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それでも僕は揉みしだく
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サラリーマン生活二十余年、ボクは今人生の危機に瀕していた。
仕事を終え、自宅へと戻るため道端を歩いていたところ、見知らぬ女性から突然、痴漢だという濡れ衣を着せられたのだ。
断っておくがボクは断じて痴漢行為などした覚えは無い!
ボクはただ、前から歩いて来た女性のおっぱいを鷲掴みにしただけだ。
「ちょっと何とか言いなさいよ、この痴漢!」
女性は物凄い剣幕でボクをまくし立てている。
恐らく二十代前半であろうその女性は、黒髪のセミロングで、顔はくっきりした――いや、やめておこう、彼女の容姿などボクにとっては至極どうでもいいことなのだ。
問題となるのは、そう、彼女の持つおっぱいである。
バスト93、アンダー70のFカップである。そう、Fカップである!
大事なことなので脳内で二回繰り返してしまったが、バストの中でFカップというのは至高のサイズなのだ。GだHだJなどというもはや乳とは呼べぬ物体を除けば、Fカップというのはおっぱいのサイズで最大のサイズと言っても過言ではない。
しかも少しだけ重力に身を委ねつつも、『私を見くびらないで』と言わんばかりの張りを残すおわん型のおっぱいは正に究極であり、ボクがこれまでに出会ってきた数々のおっぱいを悠に凌駕する実力を兼ね備えたそれを前にして、触れることすらせずに素通りするなど逆に失礼ではないか、おっぱいに対して。
「あなたは何か勘違いをしていませんか?」
「は? 勘違いって何よ! いいから交番まで行くわよ、拒むんなら110番するし」
「いやいやいや、一体全体何をもってしてボクを痴漢だと言い張るんですか?」
「とぼけんじゃないわよ、あんた私の胸いきなり触ってきたでしょうが!」
「ええ、触りました。それが何か?」
「開き直ってんじゃないわよ、女性の胸をいきなり触る奴が痴漢じゃ無いなら誰が痴漢になるってのよ!?」
それを聞き、ボクは大きい溜め息を吐いて答える。
「いいですか? 痴漢というのは己の欲求、つまり性欲を満たす為に女性にみだらな行為をする輩をそう呼ぶんです」
「あんたは違うって言うつもり!?」
「ええ、違います。私はあなたの持つ素晴らしいおっぱいに感激しただけであって、あの行為はいわば崇拝と同じ。どこかの神社に御神牛というのがあって体の悪い所を撫でると治るとか言うのがありますよね? それと同じです」
「全然意味わかないんだけど! とにかくもう警察呼ぶから!」
「ちょ、ちょっと待ちなさい! その行為は明らかに愚かな行為だと気付きませんか!?」
「何が愚かなのよ?」
「日本には淫行罪という法律があります」
「それが何なのよ?」
「例えば我々大人が18歳未満の女性と関係を持った場合、罪として罰せられますね?」
「は? 当然でしょうが」
「しかし! 結婚というのは女性は16歳から出来るんです! つまり婚姻届という紙ペラ一枚に署名するだけで16歳の少女とニャンニャンしてもいいと国が言ってる訳ですよ!?」
「……だから何なの?」
「とどのつまり、そんな明らかな矛盾を抱えた『法律』を盾にする国家権力に頼るなど愚の骨頂だと言っているんです」
「はいはい、続きは檻の中でのたまってくれればいいから」
この女性はボクがいくら熱く語っても全く聞き入れようとしない。これだけ素晴らしいおっぱいを携えながら、何故こうも愚かなのか。
「ちょっと待って! 警察はちょっと待って!」
「往生際悪いわね、もう諦めたら?」
「諦めるとか諦めないとかそういう次元の話じゃないんですよ!」
「じゃあどういう次元の話なのよ?」
女性の追求にボクはしばし口を噤み、考え込む。
「一つ提案があるんですが?」
「提案?」
「はい、バッファローゲームをして、ボクが見事あなたの乳首の位置を当てたら全て無かったことにしていただけません?」
「する訳ねえだろ! 得するのてめえだけじゃねえか!」
「これじゃあ話が揉める一方ですよ、乳だけに」
「全然上手くないんだけど!」
こうして彼女とボクの主張は互いに平行線を辿るばかりであった。
そして痺れを切らしたボクは、
「あなたと話していても不愉快です、失礼します」
と、その場を立ち去ろうとした。
しかし、彼女に腕を掴まれ制止される。
「どさくさに紛れて何逃げようとしてんのよ!?」
その一言に、僕の中から熱い何かがこみ上げてきた。
「いい加減にしないか!」
「!?」
「逃げるだと? ボクが今まで逮捕怖さに屁理屈をこねていたとでも思っているのか君は!?」
「え、だってそうでしょ?」
「違う、ボクは今本当に悲しいんだ」
ボクは溢れる感情を抑えきれず、ボロボロと涙をこぼした。
「そんな……そんな素晴らしいおっぱいを持ちながら、何故自分の可能性に気付けない? 何故君は他人の幸せの為に使おうとしない? 君のおっぱいは素晴らしい。大きさ、形、柔らかさ、弾力、どれをとっても一級品だ。総合力で言えば間違い無く君は日本の頂点に立てるおっぱいを持っている。それがどういうことだか分かるか?」
「い、いえ」
「ボクは君のおっぱいを揉んだ瞬間、会社での嫌なことも同僚への嫉妬心も上司への憎悪も全てが消え去り、胸の中は晴れ渡る青空のように澄みきった。つまり君のおっぱいは戦争を止めることすら可能かもしれないポテンシャルを持っているということなんだ!」
「戦争……を?」
「とある国では戦争の影響により、戦争が終わった今でも五分に一人の子どもが死んでいるという。そんな悲劇を、世に蔓延る哀しみを、君なら消し去ることが出来るかもしれないと、ボクはあの時本気で思えたんだ。それを君はあろう事か、その国宝級のおっぱいを自分だけで一人占め、或いは彼氏と一緒に二人占めにしているんだぞ! 恥を知れ!!」
ボクは真っ直ぐ、正直な気持ちを彼女にぶつけた。
心の底から彼女の道を正してあげたかった。
すると突然彼女は俯き、涙をポロポロと流し始める。
「私が……間違って……いました」
そして、震えた声でそう呟いた。
「わかって――わかってくれたんだね?」
「はい、あなたのお陰で、私がどれだけ愚かなのか、今までどれだけ愚かな行為をしてきたのかを気づかされました。……償いたい、償い続けたい、今からでも間に合うでしょうか?」
嗚咽しながら囁く彼女に、ボクは優しく手を置いた。
「勿論だ、心を入れ替えて何かを始めようとするのに、遅すぎることなんてあるはずが無い」
「はい」
「手始めに目の前にいる、荒んだ中年の心を癒してくれるかい?」
「どうすれば、いいですか?」
「君のおっぱいを見せて欲しい、その世界を救うかもしれない救世のおっぱいを」
「わかりました」
彼女はそう言うと、ゆっくりと上着を脱ぎ、ブラジャーのホックを外す。
すると、ボクが世界一と認めたおっぱいが露わになる。
…………
「…………」
「どうですか?」
「あ、いや、もういいっすわ」
「どうしたんですか? あなたがあれだけ熱弁してくれた私のおっぱいを晒してるんですよ?」
「いやいやいや、本当もういいんで、しまってくれます? それ」
「ちょっと、何なのあんた? 何であからさま萎えてんの?」
「だって……」
ボクは忌憚のない意見をはっきりと述べた。
「乳輪でかいし、黒いんすもんあんた」
「はああああああ!?」
「いややっぱ外見だけで判断するのは浅はかっすね、勉強になりましたわ本当」
「ちょっと待てこら、さっきまで世界を救うおっぱいだとか何とか言ってたじゃねか、乳輪だけで評価覆すんかい!」
「いやこれだけのおっぱいならボクも多少は目を瞑るんですけど、それ一昔前のシングルCD並じゃないですか、やっぱりベストは4~5cmっしょ」
「だれの乳輪がシングルCDじゃ! 今の子どもには伝わらねえんだよ!」
彼女はブラジャーを付け、上着を着直した。そしてがっくりと肩を落として言う。
「やっと、自分の過ちに気付けたのに、やっと自分がすべき事が解ったのに。結局私には世界を救うことなんて……私はこれからどうすれば……」
項垂れる彼女の肩に、ボクは再び優しく手を置いた。
「大丈夫、まだ君は誰かを救うことがちゃんと出来る」
「え?」
「君は、ボクを救うことが出来るんだ。荒んだ心と哀れな人生しか持ち合わせてないボクを闇の中から」
「あなたを? でもあなた、私の胸じゃ駄目なんでしょ?」
「そんなことはない、さっきはあまりの落胆に酷いことを言ってしまったようだが、君のおっぱいはちゃんとボクを救える」
「私は、どうすればいいですか?」
ボクは彼女の目を見つめ、優しく顔をほころばせて答える。
「吸わせてくれれば、それで」
「お巡りさーーーーーん! こっちです!!」
完
仕事を終え、自宅へと戻るため道端を歩いていたところ、見知らぬ女性から突然、痴漢だという濡れ衣を着せられたのだ。
断っておくがボクは断じて痴漢行為などした覚えは無い!
ボクはただ、前から歩いて来た女性のおっぱいを鷲掴みにしただけだ。
「ちょっと何とか言いなさいよ、この痴漢!」
女性は物凄い剣幕でボクをまくし立てている。
恐らく二十代前半であろうその女性は、黒髪のセミロングで、顔はくっきりした――いや、やめておこう、彼女の容姿などボクにとっては至極どうでもいいことなのだ。
問題となるのは、そう、彼女の持つおっぱいである。
バスト93、アンダー70のFカップである。そう、Fカップである!
大事なことなので脳内で二回繰り返してしまったが、バストの中でFカップというのは至高のサイズなのだ。GだHだJなどというもはや乳とは呼べぬ物体を除けば、Fカップというのはおっぱいのサイズで最大のサイズと言っても過言ではない。
しかも少しだけ重力に身を委ねつつも、『私を見くびらないで』と言わんばかりの張りを残すおわん型のおっぱいは正に究極であり、ボクがこれまでに出会ってきた数々のおっぱいを悠に凌駕する実力を兼ね備えたそれを前にして、触れることすらせずに素通りするなど逆に失礼ではないか、おっぱいに対して。
「あなたは何か勘違いをしていませんか?」
「は? 勘違いって何よ! いいから交番まで行くわよ、拒むんなら110番するし」
「いやいやいや、一体全体何をもってしてボクを痴漢だと言い張るんですか?」
「とぼけんじゃないわよ、あんた私の胸いきなり触ってきたでしょうが!」
「ええ、触りました。それが何か?」
「開き直ってんじゃないわよ、女性の胸をいきなり触る奴が痴漢じゃ無いなら誰が痴漢になるってのよ!?」
それを聞き、ボクは大きい溜め息を吐いて答える。
「いいですか? 痴漢というのは己の欲求、つまり性欲を満たす為に女性にみだらな行為をする輩をそう呼ぶんです」
「あんたは違うって言うつもり!?」
「ええ、違います。私はあなたの持つ素晴らしいおっぱいに感激しただけであって、あの行為はいわば崇拝と同じ。どこかの神社に御神牛というのがあって体の悪い所を撫でると治るとか言うのがありますよね? それと同じです」
「全然意味わかないんだけど! とにかくもう警察呼ぶから!」
「ちょ、ちょっと待ちなさい! その行為は明らかに愚かな行為だと気付きませんか!?」
「何が愚かなのよ?」
「日本には淫行罪という法律があります」
「それが何なのよ?」
「例えば我々大人が18歳未満の女性と関係を持った場合、罪として罰せられますね?」
「は? 当然でしょうが」
「しかし! 結婚というのは女性は16歳から出来るんです! つまり婚姻届という紙ペラ一枚に署名するだけで16歳の少女とニャンニャンしてもいいと国が言ってる訳ですよ!?」
「……だから何なの?」
「とどのつまり、そんな明らかな矛盾を抱えた『法律』を盾にする国家権力に頼るなど愚の骨頂だと言っているんです」
「はいはい、続きは檻の中でのたまってくれればいいから」
この女性はボクがいくら熱く語っても全く聞き入れようとしない。これだけ素晴らしいおっぱいを携えながら、何故こうも愚かなのか。
「ちょっと待って! 警察はちょっと待って!」
「往生際悪いわね、もう諦めたら?」
「諦めるとか諦めないとかそういう次元の話じゃないんですよ!」
「じゃあどういう次元の話なのよ?」
女性の追求にボクはしばし口を噤み、考え込む。
「一つ提案があるんですが?」
「提案?」
「はい、バッファローゲームをして、ボクが見事あなたの乳首の位置を当てたら全て無かったことにしていただけません?」
「する訳ねえだろ! 得するのてめえだけじゃねえか!」
「これじゃあ話が揉める一方ですよ、乳だけに」
「全然上手くないんだけど!」
こうして彼女とボクの主張は互いに平行線を辿るばかりであった。
そして痺れを切らしたボクは、
「あなたと話していても不愉快です、失礼します」
と、その場を立ち去ろうとした。
しかし、彼女に腕を掴まれ制止される。
「どさくさに紛れて何逃げようとしてんのよ!?」
その一言に、僕の中から熱い何かがこみ上げてきた。
「いい加減にしないか!」
「!?」
「逃げるだと? ボクが今まで逮捕怖さに屁理屈をこねていたとでも思っているのか君は!?」
「え、だってそうでしょ?」
「違う、ボクは今本当に悲しいんだ」
ボクは溢れる感情を抑えきれず、ボロボロと涙をこぼした。
「そんな……そんな素晴らしいおっぱいを持ちながら、何故自分の可能性に気付けない? 何故君は他人の幸せの為に使おうとしない? 君のおっぱいは素晴らしい。大きさ、形、柔らかさ、弾力、どれをとっても一級品だ。総合力で言えば間違い無く君は日本の頂点に立てるおっぱいを持っている。それがどういうことだか分かるか?」
「い、いえ」
「ボクは君のおっぱいを揉んだ瞬間、会社での嫌なことも同僚への嫉妬心も上司への憎悪も全てが消え去り、胸の中は晴れ渡る青空のように澄みきった。つまり君のおっぱいは戦争を止めることすら可能かもしれないポテンシャルを持っているということなんだ!」
「戦争……を?」
「とある国では戦争の影響により、戦争が終わった今でも五分に一人の子どもが死んでいるという。そんな悲劇を、世に蔓延る哀しみを、君なら消し去ることが出来るかもしれないと、ボクはあの時本気で思えたんだ。それを君はあろう事か、その国宝級のおっぱいを自分だけで一人占め、或いは彼氏と一緒に二人占めにしているんだぞ! 恥を知れ!!」
ボクは真っ直ぐ、正直な気持ちを彼女にぶつけた。
心の底から彼女の道を正してあげたかった。
すると突然彼女は俯き、涙をポロポロと流し始める。
「私が……間違って……いました」
そして、震えた声でそう呟いた。
「わかって――わかってくれたんだね?」
「はい、あなたのお陰で、私がどれだけ愚かなのか、今までどれだけ愚かな行為をしてきたのかを気づかされました。……償いたい、償い続けたい、今からでも間に合うでしょうか?」
嗚咽しながら囁く彼女に、ボクは優しく手を置いた。
「勿論だ、心を入れ替えて何かを始めようとするのに、遅すぎることなんてあるはずが無い」
「はい」
「手始めに目の前にいる、荒んだ中年の心を癒してくれるかい?」
「どうすれば、いいですか?」
「君のおっぱいを見せて欲しい、その世界を救うかもしれない救世のおっぱいを」
「わかりました」
彼女はそう言うと、ゆっくりと上着を脱ぎ、ブラジャーのホックを外す。
すると、ボクが世界一と認めたおっぱいが露わになる。
…………
「…………」
「どうですか?」
「あ、いや、もういいっすわ」
「どうしたんですか? あなたがあれだけ熱弁してくれた私のおっぱいを晒してるんですよ?」
「いやいやいや、本当もういいんで、しまってくれます? それ」
「ちょっと、何なのあんた? 何であからさま萎えてんの?」
「だって……」
ボクは忌憚のない意見をはっきりと述べた。
「乳輪でかいし、黒いんすもんあんた」
「はああああああ!?」
「いややっぱ外見だけで判断するのは浅はかっすね、勉強になりましたわ本当」
「ちょっと待てこら、さっきまで世界を救うおっぱいだとか何とか言ってたじゃねか、乳輪だけで評価覆すんかい!」
「いやこれだけのおっぱいならボクも多少は目を瞑るんですけど、それ一昔前のシングルCD並じゃないですか、やっぱりベストは4~5cmっしょ」
「だれの乳輪がシングルCDじゃ! 今の子どもには伝わらねえんだよ!」
彼女はブラジャーを付け、上着を着直した。そしてがっくりと肩を落として言う。
「やっと、自分の過ちに気付けたのに、やっと自分がすべき事が解ったのに。結局私には世界を救うことなんて……私はこれからどうすれば……」
項垂れる彼女の肩に、ボクは再び優しく手を置いた。
「大丈夫、まだ君は誰かを救うことがちゃんと出来る」
「え?」
「君は、ボクを救うことが出来るんだ。荒んだ心と哀れな人生しか持ち合わせてないボクを闇の中から」
「あなたを? でもあなた、私の胸じゃ駄目なんでしょ?」
「そんなことはない、さっきはあまりの落胆に酷いことを言ってしまったようだが、君のおっぱいはちゃんとボクを救える」
「私は、どうすればいいですか?」
ボクは彼女の目を見つめ、優しく顔をほころばせて答える。
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