無職のおっさんはRPG世界で生きて行けるか!?Refine

田島久護

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第二章・アイゼンリウト騒乱編

第57話 冒険者、耐える

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「そらそらそら! どうした引きこもりで無職のおっさんとやら! 偉ぶったわりにはその名の通りではないか!」

 王は素早く振り被り重い斬撃を繰り出してくるが、相手の呼吸と斬撃のクセにパターンを徐々に覚えて来た。ただまだ下がらずにいなすまでにはならない。円を描くように下がりながら剣を受けたり流したりしながら王座の間を広く使う。

ここに来た当初はイーリスとアリスそれに俺と三人で王に対峙したが、王は二人を弾き飛ばした。その隙を突いて俺も一時距離を取り二人と合流。王は出来るだけ俺が受け持つから、二人はチャンスまで堪えて欲しいと伝え一人で相手をしている。

 それにしても受けていて分かるがこれだけ動いて居るにも拘らず、王は汗一つ掻かず息も乱れていない。こいつのスタミナは無尽蔵なのか? だとすれば、これは下作だ。何しろこっちには限りがある。まだ倒す糸口すら見つけられていないのにこのまま受け続けたら確実に斬られるのは間違いない。

「アンタ、スタミナ切れとか無いのか?」
「あれば良いな。だがお前もそうだが我も大した力を出しておらん。まぁ多少疲れはするがな」

「そうか、よ!」

 俺は小さな隙間を突いて腹に蹴りを入れて距離を離す。力を出していないんじゃなくて下がりながらいなして避けてるだけで精一杯なんだよ。攻撃の為に力を残しながら呼吸を乱さないようにしているが、自分でもよく出来てるなと感心するレベルだ。

だがそう長くは続かない。自分が相手の動きをある程度見切れて来たから何とかなっているが、本気になられたら一瞬だろうと分かっている。それに今攻撃に出る訳には行かない。誘い隙が何度もあったが戸惑う振りをして逃し更に次は呼吸をその間したりと餌を撒く。半分嘘だが半分は本当だから完全な嘘ではない。見破られないのを祈る。

「ふむ……しかし本当に斬れないな。我を見切ったのかな」
「さぁな。アンタがそこまで本気じゃないなら、まだ完全に見切れては無いだろう」

「なら全力で行こうではないか、互いにな」

 王はニヤリと笑い、大剣の剣腹を左肩に置き腰を少し落として右肩をこちらに向け構える。見透かされているのはお互いに同じ。そして切り札を持っているのも同じ。
なら隠しても無駄だな。

「了解だ。真剣勝負と行こうか」

 俺は剣を振り上げてから切っ先を王に向けながら左肩と左足を前に出して構える。互いに呼吸を合わせ……

「フン!」
「はぁっ!」

 力を前足に入れた瞬間互いに地面を蹴り間合いを潰し合う。そして振り下ろした剣と剣とがぶつかり合う音が王座の間に響いた。流石ラスボスの本気だ。まともに喰らったら御終い、一撃必殺。黒隕剣は剣身が三つ又に分かれ左右は鍔の方に下がり手元で交差して止まり、中央に細長い剣身を残したレイピアモードに一旦なった。そこから更に光の刃を作り刃幅の太いロングソードモードへと変化。力の限り斬りつけて行く。

 お互い全力を出しつつ隙を窺っている。気を抜いたらやられる。息を吐くにも相手のタイミングに合わせ足捌きも合わせてズレずに斬りあう。正直気を遣って息をしているような気がしてならない。まるで乱れもせず何処か楽し気に斬り合っているのを見ると腹が立ってくる。
 
 しかし向かい合っていると、王の強さが異常過ぎて辟易する。俺がまだもっているのは相棒である黒隕剣の御蔭だ。黒隕剣は一旦魔力を吸った後、残りの俺自身の魔力と合わせながらインパクトの瞬間のみ力を解放するようになっていた。

 そういう意味では本当に省エネに徹した戦い方が完成している。そして負けじと俺もそれに合わせて力を入れたり抜いたりが出来たのも大きい。恐らく隙を見せた時に放たれる一撃、隙を見つけた時に放つ一撃、それらを捌くのに体にも無理をさせるが魔力も相当持って行かれるだろう。その時どの程度消耗するのかは予想が付かない。

 だがその時こそ逆にチャンスだ。相手は意表を突かれ一秒くらいは隙が出来る筈。そこへ渾身の一撃を叩き込む。まさにそれが切り札だ。これまで相手の動きをしっかり見て力を蓄え、隙を見せられても敢えて動かずチャンスをジッと堪えて待っている。

チャンスをモノに出来れば良いが、そうで無かった場合は全力でコイツの動きを止める。その間にイーリスとアリスが何とかしてくれるだろう。二人には辛抱の時間が続くだろうが耐えてくれと心の中で呟く。声を掛けたり視線を送ればバレてしまうだろうからそれしかない。迂闊な行動は命取りだ。

「しかしお前の器用さにも呆れるな。我の攻撃や動きの全てに合わせてくる」
「アンタが一番強いからな。アンタの動きは参考になる」

「……何と言えば良いのかなこの感情は」
「頭にきた、だろ?」

 王は眼を見開き大きく振りかぶった。ここはチャンスかと思ったが、王の目はまだまだ冷静さを残している。ここでカードは切れない。俺はそれを黒隕剣と共に全力で防御する。まだだ、まだ削りが足りない。

多少言葉で揺さぶれたがその程度で斬り付けられるならもうやってる。だが少しぐらついたのだけはハッキリとわかる。ここは言葉で押すか。

「確かにな……そう、頭にきた。我は誰よりも強い。お前もそれに類する者だと見ていたつもりではあったが、こうして見ると我はお前をまだ見下していたようだ。それがここまで食い下がるどころか、良い様に手玉に取られている感じがして頭にきているらしい。互いに切り札を残しつつ斬り合うこの状況は想定外だ」
「アンタは予想外の出来事に特に弱そうだな」

「そうだな。良い様に人の手のひらで踊らされるのは気分が悪い」
「それは仕方が無い。アンタと俺じゃタイプが違う。解り易く例えるなら攻と守。俺もアンタの一撃をまともに受ければ死ぬ。だからこそギリギリの勝負を挑んでなるべく有利に進めないとね」

「攻と守か。だがお前は我を消し飛ばせる切り札を伏せている」

 そんなものがあるかどうか分からない。が、黒隕剣の動きからして俺の一撃に上乗せしてくれるだろう。魔力はまだ底をついていないが、先ほどから黒隕剣との一体感のようなものはより強くなっている。

俺は話をしながら黒隕剣を忙しなく振ってしまう。体がその速度に焦れての動きかもしれない。小さく笑うと少し息を吸って吐いて堪える。

「それは過大評価だがアンタは一人で戦っているけど、俺には有り難い話、背中を任せられる奴らが居る」
「で、今度は何をしようというのだ?」

 王は殺気を放ちつつ構えるがこちらはまだ何も出来ない。この殺気を放っていても王の目は冷静なままだ。これじゃ斬るどころか斬られるのが関の山。まだ足りない。

「取り合えずアンタの余裕が消えるまで、俺と斬り合ってもらうだけさ」
「……」

 王はそれを聞くと、構えを解き顎に手を当てて考え込む。有り難い。これで馴染む時間も消耗した体力を回復する時間も稼げる。俺はゆっくりと息を吐きつつ目を閉じ少しでも早く回復し慣れるよう集中した。

「ならそれもお終いだ」

 王がそう言ったので目を開けて見ると、彼の足元に魔法陣が現れ紫の光が立ち円柱状に囲んだ。

「ここまで五分の力しか出せなかったのは、人の形をしていたからだ。お前を消し去るには、この姿では気がつかぬうちに力を抑えてしまう。そのタガを外そう。ここからは正真正銘の全力だ」

 王がそう語る間に姿を変えていく。頭の両端には魔族を象徴する角、背中にはコウモリの羽、先の尖った尻尾そして肌は紫へ。ついに人間を止めて正真正銘の魔族になった瞬間だった。

「何で今までその姿にならなかった?」
「何が言いたい?」

「アンタには未練があるんじゃないかと思ってさ」
「未練?」

「そう、人で居たいと言う未練だ。アンタは悪魔に魂を売ったようだが、心の隅では罪悪感に捕らわれているんじゃないか?」
「ならその未練を捨ててやろう!」

 衝撃波が部屋の隅まで襲う。あまりの強さに目を瞑ってしまった! その隙を逃さず王はこちらへ飛び掛かり剣を振り下ろしたが、黒隕剣が防いでくれて何とか死なずに済んだ。だが何も無しとはいかず、吹き飛ばされて壁に叩きつけられてしまう。

「こうなったらもう手加減を出来ん。死を覚悟せよ」
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