アリ人間

ふうわ

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アリ人間

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アリ人間
作ふうわ



彼女は潰れた。



先程まであった温かな感覚は消えうせ、
彼女が死んだ。という衝撃が頭に響く。


「この餌はね、子供達が育つ為の大切な餌なんやよー。」


そう新米の働きアリ達に言い、彼女は潰れた。草むらだった。草と一緒に踏みつけられている。
他のアリ達は即座にそこを離れた。
そして遠くから彼女の最後を見届ける。
潰されたのは私よりももっと前に働きアリになった、働きアリの先輩とも言える働きアリだ。
どうやって巣まで餌を運ぶか。どの様なルートで帰るかなど働きアリの術を教えてくれるとても私が尊敬していた働きアリだ。
働きアリの中で1番優秀だった彼女が、死ぬ訳が無いと思っていた。それが今、頭と体が引き離され完全に死んでいる。
   私達の何千倍ともなるやつが足で彼女を擦るように地面に押し付ける。擦ると同時に彼女の頭がコロコロと動く。


「やったー!1匹殺したよー!!」

彼女を殺して楽しんでいる。こんな地獄絵図を私は見る事しか出来ない。彼女の潰れざまを。

私達を興味本意で殺すやつは人間しかいない。それも残酷に。
足で潰されるやつは数え切れないほど見てきたが、中には人間の手で引き裂かれるアリは少なくない。
人間達を止める事は出来ない。神様から与えられたのは、この小さな身体と能力だ。
命は平等に与えられる。しかし持っている力が違えば侵略を始める。
働きアリ達の命は人間の興味本意で殺される。

そう、あの時私をここに連れて来たやつは私の事など覚えているわけが無いだろう。







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