どうすれば自由気侭に生きれるのだろう

黒梟

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レイ視点

 リリム様は身体を動かす事もままならず、取りこまされた媚薬で身体も火照り精神的にもキツい状況に有るだろう。
 が2人の邪魔をしに行く前にケリを付けなければ。

 
 バックヤードの化粧室前で待機していると、サブリーダーと思しき人物がやってきた。
 私を目にしても何の反応を見せないところを見ると、本当に何の権限も与えられていない形だけのサブリーダーなのだと分かる。

 オーナーと支配人には、私が来たらリリム様を直ぐに下がらせるという契約なのだから。

 そもそもこの店は帝国の人間が出資して、経営もそれに特化した貴族に任せている。その国での情報収集も兼ねているからである。
 そういう貴族は皇族とも面識がある。よって、ここの経営者オーナーも私やとの面識はある。
 
 だが目の前にいる彼は違う。私の事もわからない様だし、何より相手を見下した様に振る舞うその姿に、何故この様な者を雇っているのか疑問に思う。
 後で支配人からでも聞いてみるとしよう。その時にはこの者はもうこの世に居ないであろうが。

「おい!」
「何です?」
「此処に若い女が来なかったか?」
「ああ、その方でしたら、迎えの者が連れて帰りましたよ。ご気分も悪そうでしたから」
「何だと、まだあのお客様の相手をしてもらわねばならんのに、仕事を放棄して帰るなど」
「そもそも、彼女の仕事は舞を披露しお客様を満足させる事であって、接客は含まれておりません。何を誤解されているのかは知りませんが、身体を売っているわけでは無いのです。オーナーや支配人もそれは了承済みです。というかそんな下衆な店では無いと仰っていましたがね。1職員の貴方が店の風紀を乱すのはいかがなものかと思いますよ」

 そこまで説明すると男は顔を真っ赤にして睨んでくる。

 迫力も何も感じませんね。

「うるさい!世間知らずの小娘に世の中の事を教えてやろうとしているだけだ!」
「ああ、余計なお世話ですね。ああたの様な者に教えを賜る事など何もありませんよ。自己満足も程々になさってください」
「もういい、あの小娘を連れ戻しに行く」
「誰の許しを得てその様なことを仰られているのですか」

 静かに響くその声は、この店の支配人のものであった。

 男は支配人の姿を確認すると顔中から汗を吹き出しそれを拭い始めた。
 当然である、支配人とはいえこの者は帝国では公爵家の次男。所作が綺麗なだけではなく、声を荒立てる訳でも暴力を振るう訳でもない。
 ただ言葉に乗せる威圧感が凄いのだ。そう、言葉だけで相手を殺す事も可能であろう。
 最初は社会経験として働いていたが、案外性に合っていたらしく此処で定職に就いている。信頼できるものの1人である。

 小物なこの男は今にも泡を吹いて倒れそうであるが、説明してもらわなければこちらとしても納得できない。

「我が店でお預かりしているリリム殿は、本人の希望があれば接客をする、という契約をしております。彼女が此方で働く際の契約書にもそう記してあり、職員全員が知り得ている事です。
 如何なる理由があろうと、己の私利私欲で彼女の行動を決める事は禁じられております。
貴方は今回誰に、幾ら渡されたのですか?我が店は風俗ではありません。その様な店で働きたいのなら今直ぐお辞め下さい。
ああ、今日付けの退職書をお渡ししておきますね」

 有無を言わさず事を進める様は流石としかいいようがない。

 男は狼狽え何とか取りすがろうとするが、
「ああ、女性をあてがうのであれば店の外でどうぞ。その件に関しましては店は関与しませんので。貴方が勝手にしたことで店が被害を被った場合はその被害金額を請求いたしますので悪しからず」

 男に店のお金は扱わせていない。何ら問題ないとそのまま店から追い出した。
 そして私に向き直ると彼は頭を下げた。
「従業員が申し訳ございませんでした。本来マネージャーが在籍しているはずなのですが見当たらず、捜索しましたところ倉庫に押し込められていたそうです。

「それは確信犯だったのでしょう。そのマネージャに怪我はなかったのですか?」
「ありがとうございます。擦り傷などはありましたが、日常生活に支障はなく無事です。リリム様には怖い思いをさせてしまい申し訳ございません」

 もう一度深く頭を下げる彼に忠誠心の高さを思わせる。
 気に入らなければ首を刎ねてくれて構わないと。

 「いえ、身体は無事の様ですし、精神面はがフォローするでしょう。ただ、あの男はが直接手を下すでしょうし、情報だけいただけますか?」

頭を上げた支配人が安堵の表情を浮かべる。

「ありがとうございます。では此方で調べ上げているかの者に関する書類をお渡しいたします」

 そう言って支配人と共に彼の執務室まで向かった。
 書類を受け取ると、礼を述べ引き続きよろしく頼むと伝え店を後にする。

 例の男達はリリム様を追ってボロ屋の方に向かったと連絡を受ける。


 やれやれ、では捕まえてを待ちますか。


今はリリム様を可愛がっている途中でしょうから邪魔は厳禁ですね。

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