無職のおっさんはRPG世界で生きて行けるか!?Refine

田島久護

文字の大きさ
71 / 75
第二章・アイゼンリウト騒乱編

第68話 転生者対転生者!

しおりを挟む
 俺とアーサーは剣戟を交わし続けその音が周囲に鳴り響く。互いに相手を斬り伏せるつもりで振るっている。相手は魔族とは言え無敵では無いし、体力にも限界があるとアーサーの前に戦った王で確認済みだ。

剣の強さも黒隕剣とファニーの御蔭で斬り合っても互角。差があるとすれば、本体である俺の体力と素早さだろう。二人のフォローがあってもそこは恐らく埋められないかなと思ってた。

 暫く剣戟を交わし合った後でアーサーもそれに気付いたのか急にリズムを変える。それまでのように俺が二回斬り付けたのを弾くと、間を置かずアーサーは素早く体と手首を捻って斬り付けてきた。

二回までは素早さを重視した為軽くなっていたのであっさり弾いたが、そこから先ほどよりも踏み込んで素早い左右の斬り付け繰り出された。

これは見切れない、ヤバい! 

と思ったが何故か剣筋が良く見え体も動き、返しの二つはしっかり見てそれに合わせて足を引き、下がりながら小さく最小限の動きで避ける。

それを行った自分自身もかなり驚いたが、相手であるアーサーも唖然として剣を下に向けた。少し間があった後、歯を食いしばり睨みながら再度突っ込んでくる。

 アーサーも流石前王と共に戦場に居ただけあって、剣となった王よりも戦い方が巧い。こちらが合わせようとすると絶妙にタイミングをずらしてきていた。

だが俺はそれを少しずつ真似てテンポをずらし、斬り付ける角度やリズムを変えて反撃していく。避けられはするが、アーサーは徐々に苛立ちと焦りの色を濃くして行き、さっきの動きに出た。

そう考えるとあれは決めに来ていたのかなと思う。だとすれば避けられたらキレるかもなと納得してしまった。

 俺たちの攻防は一進一退。互いに体力を少しずつ削りながら相手の隙をジッと待っている。
 
 俺は切り札を出していない。剣になった王に出そうと思っていた切り札。と言っても思いついたのは、俺自身の魔力を黒隕剣が吸い取り力に変えているのを知って、命と魔力全てを相棒に注ぎ込めば大きな一撃を放てるだろうっていうものなんだけど。

相棒は俺の考えに否と言うならそう言ってくれると信じているから、そう言わないなら出来るだろう。だがその為には大きな隙が必要だ。恐らくこれまた相手も似たようなものを隠しているに違いないと見ている。

何とかこちらが先に打つ為に隙を作らないとと考え、俺は気になっていた点について問う。

「アンタ今は完全な魔族か?」
「混ざりモノだ。転生した時は魔族だったが、来る前は人間だ」

「何故人間になろうとしたんだ? 自分の野望を満たすのなら他はいざ知らず、お前は魔族のままでよかったんじゃないのか?」
「何?」

 そう、人を生贄として最強の力を手に入れる為の準備として人の振りをするまでは分かるが、今現在混ざりものである理由が分からない。

魔族ならその恩恵を最大限受けられるはずなのに、とふと疑問に思ったから聞いてみた。そして思った。コイツは人間に対する執着を捨てきれていない、元の世界への未練を自分でも気付いていない心の片隅にまだ持っている、と。

最強になって全て滅ぼした後に自分だけが残ればその答えに辿り着くんじゃないかと思った。でなければ民を全て生贄にしなくてもいい筈だ。

 そういう考えに至ったのも、俺自身そんな思いが頭を過ぎったから。あっちでは良い思い出が何も無いが、こっちに来てから良い仲間たちに出会えた。心の何処かに今帰ればやり直せる、もっといい思いが出来るんじゃないかって言う思いが芽生えたのかもしれない。以前の自分とは違う、と。

アーサーのこの世界での身内を全て犠牲にしてでも最強を目指しているのは、帰りたいからじゃないかなと言う結論に至った。

 命を全て掛けた一撃という発想が生れたのは、そう言う心の変化からだと思う。勿論それだけじゃなく、ファニーやリムンが笑顔で生きる為にここをどうにかしなきゃならないと言うのもある。何しろ俺は鍛えに鍛えてここに来たわけじゃないから。

互角に戦えているのも黒隕剣とファニーの御蔭だ。ならもう差し出せるものは命しかない。美しいとは言わないが、他に無いからそうする。

アーサーに指摘して自分にも見えて来たそんな心の片隅の想いも、きっと死ぬ時には消えてなくなるだろう。帰れる保証何て何処にもない。だがそれで良いのかもしれない。永遠に生きるなど思いもしないし何時か死ぬなら誰かの為に死にたい。

自分を初めて必要としてくれる人たちを護る為に持ってるもので何とかするだけだ。

 気付くとアーサーは茫然として俺を見ていた。チャンスは逃せない! 卑怯かもしれないとは思ったが、俺はその隙を生かして黒隕剣を突き出しアーサーの肩を捉える。だが後少しのところでアーサーは我に返り避けた為、浅い切り傷が出来ただけだった。

「私を混乱させて隙を作ろうと言う魂胆か?」
「アンタは最強の存在になって何をするんだろうと気になったんだ。自分の気の済む物語を体験し終える頃には誰もいなくなる。家族さえもね。孤独に永遠に耐えられる者なんて居ないのを、物語を書いて人に読んでもらいたいアンタは知っている筈だろう? 心の片隅に居たその恐怖が選択したのが人間との混ざりもの。踏ん切りの突かない自分自身を反映したんじゃないかなと」

「……人として転生したら何だと言うのだ」
「人として転生したら、アンタは真っ当に生きたんじゃないのかな。今度こそ誰かと幸せに、孫かひ孫に物語を読み聞かせる人に。だが転生したのは魔族だった。何故魔族になったのか心当たりもあるのかもしれないが」

 この人も俺のように前の世界でよい人生を送れなかった人なのだろう。でも誰も止めてくれなかった。走るしかなかった。もう止まれない、だから折れないで済むようにアーサーなんていう物語の主人公の名を名乗ったんだと思う。

そう考えると俺は幸せ者だ。曲がらないようここまで共に来てくれた仲間がいる。俺はもう一人じゃない。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

異世界に転生した俺は英雄の身体強化魔法を使って無双する。~無詠唱の身体強化魔法と無詠唱のマジックドレインは異世界最強~

北条氏成
ファンタジー
宮本 英二(みやもと えいじ)高校生3年生。 実家は江戸時代から続く剣道の道場をしている。そこの次男に生まれ、優秀な兄に道場の跡取りを任せて英二は剣術、槍術、柔道、空手など様々な武道をやってきた。 そんなある日、トラックに轢かれて死んだ英二は異世界へと転生させられる。 グランベルン王国のエイデル公爵の長男として生まれた英二はリオン・エイデルとして生きる事に・・・ しかし、リオンは貴族でありながらまさかの魔力が200しかなかった。貴族であれば魔力が1000はあるのが普通の世界でリオンは初期魔法すら使えないレベル。だが、リオンには神話で邪悪なドラゴンを倒した魔剣士リュウジと同じ身体強化魔法を持っていたのだ。 これは魔法が殆ど使えない代わりに、最強の英雄の魔法である身体強化魔法を使いながら無双する物語りである。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

没落ルートの悪役貴族に転生した俺が【鑑定】と【人心掌握】のWスキルで順風満帆な勝ち組ハーレムルートを歩むまで

六志麻あさ
ファンタジー
才能Sランクの逸材たちよ、俺のもとに集え――。 乙女ゲーム『花乙女の誓約』の悪役令息ディオンに転生した俺。 ゲーム内では必ず没落する運命のディオンだが、俺はゲーム知識に加え二つのスキル【鑑定】と【人心掌握】を駆使して領地改革に乗り出す。 有能な人材を発掘・登用し、ヒロインたちとの絆を深めてハーレムを築きつつ領主としても有能ムーブを連発して、領地をみるみる発展させていく。 前世ではロクな思い出がない俺だけど、これからは全てが報われる勝ち組人生が待っている――。

処理中です...