無職のおっさんはRPG世界で生きて行けるか!?Refine

田島久護

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第二章・アイゼンリウト騒乱編

第39話 冒険者、上級魔族の少女と対峙する

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 空から可愛らしい声が降ってくる。コウモリの羽を羽ばたかせながら舞い降りてくるそれは、黒のワンピースに身を包んだ可愛らしい少女だった。
しかしそれが纏っているのは黒い炎。距離があるのに下がらざるを得ない威圧感を放っている。

「ごめんなさいね。少し楽しい気持ちになるとこの状態になるの。貴方達を威圧するつもりは無かったのだけれどね」

 可愛らしい声は謝罪というより、可哀想と言った感じで言う。得物を前にした虎の様に涎こそ垂らさないが、死を決定し料理方法を考えているように見える。

「それに威圧なんかしたら、これから楽しめないじゃない」
「やはりこれだけの魔族を召喚するには、それ相応の魔族の格が必要だったんだな」

 さっきまで尋問していた魔族とは全てが違う。近付くだけでも押しつぶされそうな圧を感じ、喋るのも精一杯だ。

このまま喋るだけで済むなら良いが、恐らくそうはならないだろう。それまでに何とかこの圧に慣れないと、一方的に攻撃され彼女に楽しみを提供して終わりになる。

今の状態では彼女に俺たちは敵わないと見ている。それも人間だからとかそういうのではなく、実力を推しはかった上での判断な気がした。

「ええ、そうよ。恐らく貴方の予想は当たっている。ご褒美を上げるわ。急いでお城へ戻った方がいいわよ。私達の眷属が向かっているの」
「あ、兄上は!?」

 姫は狼狽しつつ問う。魔族の少女は一瞬子供が遊び道具を見つけたように目を輝かせたが、小さく笑いながら姫の問いに答え始めた。

「うふふ。あの出来損ないがどうにか出来ると思って? あれは魔族の狡賢い部分だけを受け継いで、下級魔族にも劣る力しか無かった。人を率いる資格も無い。でも魔族の血が流れているんだから、使い道があってあれも喜んでいる事でしょうあの世で」
「魔族の血……!? 何を言って」

「なんて言ったかしら……コウ、貴方達の言葉で。ノウキン? 姫は少し脳みそまで筋肉になっているようだから、学んだ方がいいわよ」
「貴様!」

 姫は怒りにまかせて竜槍をその見た目は可愛らしい魔族へ向けて素早く突く。だがそれは寸前で止まった。そこで諦めずに姫は力も体重もかけて前へと踏ん張ったが、まるでびくともしない。

「残念。姫は割とマシなようだけど、私達より下位の魔族が傷をつけられるわけが無いじゃない?」

 そういうと魔族の少女は竜槍の先を摘まんで、姫ごと放り投げる。見た目も姫の方が身長も高く体格も良いのに、汗をかくどころか紙を摘まんで放り投げる感じにしか見えない。

ステータスそのものの桁が違うのか……!?

「化け物め……」
「そう? そこに居るオジサンも私と変わらないと思うけど」

 俺に目を向けた。凄まじいな……見られただけで冷や汗が止まらない。人の本能が危険を告げている。逃げなければ確実に捕食される、と。

「さぁ貴方達、頑張って私を楽しませて頂戴。遊んでも良いと言われているんだから、少し遊ばせてもらうわ。万が一私を驚かせたら、何でも答えてあげるわよ」

 少女はコウモリの羽と手を広げ、俺達を挑発する。どうする!? このまま皆で戦って勝機があるとは思えない。このまま全滅するよりは俺一人で時間を稼ぎ、皆を逃がす方がまだマシだろう。

―我らに勝てぬもの無し―

 黒隕剣もどうやらやる気満々のようだからこれは勝ったな。俺はやせ我慢を全力でする覚悟を決めて声を発する。

「皆、悪いけどそこの魔族とビルゴを連れて城へ行ってくれ!」
「し、しかしコウ殿!」

「ここは俺達が!」
「いや、ダメだ。城の中も危険だけど、外からの攻撃を受けて防げる防衛機能が今あるとは思えない。恐らくこの魔族に兵隊は吸収されているはずだから。姫、民を想うなら皆を連れて先に!」

「流石、規格外のオジサンは聡明ね。良いわよ逃げても。どうせ何処へ行こうとも、結局は私達の餌になる運命なんだし、貴方達ごとき見逃してあげても良いの。だから、ね?」

 その瞳は魅了する力を持っているのか。直視されたらそれだけで理性が持って行かれそうになる。視界に紫色が漂い思考が鈍くなった。俺は直ぐに自分の目の下を抓って痛みで対抗する。

「ふふふ。本当に素晴らしいわ。私の魅了に抗うだけのものを持っているなんて。さ、目障りな雑魚は雑魚なりの仕事があるのだから早く行きなさい。舞台に上がるのはお前たちでは力不足なのだから」
「皆早く!」

 俺は叫ぶ。このまま突っ立ってたら確実に反応が鈍くなる。そんな状況では勝ち目は万に一つも無くなってしまう。俺の声に反応して、皆は素早く魔族とビルゴを連れて移動した。

こんな駆け出しの冒険者の言葉を聞いて引いてくれて助かった。何とかダメージが少ない状態でコイツと戦える!

「オジサン優しいのね。貴方が動いたら私あの雑魚達を殺してたわ」
「だから動かなかったんじゃないか。褒めて欲しいな」

 俺は鞘から出ていた黒隕剣を手に取り構える。相棒の黒隕剣も相手の力を分かってか、早速レイピア状態から光を放ってロングソード状態へと変わる。

今のところ何とかぶっ倒れずに済んでいる。これが後どれくらい持つか……。いやコイツを倒すまで持たせるしかない、命を懸けてもここで退けなければ国の立て直し何て夢のまた夢だ!

ファニーとリムンのところに帰る為にも、最悪あの子たちが無事生きていく為にも、負けられない!

「ええ褒めてあげる。では楽しませてねオジサマ。その剣なら私に届くわよ」

 魔族の少女はさっきよりも濃い瘴気を放ち、更に纏う黒い炎を厚くした。こんなおっさんにこれだけの力を出して見せてくれるなんて、評価高過ぎだろ……。
俺はこれを退けて城までいけるのか。

額に掻いた汗を拭い黒隕剣を構える。

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