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【後日譚2】異世界(日本)から聖女が来たらしいけど、オレ(元勇者で元日本人)には関係ないったらない!!!
第2話 異世界の聖女様
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あと少しで終わる、その言葉通り体感一時間弱でグレンは仕事を終わらせた。
「お待たせしました、ベル」
「おつかれ。クラウス様もお疲れ様でした。オレ達はこれで失礼しますね。――早く帰ろう、グレン」
一応クラウスにも声をかけてから、グレンを急かす。
正直、王都では嫌な思いばかりしたし、いくら実体じゃないとはいえ長居はしたくないのだ。
「お会いできて光栄でした、ベルンハルト様。これからも貴方様のためにこの身を尽くします」
深々と頭を下げるクラウスに、彼とのアレやそれやの思い出が過ぎって微妙な気持ちになりつつ、オレ達はグレンの転移魔法で王都を去っ――。
「…………っ!!!」
去れなかった。
魔法が発動するよりも先に、視界が真っ白に染まって、何も見えなくなる。
それから、振動。
大地が、空気が大きく揺れた。
◇
光と揺れは程なくして収まったが、オレの方の混乱は中々終わらない。
――なに、いまの。
――ただの地震じゃない。
――わからない。
怖い。
「ベルンハルト……」
宥めるように、グレンがオレの名前を呼ぶ。
「グレ、ン……」
「大丈夫。俺が貴方を守ります」
その言葉は、魔法だ。
グレンが傍にいてくれる――その心強さを、幸せを、思い出させてくれる。
「うん……なぁ、さっきの、は……」
どうにか平静を取り戻し、現状を訊ねると、グレンは首を振った。
「……わかりません。今、ベネトナシュ卿が状況を確認しに行ってくれています。――本当は、貴方だけでも家に帰したいんですが……魔法が、発動しません」
「そう、か」
グレンにもわからない……?
そんなことが、あるのか?
ここは、小説に例えるならエピローグの後の世界で、後はただ平穏が続くだけの……異変が起きたってすぐにグレンやスピカが解決してくれる、そんな世界だったはずなのに。
不安に震えてしまうオレに向かい、グレンは穏やかに語りかけてくれる。
「ごめんなさい。俺が貴方の魂をここへ呼んでしまったせいで、こんなことに巻き込んでしまって……」
――確かに、怖いよ。でも、オレは……。
「グレン」
滑らかな白い手をグレンの頬へ伸ばす。
「オレは……オレのいないところで、お前がこんなよくわからない状況にいる“もしも“よりも、不安でも、怖くても“今“の方がずっと良い」
オレは役立たずだけど、それでも。
「オレとお前はずっと傍にいるんだろ?」
「はい……ベルンハルト」
グレンの顔が近付いてくる。
てっきり次のキスは、“カエルから王子様に戻してもらうため“だと思ってたから、予想よりは少し早い。
そんなことを考えながら目を閉じて、唇が重ねられるのを待っていたけど……。
「グレン?」
さすがに遅くないか、と目を開けると、グレンは眉根を寄せて考え込んでいた。
「……その身体、作ったのはベネトナシュ卿なんですよね……」
「ああ、器用だよな」
「ええ…………」
あ。なんとなくグレンが言いたいことわかったわ。
いくらオレを模した姿とはいえ、“オレ以外“に――それも、オレに懸想している(グレンとは違う意味だと思うけど)クラウスが作った人形に、と思うと躊躇ってしまうんだろう。
一途だなぁ。
ちょっと面倒くさいけど……まあ、それもグレンの可愛いところだ。
「なら、キスは家に帰ってから――カエルを王子様に戻すためにしてくれ」
「今の貴方はどちらかと言えばお姫様ですけどね。童話に例えるなら茨姫とかの方がベルには似合いますし、カエルの王さまの原著にはキスをしたら戻るなんて記述はありませんよ」
「いや、それ言い出したら茨姫だって勝手に目覚めるパターンもあるし……というかどっちでもいいだろ。とにかくお預けな」
「……はい」
久しぶりにグレンが大型犬に見える。はぁ……かわいい~。
最近は狂犬気味だったから――うん。
問題解決までしばらくはこの可愛い飼い犬モードを堪能できるのだと思えば、気分も上がってきた。
まあ、そんな楽しい気分も長くは続かなかったわけですが……。
◇◇◇
クラウス曰く――あの光と振動とともに王宮の泉から、黒い髪と瞳を持った美しい少女が現れたらしい。
「黒髪黒目……」
この世界では黒い髪も瞳も珍しい。
嫌な予感がする。
「ええ。後は……見たこともないような丈の短いドレスを着ていただとか、騎士が騒いでいました」
ああ……ほぼ確だ。
◇
慌ただしく部屋を去っていったクラウスを見送って、項垂れる。
「……グレン」
「そうですね。貴方の想像通りだと思います」
グレンもライトノベルは“叔父さん“時代に読み漁っているから、同じあるあるを連想したらしい。
「あちらの――王宮の中心から感じる未知の魔力。それが俺の魔法を妨害しています」
大きなため息とともに、言葉が続けられる。
「おそらくあの未知の魔力は、俺の魔力と相対するものなんでしょう……残念ながら心当たりがあります」
グレンの――魔王の末裔と相対する魔力を持つ存在。
それすなわち。
「この世界が危機に瀕した時、異世界からやってくると言われる――聖女」
異世界から聖女がやってくる。
お決まりのパターンだ。
ほんでもってその“異世界“って……やっぱりもしかしなくても、地球の日本だったりするんですか……???
「お待たせしました、ベル」
「おつかれ。クラウス様もお疲れ様でした。オレ達はこれで失礼しますね。――早く帰ろう、グレン」
一応クラウスにも声をかけてから、グレンを急かす。
正直、王都では嫌な思いばかりしたし、いくら実体じゃないとはいえ長居はしたくないのだ。
「お会いできて光栄でした、ベルンハルト様。これからも貴方様のためにこの身を尽くします」
深々と頭を下げるクラウスに、彼とのアレやそれやの思い出が過ぎって微妙な気持ちになりつつ、オレ達はグレンの転移魔法で王都を去っ――。
「…………っ!!!」
去れなかった。
魔法が発動するよりも先に、視界が真っ白に染まって、何も見えなくなる。
それから、振動。
大地が、空気が大きく揺れた。
◇
光と揺れは程なくして収まったが、オレの方の混乱は中々終わらない。
――なに、いまの。
――ただの地震じゃない。
――わからない。
怖い。
「ベルンハルト……」
宥めるように、グレンがオレの名前を呼ぶ。
「グレ、ン……」
「大丈夫。俺が貴方を守ります」
その言葉は、魔法だ。
グレンが傍にいてくれる――その心強さを、幸せを、思い出させてくれる。
「うん……なぁ、さっきの、は……」
どうにか平静を取り戻し、現状を訊ねると、グレンは首を振った。
「……わかりません。今、ベネトナシュ卿が状況を確認しに行ってくれています。――本当は、貴方だけでも家に帰したいんですが……魔法が、発動しません」
「そう、か」
グレンにもわからない……?
そんなことが、あるのか?
ここは、小説に例えるならエピローグの後の世界で、後はただ平穏が続くだけの……異変が起きたってすぐにグレンやスピカが解決してくれる、そんな世界だったはずなのに。
不安に震えてしまうオレに向かい、グレンは穏やかに語りかけてくれる。
「ごめんなさい。俺が貴方の魂をここへ呼んでしまったせいで、こんなことに巻き込んでしまって……」
――確かに、怖いよ。でも、オレは……。
「グレン」
滑らかな白い手をグレンの頬へ伸ばす。
「オレは……オレのいないところで、お前がこんなよくわからない状況にいる“もしも“よりも、不安でも、怖くても“今“の方がずっと良い」
オレは役立たずだけど、それでも。
「オレとお前はずっと傍にいるんだろ?」
「はい……ベルンハルト」
グレンの顔が近付いてくる。
てっきり次のキスは、“カエルから王子様に戻してもらうため“だと思ってたから、予想よりは少し早い。
そんなことを考えながら目を閉じて、唇が重ねられるのを待っていたけど……。
「グレン?」
さすがに遅くないか、と目を開けると、グレンは眉根を寄せて考え込んでいた。
「……その身体、作ったのはベネトナシュ卿なんですよね……」
「ああ、器用だよな」
「ええ…………」
あ。なんとなくグレンが言いたいことわかったわ。
いくらオレを模した姿とはいえ、“オレ以外“に――それも、オレに懸想している(グレンとは違う意味だと思うけど)クラウスが作った人形に、と思うと躊躇ってしまうんだろう。
一途だなぁ。
ちょっと面倒くさいけど……まあ、それもグレンの可愛いところだ。
「なら、キスは家に帰ってから――カエルを王子様に戻すためにしてくれ」
「今の貴方はどちらかと言えばお姫様ですけどね。童話に例えるなら茨姫とかの方がベルには似合いますし、カエルの王さまの原著にはキスをしたら戻るなんて記述はありませんよ」
「いや、それ言い出したら茨姫だって勝手に目覚めるパターンもあるし……というかどっちでもいいだろ。とにかくお預けな」
「……はい」
久しぶりにグレンが大型犬に見える。はぁ……かわいい~。
最近は狂犬気味だったから――うん。
問題解決までしばらくはこの可愛い飼い犬モードを堪能できるのだと思えば、気分も上がってきた。
まあ、そんな楽しい気分も長くは続かなかったわけですが……。
◇◇◇
クラウス曰く――あの光と振動とともに王宮の泉から、黒い髪と瞳を持った美しい少女が現れたらしい。
「黒髪黒目……」
この世界では黒い髪も瞳も珍しい。
嫌な予感がする。
「ええ。後は……見たこともないような丈の短いドレスを着ていただとか、騎士が騒いでいました」
ああ……ほぼ確だ。
◇
慌ただしく部屋を去っていったクラウスを見送って、項垂れる。
「……グレン」
「そうですね。貴方の想像通りだと思います」
グレンもライトノベルは“叔父さん“時代に読み漁っているから、同じあるあるを連想したらしい。
「あちらの――王宮の中心から感じる未知の魔力。それが俺の魔法を妨害しています」
大きなため息とともに、言葉が続けられる。
「おそらくあの未知の魔力は、俺の魔力と相対するものなんでしょう……残念ながら心当たりがあります」
グレンの――魔王の末裔と相対する魔力を持つ存在。
それすなわち。
「この世界が危機に瀕した時、異世界からやってくると言われる――聖女」
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お決まりのパターンだ。
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