりと読むと依頼内容はこうだった。
”スライムが大量発生して移動する為、
付近の畑に被害が出ているので追い払って欲しい”
なるほど。スライムっていうのはぷにぷにしたグミのような感じを想像していたが、畑に被害が出るとなると粘液を出し地面を移動し易くしているのかな。
強酸を吐いたりするかもしれないからちょっと心配だ。折角貰ったばかりのリードルシュさんの剣が解けたりしないだろうか。
「大量と言う数が解らんが、まぁコウなら余裕だろう」
「どうだろう……数が解らない点も不安だし。ファニーに火を吐いてもらうのも手だけど、そうなると焼け野原になるか」
「うむ。我も何か武器を持った方が良いな」
「そうだね。今後も考えると何かあった方が良いけど、ファニーの力に耐えられるものも中々ないんじゃないかな」
「我自身武器を所持した記憶が無いから解らん」
「爪と炎だけで十分強いからね竜は。取り敢えず安めの武器を幾つか手に入れて試してみようか」
「後でリードルシュの所へ寄ってからクエストに出ようぞ」
「了解」
結論が出たところでミレーユさんが戻ってきて、焼いたパンの上にハムが乗っているものと小さな器に入った野菜が出てきた。
この世界にもパンがあるのか。文化の進み方も世界が違っても変わらない点が多いなと感じる。
それはそれで有難いし何だか人類の過去を旅しているみたいで楽しい。
「依頼内容は大丈夫かしら」
「勿論。ミレーユさんに気を使ってもらったのが解る内容だった」
「ふふふ。そう言ってもらえると何よりだわ」
「ミレーユさんはこの仕事長いの?」
「そうね小さい頃から手伝っているわ。今は父が隣街に出向いているから私がメインになっているけど、普段はギルド長の父がメインよ」
「そっか……そうなるとお父さんが帰ってくるとミレーユさんは、サポートになるのか」
「安心して頂戴。貴方達は私が受け持つから。他の冒険者とは少し違うようだしね」
「それは有り難いね」
「うむ。知らない人間に多く会うとコウは人酔いするからの」
「そうかもしれないわね」
「酷いな二人とも」
俺とファニーとミレーユさんは笑いあう。引きこもりネタも意外に役に立つ事もあるもんだ。
俺とファニーは食事を済ませ二階で身支度を手早く済ませると、ミレーユさんに挨拶をして冒険者ギルドを発ちその足でリードルシュさんの店に顔を出すと
「昨日のはやはり貰い過ぎだ。ムチにブーメラン、剣に斧も付けておく。その娘の力加減を試すのには支障あるまい」
と言われて武器を色々渡して来た。俺が遠慮するとどれかその娘に
合ったものがあれば定期的に購入してくれれば良いと言われ押しつけるようにして渡されてしまった。そしてこうも付け加えられた。
「お前の防具に関しても色々考えておく。俺としては久々に怠惰の衣を脱ぎ捨てる気になったんだ。稼いでもらう為の先行投資。ダンディスの言い草ではないがな。とにかく稼いでおけ。今度は出来に見合った金額を頂く。覚悟しておけよ」
そう言われ笑顔で送りだされた。リードルシュさんが本気で作る防具。俺はそれが楽しみであると同時に怖くなって依頼先へと急ぐ。大金を用意しておかないと、リードルシュさんの気持ちを裏切ってしまう。
ああいう良い人を裏切りたくない。自分がされた事を人にしたくない。気持ちも足も速くなり、ファニーに首根っこを掴まれて文句を言われファニーに合わせて踏みしめるように歩いて街を出る。
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