女の子がデカい武器振り回すのは好きですか?

John Smith/ジョン スミス

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 百由から連絡きた事で、愛花と葉風と真昼は工房科校舎の35番房。つまり真島百由を訪ねに行っていた。
 ドアを叩くとはいはーい、という声と共に開かれる。そこには真昼にとって見知った顔がいた。
 金髪にぴょこっと顔を出すアホ毛。天音天葉だ。

「あれ? 天葉ちゃん? どうしてここに?」
「真昼こそ。私は、なんていうか気分転換かな」
「ふぅん」

 天葉の後ろに上条依奈を見つけて真昼は察する。衣奈はスランプに陥ってるといっていた。その脱却の方法として幾つかのデータを渡したがうまく機能しなくて、戦術機をカスタマイズする事でスランプからの脱却を目指す事にしたのだろう。

「こっちは愛花ちゃんと葉風ちゃん」

 真昼は自分の後ろにいる二人を天葉に紹介する。

「間宮愛花と申します。よろしくお願いします、天葉様」
「滝川葉風です」
「二代目アールヴヘイムの天音天葉だよ。よろしくね二人とも。依奈も挨拶しないと」
「私はいいわよ」
「もー」
「取り敢えず中入って良いかな?」
「あ、ごめんこめん」

 真昼達は工房の中に入る。
 衣奈は腕を組んで、ジロリと真昼を見る。依奈はアールヴヘイム解散前後に傷を受けて歯車が狂った真昼のことを仲間だと思っていた。スランプとは違うが、やはり初代アールヴヘイムでなければ駄目なんだと思う同士だと。
 しかし最近の真昼の活躍はめざましい。ギガント級二体の討伐にネストの占領では最前線にいたという。

 衣奈はスランプで落ち込んでいる自分と真昼を比べて惨めな気持ちになる。

「あたし、何やってるんだろ、こんなところで」
「依奈……」
「今頃、みんなは横須賀で戦ってる。なのにどうして私はここにいるの?」

 自嘲気味に笑う依奈。
 彼女の言葉通り、二代目アールヴヘイムのメンバーの殆どは今任務で横須賀で戦っていた。だが話し合いの結果、依奈は今回の任務から外される事になったのだ。
 そんな衣奈を見て梨璃は切り出した。

「天葉ちゃんは渡したデータのシュミレーターはやった?」
「うん、迎撃戦だけ。耐久防衛戦は時間がなくてできなかったけど」
「じゃあアドバイスは?」
「伝えたよ」

 それに反応したのは依奈だった。

「あのアドバイスとシュミレーター。貴方が言ったことなの。真昼。天葉らしくないとは思ったけど」
「そうだよ。天葉ちゃんから相談を受けてね。役に立たなかったみたいだけど」
「うーん、役に立つ役に立たない以前の問題だったかなぁ」

 真昼は問い返す。

「どういうこと?」
「まず二代目アールヴヘイムの特性に合わせた指示をするんだけど、独断専行や命令無視が多くて、指揮系統が成り立たなかったんだよね。お台場迎撃戦となると自分の力を試したくなる子が多くて」
「それは……依奈ちゃんのスランプというよりチームの問題では? やっぱり今必要なのは一体感だよ。防衛戦やった方が良い。確実に」
「待って、防衛戦ってあの一週間拠点防衛戦のこと?」
「うん、初代アールヴヘイムでもたまにやってたでしょ」
「嘘でしょ。あの時でさえぎりぎりだったのに今の状態でクリアは不可能よ」
「だからだよ。この不可能を可能にするには依奈ちゃんの指示が必要だって後輩達に教えるの。防衛戦なら依奈ちゃんもどんな指示なら有効なのか試せるでしょ?」
「そうね、時間を見つけてやりましょう」

 少し自信をつけたように燃える依奈に、天葉は嬉しく思う。目配せで真昼に感謝を伝える。真昼はそれを受けて笑った。
 そして愛花が手をあげて言った。

「すみません。皆さま。今日は百由様にわたくしの友人、葉風さんからお願いがあって参りました」
「え? お願い? なになに? っても私が力になれるのは戦術機絡みなんだろうけどさ」
「では本人からお話しします」

 葉風は萎縮していた。二代目アールヴヘイムといえば有名どころのレギオンだ。横浜衛士訓練校でもトップクラス……いやトップのレギオンだ。そんな人達の前でカスタム戦術機が欲しいなんて烏滸がましいと思われると思ってしまっていた。

「あの、私、長距離射撃が得意で。他の優秀な皆様には敵わないですが、だから、その、百由様に戦術機を作って頂けないかと」
「戦術機を? それって一点物のユニーク戦術機って事?」
「は、はい。あの。そういうのが欲しいな、と」

 百由からのシンプルな確認に、天葉達の視線を気にして言葉を濁してしまう葉風。

「葉風さん、遠慮することありませんわ。その為に伺ったのですから」

 愛花の援護射撃でますます視線を気にしてしまう。しかし、当の本人達はあっさりとしたものだった。

「専用戦術機か。いやぁ、やっぱリリィとなったからには欲しいよね。格好良いよね専用戦術機。うん。うん」
「だったら遠慮しないでハキハキ話した方が良いわよ。でないと百由もどんな物を作れば良いか分からないでしょ」
「え、あ、はい」

 両者の顔からは葉風が生意気だなどと思いる様子はない。出てきたのはむしろ応援するコメントだった。

「百由ちゃん、これ葉風ちゃんのデータ。私のレギオンに入る時の自分から言い出した試験なんだけど、これ凄いよ」
「へぇー、なら見させてもらおうかな」

 真昼がデータを送り、百由が再生する。
 それはレギオン試験の葉風と愛花が映る。そして悪天候、長距離、動く小さな攻撃目標を狙い撃つ葉風の姿が写っている。

「うへぇ、五キロ先の目標をこの条件で全部当てるの? 凄いじゃない!」
「確かに。しかも自分からこの条件を言い出すなんて相当自信がないとできる事じゃないよ。葉風さんって結構自信家?」
「いえ、違うんです! どうしても一ノ瀬隊に入りたくて!」

 その反対に近距離での目標命中率は低いデータがある。

「なるほどね。じゃあ葉風さんはこの長距離狙撃を強化する戦術機と近距離に対応できる戦術機どっちが良いの?」
「長距離の方がみんなの役に立てるかな、と」
「オーケーオーケー、連射より一撃の火力か。んー、すぐには作れないから、何度か試し撃ちに付き合ってもらうかもしれないけど、最後まで手伝ってね」
「はい! わかりました!」

 ユニーク戦術機開発計画がスタートして楽しそうにしているのを見て、天野は言う。

「うーん、青春って感じだね」
「そうね。楽しそうだわ」
「新しい戦術機を作る時って、なんかドキドキするもんね」
「ま、そうかもね」

 出来るだけ明るく話題を振る天葉だが、依奈の反応には体温がない。

(まいったね、これは)

 依奈がスランプに陥ってるのは事実である。それは本人のみならず天葉を始めとしたレギオンメンバー全員がわかっている。加えて依奈は新参の隊員だ。衛士としてのキャリアは天葉と変わらないが、依奈はアールヴヘイム解散のショックで活動していない時期があった。
 その態度は学園からも問題視され、退学になりそうなところを天葉が自分のレギオンに引き込んだのだ。

 元アールヴヘイムの司令塔だけあって、仲間達もすんなり依奈の加入を受け入れてくれた。しかしその動きは精彩に欠けるものであった。
 今のところは依奈は二代目アールヴヘイムでも司令塔の役目を与えられているが、それは初代での功績に期待しての事だ。
 一部の隊員はそのポジションに疑問を持ち始めている。

 依奈の登場によって司令塔の座から下ろされた者などは依奈を公に批判して憚らない。

(なんとか、調子を取り戻さないと)

 そうしなければ全体の士気に関わる。
 このままではいづれ依奈は二代目アールヴヘイムのスターティングメンバーから外され、プライドの高い依奈は自暴自棄になり、更に調子を崩す事になるだろう。
 そんな時だった。
 愛花が向かって、単刀直入に言った。

「依奈様、何か悩みを抱えていませんか? お話だけでも聞かせてくださいませ」
「……アンタなら、私の悩みを解決できるって? それはお偉い事で」
「こ、こら! 依奈! ごめんね愛花ちゃん」

 天葉は強引に穴の頭を下げさせる。

「私がお力になれるかわかりません。でも誰かに助けを求めない限り解決さないこともあります」
「どうして初対面の貴方に話す必要があるの?」
「悩み、苦しんでいる方が目の前にいらっしゃるのに何もしないでいることは後悔する学びましたので」
「なにそれ、貴方の気持ちだけの問題じゃない」
「確かにそうです。二代目アールヴヘイムの話を先程真昼様のお話から少し耳にしました。隊がご不調なんですね、依奈様自身も」

 事実を端的に突かれて衣奈は頭に血が昇る。

「ええ! 不調よ! 私が司令塔になってからというものね! だからなに!? 初対面のアンタまで私のことを非難しようっていうの!? 人の心に土足で踏み込んでくるような真似をして!」

 善意で言ってくれているのはわかる。
 だが、そういう簡単な問題ではないのだ。

「大きなお世話だって言っているのよ!!」

 それに天葉は頭を抱える。

(これは重症だなぁ)

 それに真昼は天葉に近寄って笑う。

「愛花ちゃんの強いところがでるよ」
「え?」

 衣奈の言葉に神琳は目を伏せる。

「大きなお世話ですか」
「そうよ、悪いけどこれ以上口出ししないでよ。気持ちだけもらっておくわ、ありがとう」
「かつて、とある事情で悩みを抱えていた方がいました。わたくしは彼女の力になりたかったのですが、ご本人に拒否されたので手を引いてしまいました。その結果、柊シノアさんとの出会いを待たなければならなかった」
「それで? なに? 何の話?」
「だから私は決めたのです。たとえご本人から拒否されようともわたくしは依奈様の問題解決に尽力させていただく所存です!!」
「はぁあ!?!?」

 愛花の親切の押し売りに依奈が悲鳴をあげる。
 みんなが驚く中、真昼は笑った愛花ちゃんならこうするよね、と思うんのだった。
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