「隠れ有能主人公が勇者パーティから追放される話」(作者:オレ)の無能勇者に転生しました

湖町はの

文字の大きさ
87 / 93
【後日譚2】異世界(日本)から聖女が来たらしいけど、オレ(元勇者で元日本人)には関係ないったらない!!!

第13話 合言葉

しおりを挟む

「――アイリ様のご命令です。王宮までご同行を」

 門を出ると、待ち構えていたかのように騎士達がオレ達を取り囲んだ。

 彼らの目は虚ろに濁り、その精神が何者かに支配されていることは誰の目にも明らかだった。

「……大人しく着いて行くから、手荒な真似はよしてくれよ。お姫様みたいに丁重に扱ってくれ」

 芝居がかった仕草で肩をすくめ両手を上げてみたが、誰も笑ってはくれない。唯一笑ってくれそうなスピカも、いつの間にかどこかに消えてしまっている。

 つまりは完全にすべった。
 ……やんなきゃよかったな。



 ◇◇◇


 
「随分と礼節を尽くしたお出迎えだ。聖女様はよっぽど“勇者“に興味がおありのようだな」

 厳重にされた馬車に揺られながら、嫌味ったらしく吐き捨てる。
 同乗するアイリの“人形“から罵声の一つでも飛んでくるかと思ったが、彼はなにも言わない。本当に人形のように、ただじっと前を見つめているだけだ。

「ベル……本当に、このまま行くんですか」
 
「今更どうしようもないだろ」

 グレンは今のところ、オレと一緒に王宮へと護送されているが……引き離されたら面倒だな。

「考えてみれば彼女がオレを害する気なら、オレを呼びつける必要はない。その点は安心してもいいんじゃないか?」

「まだ、単に戦うだけの方がマシでしたよ」

 完全に同意だ。
 思惑のわからない敵ほど不気味なものはない。単純に攻撃してくれた方がグレンの言う通り、マシだった。

「オレを傀儡にしたところで彼女個人に益があるとも思えないし……やっぱり、直接会って訊いてみた方が早い。そういう意味では、この方が都合が良かったのかもな」

「……意地っ張り」

「空元気だよ」

 当然、不安はある。

 おそらくオレは、アイリと……得体の知れない敵と一人で対峙するのだから。

 それでも、今は笑うしかない。

「グレン。大丈夫――オレはずっと、お前の傍にいるよ」

 窓の外の景色は流れ、着実に王都へと近づいてきていた。



 ◇◇◇



 馬車は程なくして王宮へ到着した。
 
 離れたときよりも何倍も早くにたどり着いたが……御者が特別乱暴だったわけではない。

 道が、不自然に空いていたのだ。
 まるでオレを聖女のもとへと導くように。


 人々が呼吸をやめてしまったかのごとくに、王都中は静まりかえっている。
 ……これも、彼女の魔法の影響なのだろう。

 
 馬車を降りると、兵士が近寄って告げてくる。

「ここから先は、“ベルンハルト様お一人を通すように“とアイリ様が仰っています」

「……二人っきりで話したいって? 熱烈なラブコールだな」

 軽口を叩いてみたが、グレンと離れるのは――怖い。
 繋いだ手にぎゅっと力がこもって、汗ばんだ。

 グレンは膝をつくと、人目もはばからずに繋がれたままの手に唇を押し当て、囁く。
 
「ベル。今の俺には、なんの力もありません。でも……大丈夫です。俺の心はずっと、貴方だけのものです」

 その囁きとともに、グレンの手から魔力が湧き上がった。

 同時に、傀儡になった兵士たちが悲鳴もあげずに倒れて行く。

「……っ、グレン、これは……?」

「俺も、スピカのように、魔力を奪い自分のものにすることができるんです。ただ彼女と同じく聖女の魔力に阻まれていましたが……どうにかその阻害をかいくぐれないかと、この一週間魔力コントロールの練習をしていました。――練習の甲斐があって良かったです」

 ああ……彼は、スピカの、魔王の末裔。
 魔王と同じ力を――いや、魔王以上の力を持っているんだった。
 
 
「俺が怖いですか?」

 輝く黄金の目が細められる。
 オレの答えなんて、知っているくせに。

「怖いよ。――怖いぐらいに、かっこいい」

「ふふっ」

 こんな台詞で笑ってくれるのはグレン一人だけだが、彼さえ笑ってくれるならそれで構わない。


「さて。このまま帰りたいところですが、折角ですし……傍迷惑な聖女様の顔でも拝みに行きましょうか」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【R18】兄弟の時間【BL】

BL
色々あってニートになった僕、斑鳩 鷹は当たり前だけど両親にめっちゃ将来を心配されまさかの離島暮らしを提案されてしまう。 待ってくれよ! アマゾンが当日配送されないとこなんて無理だし、アニメイトがない世界に住めるか!  斯くて僕は両親が改心すればと家出を決意したが行く宛はなく、行きついたさきはそいつの所だった。 「じゃぁ結婚しましょうか」 眼鏡の奥の琥珀の瞳が輝いて、思わず頷きそうになったけど僕はぐっと堪えた。 そんな僕を見て、そいつは優しく笑うと机に置かれた手を取って、また同じ言葉を言った。 「結婚しましょう、兄さん」 R18描写には※が付いてます。

兄に魔界から追い出されたら祓魔師に食われた

紫鶴
BL
俺は悪魔!優秀な兄2人に寄生していたニート悪魔さ! この度さすがに本業をサボりすぎた俺に1番目の兄が強制的に人間界に俺を送り込んで人間と契約を結べと無茶振りをかましてきた。 まあ、人間界にいれば召喚されるでしょうとたかをくくっていたら天敵の祓魔師が俺の職場の常連になって俺を監視するようになったよ。しかもその祓魔師、国屈指の最強祓魔師なんだって。悪魔だってバレたら確実に殺される。 なんで、なんでこんなことに。早くおうち帰りたいと嘆いていたらある日、とうとう俺の目の前に召喚陣が現れた!! こんな場所早くおさらばしたい俺は転移先をろくに確認もせずに飛び込んでしまった! そして、目の前には、例の祓魔師が。 おれ、死にました。 魔界にいるお兄様。 俺の蘇りの儀式を早めに行ってください。あと蘇ったら最後、二度と人間界に行かないと固く誓います。 怖い祓魔師にはもうコリゴリです。 ーーーー ざまぁではないです。基本ギャグです(笑) こちら、Twitterでの「#召喚される受けBL」の企画作品です。 楽しく参加させて頂きました!ありがとうございます! ムーンライトノベルズにも載せてますが、多少加筆修正しました。

転生したら本でした~スパダリ御主人様の溺愛っぷりがすごいんです~

トモモト ヨシユキ
BL
10000回の善行を知らないうちに積んでいた俺は、SSSクラスの魂として転生することになってしまったのだが、気がつくと本だった‼️ なんだ、それ! せめて、人にしてくれよ‼️ しかも、御主人様に愛されまくりってどうよ⁉️ エブリスタ、ノベリズムにも掲載しています。

助けたドS皇子がヤンデレになって俺を追いかけてきます!

夜刀神さつき
BL
医者である内藤 賢吾は、過労死した。しかし、死んだことに気がつかないまま異世界転生する。転生先で、急性虫垂炎のセドリック皇子を見つけた彼は、手術をしたくてたまらなくなる。「彼を解剖させてください」と告げ、周囲をドン引きさせる。その後、賢吾はセドリックを手術して助ける。命を助けられたセドリックは、賢吾に惹かれていく。賢吾は、セドリックの告白を断るが、セドリックは、諦めの悪いヤンデレ腹黒男だった。セドリックは、賢吾に助ける代わりに何でも言うことを聞くという約束をする。しかし、賢吾は約束を破り逃げ出し……。ほとんどコメディです。  ヤンデレ腹黒ドS皇子×頭のおかしい主人公

異世界転移して出会っためちゃくちゃ好きな男が全く手を出してこない

春野ひより
BL
前触れもなく異世界転移したトップアイドル、アオイ。 路頭に迷いかけたアオイを拾ったのは娼館のガメツイ女主人で、アオイは半ば強制的に男娼としてデビューすることに。しかし、絶対に抱かれたくないアオイは初めての客である美しい男に交渉する。 「――僕を見てほしいんです」 奇跡的に男に気に入られたアオイ。足繁く通う男。男はアオイに惜しみなく金を注ぎ、アオイは美しい男に恋をするが、男は「私は貴方のファンです」と言うばかりで頑としてアオイを抱かなくて――。 愛されるには理由が必要だと思っているし、理由が無くなれば捨てられて当然だと思っている受けが「それでも愛して欲しい」と手を伸ばせるようになるまでの話です。 金を使うことでしか愛を伝えられない不器用な人外×自分に付けられた値段でしか愛を実感できない不器用な青年

異世界召喚チート騎士は竜姫に一生の愛を誓う

はやしかわともえ
BL
11月BL大賞用小説です。 主人公がチート。 閲覧、栞、お気に入りありがとうございます。 励みになります。 ※完結次第一挙公開。

最強推し活!!推しの為に転生して(生まれて)きました!!

藤雪たすく
BL
異世界から転移してきた勇者様と聖女様がこの世界に残した大きな功績……魔王討伐?人間族と魔族の和解?いや……【推し】という文化。 【推し】という存在が与えてくれる力は強大で【推し活】の為に転生まで成し遂げた、そんな一人の男の推し活物語。

小悪魔系世界征服計画 ~ちょっと美少年に生まれただけだと思っていたら、異世界の救世主でした~

朱童章絵
BL
「僕はリスでもウサギでもないし、ましてやプリンセスなんかじゃ絶対にない!」 普通よりちょっと可愛くて、人に好かれやすいという以外、まったく普通の男子高校生・瑠佳(ルカ)には、秘密がある。小さな頃からずっと、別な世界で日々を送り、成長していく夢を見続けているのだ。 史上最強の呼び声も高い、大魔法使いである祖母・ベリンダ。 その弟子であり、物腰柔らか、ルカのトラウマを刺激しまくる、超絶美形・ユージーン。 外見も内面も、強くて男らしくて頼りになる、寡黙で優しい、薬屋の跡取り・ジェイク。 いつも笑顔で温厚だけど、ルカ以外にまったく価値を見出さない、ヤンデレ系神父・ネイト。 領主の息子なのに気さくで誠実、親友のイケメン貴公子・フィンレー。 彼らの過剰なスキンシップに狼狽えながらも、ルカは日々を楽しく過ごしていたが、ある時を境に、現実世界での急激な体力の衰えを感じ始める。夢から覚めるたびに強まる倦怠感に加えて、祖母や仲間達の言動にも不可解な点が。更には魔王の復活も重なって、瑠佳は次第に世界全体に疑問を感じるようになっていく。 やがて現実の自分の不調の原因が夢にあるのではないかと考えた瑠佳は、「夢の世界」そのものを否定するようになるが――。 無自覚小悪魔ちゃん、総受系愛され主人公による、保護者同伴RPG(?)。 (この作品は、小説家になろう、カクヨムにも掲載しています)

処理中です...