王様のティンカーベル

桔梗

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Ⅱ, 妖精の贈り物

☆2☆

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 材料採取のためにやってきた近場の森。小さな森だから危険も少ない。子供達がお小遣い稼ぎに薬草を採取しに来る事もある。

『さて、採取する薬草は・・・』

 

《妖精の傷薬》
・妖精の粉
・サラーデュ草(黄色の花。傷に効果ある)

《妖精の万能薬》
・妖精の粉
・妖精の涙
・月光蜂のロイヤルゼリー(魔力回復)
・太陽蜂のロイヤルゼリー(体力回復)
・マンドレークのエキス(状態異常回復)


 私が必要なのは自分から採取できる素材以外のもの。
 
 サラーデュ草はポピュラーな薬草だ。普通にそこら辺に生えているので見つけるのも簡単なのだ。問題なのは月光蜂と太陽蜂、マンドレークである。

 月光蜂は月色の蜂で夜行性。今回必要なロイヤルゼリーは女王蜂ではなく、王蜂が持っている。月光蜂の王蜂は大きな蜜袋を
持っていて、働き蜂から貰った蜜を自身の体液と混ぜてロイヤルゼリーを作り出す。
 月光蜂からロイヤルゼリーを採取するためには女王蜂と交渉しなければならない。
人間なら彼等を駆除すれば簡単だけど、私は妖精だから自然に生きるものを無闇に傷つける事をしてはいけない。だから彼等と話し合うの。

『こ、こんばんわ~。』

 大きな巣のなかに案内され、辿り着いた所は女王蜂の部屋。
 私の身長は約15cmなんだけど、彼等はそのニ倍はある。

『ロイヤルゼリーが欲しいの。』

《我が後継者を養うための物だ。》

『それは分かってるわ。花粉の変わりに妖精の粉を物々交換では駄目かしら?』


 どうしても必要だから彼女の目の前にドサリと袋を2つ置いて中身を見せる。

《間違いなく妖精の粉だ。・・・よかろう。伴侶にロイヤルゼリーを頼んでおこう。王宮に運べばよいか?》

『いいの?』

《妖精の粉で我が後継者は逞しく育つだろう。その対価だ。》

『ありがとう女王。』


 なんとかロイヤルゼリーを貰えた。貰えなかったら最後の手段を使うところだった。

『下手をすれば私の大切な桃の水蜜を提供しなければならなかった。あぶないあぶない。』

 桃の水蜜はとろりとした蜜で私の大好物なの。当然、蜜は蜂も大好物だから献上すれば喜んだに違いない。


 その後、太陽蜂とも交渉した結果、ロイヤルゼリーを貰うことができた。やはり妖精の粉は特別なんだって実感した。


『最後はマンドレークだよね・・・』

 マンドレークこそ最大の難関だ。この妖精の身で無償でいられるほど甘くはない相手。

『おし!気合いをいれるぞ!』

 今日の私は勇ましい妖精なのだ。服装も将軍をイメージしたロング丈の軍服。色は深紅にした。これは私の本気を表しているつもりなんだけど、ちょっと派手すぎかな?

『マンドレークは腐葉土が大好物で、紫色の葉を生やしているんだよね。』

 森の奥深い所には寿命で枯れてしまった木が沢山ある。日光に適度に当たっている場所に行くとーーー

『いた!』

 視線の先には枯れて腐っている木をムシャムシャと食べるマンドレークの姿があった。

『ブサカワなのよねマンドレークって。』

 人型で、からだの組織が木できている。顔は笑顔や困った顔、怒り顔、泣き顔など様々。鼻もピノキオみたいのから豚鼻もある。だから不細工なのに可愛いのだ。 

『最低でも10体は必要だから頑張らないと。』

 マンドレークを狩るには鮮度を損なわないことが重要だ。鮮度を保つために半殺しが一番有効な手段である。
 
 小さな妖精の身であるが、剣術はそれなりに使える。マッチ棒のような見た目だが、精巧に作られた銀のレイピアが私の剣である。妖精魔法を付加すれば威力も倍増する。

『妖精魔法《麻痺》をレイピアに付加!ターゲットはマンドレーク!』

 レイピアを右手に持ってマンドレークの体へ突き刺していく。一体につき2、3回突き刺すと麻痺の効果が発動する。

「ギッ!」
「グギギィ!」
『はぁぁぁあ!!』

 仲間を害された事で周囲にいたマンドレーク達が一斉に襲いかかってきた。殴りかかってきた奴の腕をレイピアで受け止め、素早く後方に退く。前方に力を入れていたマンドレークは思いきり地面へと倒れてしまう。その隙を見逃さなかった私は上空からマンドレークの腰を目掛けてレイピアを突き刺した。
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