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【後日譚2】異世界(日本)から聖女が来たらしいけど、オレ(元勇者で元日本人)には関係ないったらない!!!
第13話 合言葉
しおりを挟む「――アイリ様のご命令です。王宮までご同行を」
門を出ると、待ち構えていたかのように騎士達がオレ達を取り囲んだ。
彼らの目は虚ろに濁り、その精神が何者かに支配されていることは誰の目にも明らかだった。
「……大人しく着いて行くから、手荒な真似はよしてくれよ。お姫様みたいに丁重に扱ってくれ」
芝居がかった仕草で肩をすくめ両手を上げてみたが、誰も笑ってはくれない。唯一笑ってくれそうなスピカも、いつの間にかどこかに消えてしまっている。
つまりは完全にすべった。
……やんなきゃよかったな。
◇◇◇
「随分と礼節を尽くしたお出迎えだ。聖女様はよっぽど“勇者“に興味がおありのようだな」
厳重に警備された馬車に揺られながら、嫌味ったらしく吐き捨てる。
同乗するアイリの“人形“から罵声の一つでも飛んでくるかと思ったが、彼はなにも言わない。本当に人形のように、ただじっと前を見つめているだけだ。
「ベル……本当に、このまま行くんですか」
「今更どうしようもないだろ」
グレンは今のところ、オレと一緒に王宮へと護送されているが……引き離されたら面倒だな。
「考えてみれば彼女がオレを害する気なら、オレを呼びつける必要はない。その点は安心してもいいんじゃないか?」
「まだ、単に戦うだけの方がマシでしたよ」
完全に同意だ。
思惑のわからない敵ほど不気味なものはない。単純に攻撃してくれた方がグレンの言う通り、マシだった。
「オレを傀儡にしたところで彼女個人に益があるとも思えないし……やっぱり、直接会って訊いてみた方が早い。そういう意味では、この方が都合が良かったのかもな」
「……意地っ張り」
「空元気だよ」
当然、不安はある。
おそらくオレは、アイリと……得体の知れない敵と一人で対峙するのだから。
それでも、今は笑うしかない。
「グレン。大丈夫――オレはずっと、お前の傍にいるよ」
窓の外の景色は流れ、着実に王都へと近づいてきていた。
◇◇◇
馬車は程なくして王宮へ到着した。
離れたときよりも何倍も早くにたどり着いたが……御者が特別乱暴だったわけではない。
道が、不自然に空いていたのだ。
まるでオレを聖女のもとへと導くように。
人々が呼吸をやめてしまったかのごとくに、王都中は静まりかえっている。
……これも、彼女の魔法の影響なのだろう。
馬車を降りると、兵士が近寄って告げてくる。
「ここから先は、“ベルンハルト様お一人を通すように“とアイリ様が仰っています」
「……二人っきりで話したいって? 熱烈なラブコールだな」
軽口を叩いてみたが、グレンと離れるのは――怖い。
繋いだ手にぎゅっと力がこもって、汗ばんだ。
グレンは膝をつくと、人目もはばからずに繋がれたままの手に唇を押し当て、囁く。
「ベル。今の俺には、なんの力もありません。でも……大丈夫です。俺の心はずっと、貴方だけのものです」
その囁きとともに、グレンの手から魔力が湧き上がった。
同時に、傀儡になった兵士たちが悲鳴もあげずに倒れて行く。
「……っ、グレン、これは……?」
「俺も、スピカのように、魔力を奪い自分のものにすることができるんです。ただ彼女と同じく聖女の魔力に阻まれていましたが……どうにかその阻害をかいくぐれないかと、この一週間魔力コントロールの練習をしていました。――練習の甲斐があって良かったです」
ああ……彼は、スピカの、魔王の末裔。
魔王と同じ力を――いや、魔王以上の力を持っているんだった。
「俺が怖いですか?」
輝く黄金の目が細められる。
オレの答えなんて、知っているくせに。
「怖いよ。――怖いぐらいに、かっこいい」
「ふふっ」
こんな台詞で笑ってくれるのはグレン一人だけだが、彼さえ笑ってくれるならそれで構わない。
「さて。このまま帰りたいところですが、折角ですし……傍迷惑な聖女様の顔でも拝みに行きましょうか」
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