31 / 35
30
しおりを挟む
真昼は朝一番から行動を開始した。
理事長室に向かい、入る。
「おはようございます、理事長室代理」
「おはよう、真昼君。何か用かね?」
「単刀直入に言います。近いうちにデストロイヤーが襲来します。そのデストロイヤーは従来のデストロイヤーを凌ぐ強力な個体であるのは間違いないでしょう」
その言葉が予想外だったのか、理事長代理は面食らったような顔をした後、問いかけた。
「近いうちというのは?」
「具体的な時期はわかりません。今日かもしれないし、一週間後かもしれない」
「そのデストロイヤーが襲来するという根拠は?」
「私のラプラスとしての直感です」
「ふむ、世界唯一のラプラスとして活躍してきた君の言葉を軽んじるつもりはない。具体的には何をしてほしい?」
「防衛隊の出撃待機と百由ちゃんの高出力砲の設置、更に全てのアーセナルと衛士を動員した戦術機の緊急メンテナンスと出撃待機。外征任務の中止、他ガーデンの協力要請といったところでしょうか」
「かなり大規模だ。それをするだけの必要があるのかね?」
「わかりません。わかっているのは強力なデストロイヤーが二体やってくること、そしてその後にネストを破壊できる機会がやってくる事です」
「その具体性はどこかきたのかね?」
「時雨様です。時雨様の戦術機がデストロイヤーに突き刺さったままネストで修復されたことでネストが時雨様の影響を受けて変質。時雨様になろうとするデストロイヤーや性格を受け継いだ結果、通常の運営が出来なくなり強力なデストロイヤー排出する結果になりました。それは魔力の消耗を無視した方法である為、この二体を撃破すればネストが無防備な状態で晒されます」
「時雨様……か」
理事長代理は目を細めた。
真昼が時雨の幻覚を見ていることは上層部にとっては周知の事実だ。しかしその言動におかしな部分はない為、衛士として活動を許されてきた。それは成功して大戦果を上げ続けた。しかしここにきて、危険を知らせる警告をしてきた。
これをどう受け取るか迷っているのだろう。
「理事長代理、私は最善を常に尽くしてきました。現れるデストロイヤーは強いです。横浜衛士訓練校が陥落するかもしれません。私の言葉を信頼できないのはわかります。ですが、どうが、私の功績を鑑みてお願いできないでしょうか?」
真昼は頭を下げた。
理事長代理は息を吐くと頷いた。
「わかった。準備を進めよう。だがすぐに全てはできない。まずは外征の中止、高出力砲の設置、順次衛士の戦術機のメンテナンスからだ」
「ありがとうございます」
「ああ、少し待ちたまえ」
「なんですか?」
「結梨君については何か知っているか?」
「結梨? いえ、知りません」
「そうか、わかった」
真昼はお礼を言って部屋を出た。
「あと、するべきことは」
真昼は頭を回転させる。
組織の助力は得られた。なら他にするべき事はもっと個人的な事だ。だがただの一人で何ができる? やはり一人では駄目だ。組織の助力がなければ何もできない。
そこで真昼はGE.HE.NA.を思い出した。GE.HE.NA.用の端末にメッセージを入力する。
『緊急・横浜衛士訓練校に強力なデストロイヤーが襲来予定。サンプル確保のため防衛隊の装備に紛れ込ませ、大型長射程高出力砲やバトルクロスを要請します』
『試験開発中の新型B型兵装の実験も兼ねて輸送する。使用されよ』
『了解』
これでGE.HE.NA.からの支援ももらえる。
バトルクロスがあれば魔力と精神力は使うが強力な兵器だ。使用できるのは大きい。
その時、真昼の端末にメッセージが届けられた。
『一ノ瀬結梨および柊シノアの捕縛命令』
『一ノ瀬結梨はデストロイヤー由来の人造衛士であり、外部の研究機関に引き渡すことになった。しかし柊シノアの手引きによって逃亡して行方不明である。見つけ次第捕縛せよ』
『デストロイヤーを心通わす相手と見なすことは人類にとっての禁忌です。デストロイヤーと同じ魔力を操る衛士もまた一つ間違えば脅威と捉えらえかねません。それだけは絶対に避けねばなりません』
『現在防衛軍の部隊がこの学院に迫っています。人と衛士が争う事態は絶対に避けねばなりせん。各員落ち着いて、冷静に対処してください』
真昼はため息をついた。
(シノアちゃん、優しいのは良い事だけどそれは駄目だよ。今はデストロイヤー対策をしなきゃいけないのに、結梨の捜索にリソースを割くなんて)
足取り重くレギオンの待機室に足を向ける。
待機室には風間以外が揃っているようで、先の通達に対して活発な議論がされている様子だった。
「どうするんですかどうするんですか!? 結梨ちゃんがデストロイヤーでシノアさんと一緒に逃げて逮捕命令って!」
「どうする?」
「そんなの決まってますよ! だって結梨ちゃんがデストロイヤーのはずないじゃないですか! シノアさんは間違ってないですよ!」
「だけど学院から逃げたということはここも安全ではないと判断したということよ」
「私は強化衛士だ。昔GE.HE.NA.に体じゅうをいじくり回された。お前達と出会ってやっと抜け出せた。GE.HE.NA.は嫌いだ。信用できない」
そして真昼も。と胡蝶は言おうとして口をつぐんだ。どうやらレギオンメンバーの様子を見る限り真昼がGE.HE.NA.と絡んでいるのは秘密にしているようだった。胡蝶も馬鹿ではない。何故口止めをせず、胡蝶の意思に任せているのが疑問だったが、それは胡蝶への信頼として受け取っていた。
シノアは好きだ。真昼にも恩がある。裏から手を任してくれたのはわかる。だが自分からGE.HE.NA.と手を組むのに胡蝶には理解できないし、賛同できなかった。
真昼は深呼吸して、仮面を作る。
「みんな、出動だよ。シノアちゃんには逮捕命令、結梨には捕獲命令が出たわ。二人を追いかける」
「それは何のためです?」
愛花が問いかける。
「一ノ瀬隊はどの追っ手よりも早く二人を捜し出し保護する。これは隊長としての判断……っていってもわかるよね。結梨もシノアちゃんも誰にも渡さない! 解決するまでの時間稼ぎをする!」
「それって学校からの指示とは違うよな」
「私が仲間を無意味に見捨てるような真似にするように見える? 私は常に最善を目指している。今回はこれが最善とは思えない。だから動くよ!」
「あ~……真昼様ならそう言ってくれると信じていました!」
「あっ。そういえば風間は?」
「あいつん家も今回の件に関わっとるようじゃからな。バツも悪かろう」
真昼は風間のお父さんがどちらの判断を下すか不安になった。仮定の話だが、もしグランギニョル社がGE.HE.NA.と縁を切って結梨に有利な情報を出してきた場合、引き渡しが失敗する可能性がある。
それは大きな損失だ。人類にとっての損失だ。
「皆さんお揃いですのね」
暗い顔をした風間が現れる。胡蝶が聞く。
「どこ行ってた?」
「ほんの野暮用ですわ」
真昼は風間を見た。
「空気読んでない上で聞くよ、風間ちゃん」
「はい、なんでしょう? 真昼様」
「風間ちゃんのお父さんは結梨ちゃんについてどういう立場を取ることになったの?」
「……」
風間は言い辛そうに口を紡ぐ。
「安心して。責めるつもりはないし、私は既にお父さんの口から結梨がグランギニョル社とGE.HE.NA.共同で製造した人造衛士であることを教えてもらっていた」
「いつの間に!?」
「写真を撮ってほしい、と頼まれた時に、本題はそっちだったんだよ。そこで引き渡しの手伝いを要求されたけど断った。風間ちゃんの反応からすると風間さんのお父さんの意見は変わらなかったみたいだね」
「はい。これは人類にとって必要な事だと。譲りませんでした」
良かった。
真昼は安心した。
これで風間のお父さんひいてはグランギニョル社が敵に回るなんて事態にならなくて心の底から安堵した。
「そっか、わかった。切り替えていこう。私達は今からシノアちゃんを追いかける。風間ちゃんもついてきてくれるよね?」
「はい! お任せください!」
「でも居場所はどうやって特定するんですか?」
真昼は端末を取り出した。
「本人に聞くよ」
真昼は端末を操作してシノアに連絡した。そして結梨を守ることを約束して居場所を教えてもらい、レギオンメンバーで向かった。
そこには防衛隊が取り囲んでいた。シノアと結梨に銃を向けて、緊張状態が続いている。
「通してください」
真昼は戦術機を持ったまま、前に出て防衛隊とシノア達の間に進む。
シノア達と真昼が向かい合う。
「お姉様、すみません。私、結梨が研究施設に送られると聞いて」
「怒ってないよ。それが良い人の当然の反応だもんね」
「ねぇ、真昼。私ってそんなにデストロイヤーと似てるのかな?」
真昼。は首を振った。
「似てないよ。少なくとも外見は全く」
「でも私はデストロイヤーなんだよね」
「どちらかといえば親がデストロイヤーって感じかな。今は人の意識と体を持っている。だからみんな、どうしてデストロイヤーから人が生まれたか知りたくて研究したがっている」
「私なりたくてこんな風に生まれたわけじゃないんだけどな。真昼もそんな風に思うことある?」
「もっと強ければ、って思った事は何度もあるよ。自分を受け入れる事はできても、理想の自分で生まれてきた人はいないんじゃないかな。生まれた生命はその時点で自分の能力と環境に折り合いをつけて生きていくしかないんだよ」
「私がもしデストロイヤーになったら、デストロイヤーは私を仲間として受け入れてくれるかな?」
「敵とは見做さない可能性あるよ。デストロイヤーの姫っていってね。子供の頃にヒュージ細胞を入れた衛士はデストロイヤーに攻撃されない存在になる。でもデストロイヤーは喋らないし、食べ物もないよ。楽しいのは人間側だと思うけど」
「でも私は人の居場所はないんでしょ?」
「無いなら、作れば良い。シノアちゃんと私で結梨の居場所を作るよ。不自由で、辛い研究にも参加してもらうかもしれないけど、それでも幸せと不幸が半分くらいの人生を送れるように努力する」
真昼は歩みを進めて、結梨に手を伸ばす。
「結梨が決めて。辛いことも楽しいこともある私達と来るか、デストロイヤーの仲間になるか。自分自身で選ぶんだ。自分で選んだ人生じゃ無いと納得できない。納得は全てに優先される。納得した人生ならそれは後悔があっても幸せなんだ」
それはシノアが梨璃の手を握る。
「待ってください。結梨を研究施設に渡すんですか?」
「全部じゃ無い。折衷案だよ。衛士として人類貢献する代わりに非人道的な実験や研究を止める。そう交渉する。これでも私は顔が広いからね。私の価値は世界に通用するんだよ?」
「それで結梨は、幸せですか?」
「常に幸せになる事などあり得ない。絶頂でいられる期間は短い。人生は波なんだ。シノアちゃんなら、衛士なら、それはわかってないと困るかな。今日一緒にご飯を食べた戦友が明日には死体になってる。そんな時勢、そんな時代なんだから。さぁ、結梨。選んで」
結梨は真昼を真っ直ぐ見つめた後、真昼の手を掴んだ。
「よし、結梨のこと、守ってあげるからね」
その時だった。
横浜衛士訓練校のデストロイヤー襲来を告げるサイレンが鳴り響いた。戦車やミサイル車が移動を開始する。そして海の中から波を切り裂いて巨大なデストロイヤーが姿を現した。
山が動いているようだった。
そのデストロイヤーは無数の子機を飛ばすと、光が収束して強烈なビームを発射した。海を切り裂いて、大地を焼いて百合ヶ丘に直撃する。百合ヶ丘の結界に衝突してなんとかビームが拡散する。
「あれが美鈴様の言っていた、強力なデストロイヤー。ギガント級」
それは50メートル以上ある巨大な砲身を横浜衛士訓練校に向けたまま、リチャージを始めるのだった。
理事長室に向かい、入る。
「おはようございます、理事長室代理」
「おはよう、真昼君。何か用かね?」
「単刀直入に言います。近いうちにデストロイヤーが襲来します。そのデストロイヤーは従来のデストロイヤーを凌ぐ強力な個体であるのは間違いないでしょう」
その言葉が予想外だったのか、理事長代理は面食らったような顔をした後、問いかけた。
「近いうちというのは?」
「具体的な時期はわかりません。今日かもしれないし、一週間後かもしれない」
「そのデストロイヤーが襲来するという根拠は?」
「私のラプラスとしての直感です」
「ふむ、世界唯一のラプラスとして活躍してきた君の言葉を軽んじるつもりはない。具体的には何をしてほしい?」
「防衛隊の出撃待機と百由ちゃんの高出力砲の設置、更に全てのアーセナルと衛士を動員した戦術機の緊急メンテナンスと出撃待機。外征任務の中止、他ガーデンの協力要請といったところでしょうか」
「かなり大規模だ。それをするだけの必要があるのかね?」
「わかりません。わかっているのは強力なデストロイヤーが二体やってくること、そしてその後にネストを破壊できる機会がやってくる事です」
「その具体性はどこかきたのかね?」
「時雨様です。時雨様の戦術機がデストロイヤーに突き刺さったままネストで修復されたことでネストが時雨様の影響を受けて変質。時雨様になろうとするデストロイヤーや性格を受け継いだ結果、通常の運営が出来なくなり強力なデストロイヤー排出する結果になりました。それは魔力の消耗を無視した方法である為、この二体を撃破すればネストが無防備な状態で晒されます」
「時雨様……か」
理事長代理は目を細めた。
真昼が時雨の幻覚を見ていることは上層部にとっては周知の事実だ。しかしその言動におかしな部分はない為、衛士として活動を許されてきた。それは成功して大戦果を上げ続けた。しかしここにきて、危険を知らせる警告をしてきた。
これをどう受け取るか迷っているのだろう。
「理事長代理、私は最善を常に尽くしてきました。現れるデストロイヤーは強いです。横浜衛士訓練校が陥落するかもしれません。私の言葉を信頼できないのはわかります。ですが、どうが、私の功績を鑑みてお願いできないでしょうか?」
真昼は頭を下げた。
理事長代理は息を吐くと頷いた。
「わかった。準備を進めよう。だがすぐに全てはできない。まずは外征の中止、高出力砲の設置、順次衛士の戦術機のメンテナンスからだ」
「ありがとうございます」
「ああ、少し待ちたまえ」
「なんですか?」
「結梨君については何か知っているか?」
「結梨? いえ、知りません」
「そうか、わかった」
真昼はお礼を言って部屋を出た。
「あと、するべきことは」
真昼は頭を回転させる。
組織の助力は得られた。なら他にするべき事はもっと個人的な事だ。だがただの一人で何ができる? やはり一人では駄目だ。組織の助力がなければ何もできない。
そこで真昼はGE.HE.NA.を思い出した。GE.HE.NA.用の端末にメッセージを入力する。
『緊急・横浜衛士訓練校に強力なデストロイヤーが襲来予定。サンプル確保のため防衛隊の装備に紛れ込ませ、大型長射程高出力砲やバトルクロスを要請します』
『試験開発中の新型B型兵装の実験も兼ねて輸送する。使用されよ』
『了解』
これでGE.HE.NA.からの支援ももらえる。
バトルクロスがあれば魔力と精神力は使うが強力な兵器だ。使用できるのは大きい。
その時、真昼の端末にメッセージが届けられた。
『一ノ瀬結梨および柊シノアの捕縛命令』
『一ノ瀬結梨はデストロイヤー由来の人造衛士であり、外部の研究機関に引き渡すことになった。しかし柊シノアの手引きによって逃亡して行方不明である。見つけ次第捕縛せよ』
『デストロイヤーを心通わす相手と見なすことは人類にとっての禁忌です。デストロイヤーと同じ魔力を操る衛士もまた一つ間違えば脅威と捉えらえかねません。それだけは絶対に避けねばなりません』
『現在防衛軍の部隊がこの学院に迫っています。人と衛士が争う事態は絶対に避けねばなりせん。各員落ち着いて、冷静に対処してください』
真昼はため息をついた。
(シノアちゃん、優しいのは良い事だけどそれは駄目だよ。今はデストロイヤー対策をしなきゃいけないのに、結梨の捜索にリソースを割くなんて)
足取り重くレギオンの待機室に足を向ける。
待機室には風間以外が揃っているようで、先の通達に対して活発な議論がされている様子だった。
「どうするんですかどうするんですか!? 結梨ちゃんがデストロイヤーでシノアさんと一緒に逃げて逮捕命令って!」
「どうする?」
「そんなの決まってますよ! だって結梨ちゃんがデストロイヤーのはずないじゃないですか! シノアさんは間違ってないですよ!」
「だけど学院から逃げたということはここも安全ではないと判断したということよ」
「私は強化衛士だ。昔GE.HE.NA.に体じゅうをいじくり回された。お前達と出会ってやっと抜け出せた。GE.HE.NA.は嫌いだ。信用できない」
そして真昼も。と胡蝶は言おうとして口をつぐんだ。どうやらレギオンメンバーの様子を見る限り真昼がGE.HE.NA.と絡んでいるのは秘密にしているようだった。胡蝶も馬鹿ではない。何故口止めをせず、胡蝶の意思に任せているのが疑問だったが、それは胡蝶への信頼として受け取っていた。
シノアは好きだ。真昼にも恩がある。裏から手を任してくれたのはわかる。だが自分からGE.HE.NA.と手を組むのに胡蝶には理解できないし、賛同できなかった。
真昼は深呼吸して、仮面を作る。
「みんな、出動だよ。シノアちゃんには逮捕命令、結梨には捕獲命令が出たわ。二人を追いかける」
「それは何のためです?」
愛花が問いかける。
「一ノ瀬隊はどの追っ手よりも早く二人を捜し出し保護する。これは隊長としての判断……っていってもわかるよね。結梨もシノアちゃんも誰にも渡さない! 解決するまでの時間稼ぎをする!」
「それって学校からの指示とは違うよな」
「私が仲間を無意味に見捨てるような真似にするように見える? 私は常に最善を目指している。今回はこれが最善とは思えない。だから動くよ!」
「あ~……真昼様ならそう言ってくれると信じていました!」
「あっ。そういえば風間は?」
「あいつん家も今回の件に関わっとるようじゃからな。バツも悪かろう」
真昼は風間のお父さんがどちらの判断を下すか不安になった。仮定の話だが、もしグランギニョル社がGE.HE.NA.と縁を切って結梨に有利な情報を出してきた場合、引き渡しが失敗する可能性がある。
それは大きな損失だ。人類にとっての損失だ。
「皆さんお揃いですのね」
暗い顔をした風間が現れる。胡蝶が聞く。
「どこ行ってた?」
「ほんの野暮用ですわ」
真昼は風間を見た。
「空気読んでない上で聞くよ、風間ちゃん」
「はい、なんでしょう? 真昼様」
「風間ちゃんのお父さんは結梨ちゃんについてどういう立場を取ることになったの?」
「……」
風間は言い辛そうに口を紡ぐ。
「安心して。責めるつもりはないし、私は既にお父さんの口から結梨がグランギニョル社とGE.HE.NA.共同で製造した人造衛士であることを教えてもらっていた」
「いつの間に!?」
「写真を撮ってほしい、と頼まれた時に、本題はそっちだったんだよ。そこで引き渡しの手伝いを要求されたけど断った。風間ちゃんの反応からすると風間さんのお父さんの意見は変わらなかったみたいだね」
「はい。これは人類にとって必要な事だと。譲りませんでした」
良かった。
真昼は安心した。
これで風間のお父さんひいてはグランギニョル社が敵に回るなんて事態にならなくて心の底から安堵した。
「そっか、わかった。切り替えていこう。私達は今からシノアちゃんを追いかける。風間ちゃんもついてきてくれるよね?」
「はい! お任せください!」
「でも居場所はどうやって特定するんですか?」
真昼は端末を取り出した。
「本人に聞くよ」
真昼は端末を操作してシノアに連絡した。そして結梨を守ることを約束して居場所を教えてもらい、レギオンメンバーで向かった。
そこには防衛隊が取り囲んでいた。シノアと結梨に銃を向けて、緊張状態が続いている。
「通してください」
真昼は戦術機を持ったまま、前に出て防衛隊とシノア達の間に進む。
シノア達と真昼が向かい合う。
「お姉様、すみません。私、結梨が研究施設に送られると聞いて」
「怒ってないよ。それが良い人の当然の反応だもんね」
「ねぇ、真昼。私ってそんなにデストロイヤーと似てるのかな?」
真昼。は首を振った。
「似てないよ。少なくとも外見は全く」
「でも私はデストロイヤーなんだよね」
「どちらかといえば親がデストロイヤーって感じかな。今は人の意識と体を持っている。だからみんな、どうしてデストロイヤーから人が生まれたか知りたくて研究したがっている」
「私なりたくてこんな風に生まれたわけじゃないんだけどな。真昼もそんな風に思うことある?」
「もっと強ければ、って思った事は何度もあるよ。自分を受け入れる事はできても、理想の自分で生まれてきた人はいないんじゃないかな。生まれた生命はその時点で自分の能力と環境に折り合いをつけて生きていくしかないんだよ」
「私がもしデストロイヤーになったら、デストロイヤーは私を仲間として受け入れてくれるかな?」
「敵とは見做さない可能性あるよ。デストロイヤーの姫っていってね。子供の頃にヒュージ細胞を入れた衛士はデストロイヤーに攻撃されない存在になる。でもデストロイヤーは喋らないし、食べ物もないよ。楽しいのは人間側だと思うけど」
「でも私は人の居場所はないんでしょ?」
「無いなら、作れば良い。シノアちゃんと私で結梨の居場所を作るよ。不自由で、辛い研究にも参加してもらうかもしれないけど、それでも幸せと不幸が半分くらいの人生を送れるように努力する」
真昼は歩みを進めて、結梨に手を伸ばす。
「結梨が決めて。辛いことも楽しいこともある私達と来るか、デストロイヤーの仲間になるか。自分自身で選ぶんだ。自分で選んだ人生じゃ無いと納得できない。納得は全てに優先される。納得した人生ならそれは後悔があっても幸せなんだ」
それはシノアが梨璃の手を握る。
「待ってください。結梨を研究施設に渡すんですか?」
「全部じゃ無い。折衷案だよ。衛士として人類貢献する代わりに非人道的な実験や研究を止める。そう交渉する。これでも私は顔が広いからね。私の価値は世界に通用するんだよ?」
「それで結梨は、幸せですか?」
「常に幸せになる事などあり得ない。絶頂でいられる期間は短い。人生は波なんだ。シノアちゃんなら、衛士なら、それはわかってないと困るかな。今日一緒にご飯を食べた戦友が明日には死体になってる。そんな時勢、そんな時代なんだから。さぁ、結梨。選んで」
結梨は真昼を真っ直ぐ見つめた後、真昼の手を掴んだ。
「よし、結梨のこと、守ってあげるからね」
その時だった。
横浜衛士訓練校のデストロイヤー襲来を告げるサイレンが鳴り響いた。戦車やミサイル車が移動を開始する。そして海の中から波を切り裂いて巨大なデストロイヤーが姿を現した。
山が動いているようだった。
そのデストロイヤーは無数の子機を飛ばすと、光が収束して強烈なビームを発射した。海を切り裂いて、大地を焼いて百合ヶ丘に直撃する。百合ヶ丘の結界に衝突してなんとかビームが拡散する。
「あれが美鈴様の言っていた、強力なデストロイヤー。ギガント級」
それは50メートル以上ある巨大な砲身を横浜衛士訓練校に向けたまま、リチャージを始めるのだった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件
こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。
無自覚に世界最強だった俺、追放後にチートがバレて全員ざまぁされる件
fuwamofu
ファンタジー
冒険者団から「役立たず」と追放された青年リオ。
実は彼のスキル《創造》は、世界の理を作り替える最強の能力だった。
追放後、孤独な旅に出るリオは、自身の無自覚な力で人々を救い、国を救い、やがて世界の中心に立つ。
そんな彼の元には、かつて彼を見下していた美少女たちが次々と跪いていく──。
これは、無自覚に世界を変えてしまう青年の、ざまぁと覇道の物語。
ガチャで領地改革! 没落辺境を職人召喚で立て直す若き領主
雪奈 水無月
ファンタジー
魔物大侵攻《モンスター・テンペスト》で父を失い、十五歳で領主となったロイド。
荒れ果てた辺境領を支えたのは、幼馴染のメイド・リーナと執事セバス、そして領民たちだった。
十八歳になったある日、女神アウレリアから“祝福”が降り、
ロイドの中で《スキル職人ガチャ》が覚醒する。
ガチャから現れるのは、防衛・経済・流通・娯楽など、
領地再建に不可欠な各分野のエキスパートたち。
魔物被害、経済不安、流通の断絶──
没落寸前の領地に、ようやく希望の光が差し込む。
新たな仲間と共に、若き領主ロイドの“辺境再生”が始まる。
最弱スキル《リサイクル》で世界を覆す ~クラス追放された俺は仲間と共に成り上がる~
KABU.
ファンタジー
平凡な高校生・篠原蓮は、クラスメイトと共に突如異世界へ召喚される。
女神から与えられた使命は「魔王討伐」。
しかし、蓮に与えられたスキルは――《リサイクル》。
戦闘にも回復にも使えない「ゴミスキル」と嘲笑され、勇者候補であるクラスメイトから追放されてしまう。
だが《リサイクル》には、誰も知らない世界の理を覆す秘密が隠されていた……。
獣人、エルフ、精霊など異種族の仲間を集め、蓮は虐げられた者たちと共に逆襲を開始する。
『【朗報】ボッチの僕、実は世界一の財閥の御曹司だった。〜18年の庶民修行を終えた瞬間、美少女11人が「専属秘書」として溺愛してくる件〜』
まさき
青春
「あんたみたいなボッチ、一生底辺のまま卒業ね」
学園の女王、高飛車な生徒会長、そして冷徹な美少女たち……。
天涯孤独でボッチな僕、佐藤(※苗字のみ使用)は、彼女たちからゴミを見るような目で見られ、虐げられる日々を送っていた。
だが、彼らには決して言えない秘密があった。
それは、僕が世界一の資産を誇る**『世界最強財閥』の唯一の跡継ぎであること。
そして、18歳になるまで一切の援助を受けずに生き抜く【庶民修行】**の最中であること。
そして運命の誕生日、午前0時。
修行終了を告げる通知がスマホに届いた瞬間、僕の世界は一変する。
「おめでとうございます、お坊ちゃま。これより『11人の専属秘書候補』による、真の主従関係を開始いたします」
昨日まで僕を蔑んでいた学園の美少女たちが、手のひらを返して膝をつく。
彼女たちの正体は、財閥が僕のために選りすぐった、愛が重すぎるエリート秘書たちだった――。
「ずっとおそばでお仕えしたかったんです……」
「昨日までの暴言は、修行を完遂させるための演技。今日からは全身全霊で甘やかさせていただきますね?」
24時間体制の過保護な奉仕、競い合うような求愛、そして財力による圧倒的なざまぁ。
ボッチだった僕の日常は、11人の美女たちに全肯定され、溺愛し尽くされる甘すぎる生活へと塗り替えられていく。
痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~
ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。
食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。
最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。
それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。
※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。
カクヨムで先行投稿中!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる