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第32話 プレゼント爆死!? でも最後の一撃で姫花スマイル、いただきました
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そう、俺のプレゼントは爆死したのだ。
まるで地雷を踏み抜くかのような衝撃――
数分前、「これで姫花は確実に笑顔になるだろう」なんてほくそ笑んでいた過去の自分を、俺は全力でぶん殴りたい。いや、爆死させたい。
「……っは。いや違う、まだ終わってない。まだ“希望”は残ってる」
意識を目の前に引き戻す。
目前には目を丸くした妹と、テーブルに置かれたプレゼントの箱。1つはもう……戦死済みだ。プリントTシャツ(失敗作)。
だが、残る2つ。希望が詰まった残弾だ。
(落ち着け……落ち着け俺。ここから挽回できる。絶対に)
俺は深呼吸しながら、まるで国家予算の振り分けを決定するかのような真剣な面持ちで思考を回す。
いや、違う。姫花の笑顔を取り戻すこと――それ以上に重大な任務なんて、この世にあるわけがない。
(この2つのうち一つもTシャツだ……写真が違うだけで、失敗作の兄弟機。よし、これは“なかったこと”にして)
となると残りは――安城に相談して選んでもらったあのプレゼント。
(……信じるしかねえ、安城センス……!)
震える手で、俺はその箱を取り出した。
すべては、妹の笑顔のために――!
「お兄ちゃん、こっちも開けていい?」
姫花の声は軽いものだったが、その瞳の奥にはうっすらと期待していない気配と、兄に対する遠慮と心配が見え隠れしていた。
それを見た瞬間、俺の心に走るのは――罪悪感と焦り。
「こ、こっちが本命なんだ! 姫花、絶対喜んでくれるはずだ!」
もう後には引けない。これは……最後の切り札だ。
(落ち着け、俺……まだ勝負は終わってない。笑顔を諦めるには、まだ早い)
姫花が、丁寧に――それはもう、やけに“丁寧”に包装を剥がしていく。
その様子はまるで、“中身にはもう期待してないけど一応開ける”といった、
ゲームのスキップできない長台詞を虚無で流すプレイヤーのような――いや、逆にレアアイテムが手に入るフラグかもしれない。
……運命の瞬間。
「――えっ、これって!」
姫花の目が見開かれ、瞳にきらめきが宿る。
「リルスチュアートの新作コスメ!?」
その瞬間、姫花の顔に“幸せの花”がパアッと咲いた。
ああ、この表情だ。この笑顔のために、俺はここまで来たんだ。
「これ、もう諦めてたのに……並んでも買えなくて……てか、なんで、にぃに私が欲しいって知ってたの? 誰にも話してないのに……」
……“お兄ちゃん”から“にぃに”に呼び方が戻ったあたり、答えは出ている。
「へっ、何年お兄ちゃんやってると思ってんだ。妹の欲しいもんぐらい、わかるに決まってんだろ」
(……本当は安城に相談したんだけどな。てか、お前誰にも話してないって言ってたけど、安城知ってたぞ?)
「にぃに、ほんっっと大好き!!」
その一言が、俺の脳内にファンファーレを鳴り響かせた。
――任務完遂。
妹を笑顔にするという極秘ミッション、ここに成功。
俺は、この重大な任務を完遂した。
それは、ただの誕生日プレゼントじゃない。妹・姫花に“笑顔”を届けるという、最重要ミッションだ。
「お兄ちゃん、毎年、毎年……本当にありがとうね」
ふと、姫花がそう呟いた。
その笑顔は、言葉で言い表せないほど眩しくて、柔らかくて、
俺の語彙力じゃ到底届かないところにある美しさだった。
思わず、情けなくなる。
どれだけの言葉を並べても、この笑顔の価値には敵わない。
──俺と姫花は、ずっと2人だった。
母は早くに他界し、父は格闘技のプロとして海外を転戦している。
誰よりも強いはずの父は、誰よりも遠い存在だった。
だから、俺が守らなきゃいけなかった。
この笑顔だけは、絶対に、曇らせちゃいけないって。
……と、ここまでは完璧だった。
あの箱を見つけられるまでは。
「ところでお兄ちゃん……もう一つのプレゼントは?」
(やべええええええええええええええ)
記憶の奥底に封印していたもう一つの箱。
あの、爆死確定の“黒歴史爆弾”が……ついに発見された。
「こ、これはだな……うん、忘れてくれ。頼む、記憶から削除してくれ」
俺は必死だった。
人間、最後の記憶がその日の印象を決める。
今この“コスメ笑顔MAX状態”のまま、誕生日会を終了させるべきだ。
だが、妹は逃してくれない。
「なんでよ! にぃに! 見せなさいよ~!」
「駄目だって! 順番ミスったんだって! これはコスメに勝てるほどのポテンシャルないんだよ!」
必死の抵抗も虚しく、姫花は包装紙をビリビリと破いた。
現れたのは──
俺と姫花が小さかった頃のツーショットがプリントされた、Tシャツ。
俺は泥まみれで、姫花はそれを指差して笑ってる。そんな1枚だ。
(やっべぇ……これ絶対アウトだろ……)
“は?”
“さすがにドン引きなんだけど”
“そういうのってもういらないから”
そんなセリフが飛んでくるのを覚悟して、目を閉じたその時──
「ふふっ……なんでこんな写真選ぶのよ、にぃにってば」
そう言いながらも、姫花はTシャツをぎゅっと抱きしめていた。
目尻にはうっすら涙が浮かんでいる。
「……にぃにのバカ。でも、すっごく嬉しいよ」
その声は、さっきの明るい喜びとは、まったく別のトーンだった。
胸の奥にじんわりと染み込んでくるような……深くて、温かい音色だった。
(……え? プリントTシャツ、アリだったの?女の子ってやっぱりわからん…)
「にぃに、これからも、私を守ってね?」
――ああ。
俺はまた一つ、約束をもらった。
そのとき見せた姫花の笑顔は、
ぽっと頬を染めたみたいな笑顔に、思わずこっちまで照れてしまいそうになる。
それは、桜色のリボンで包まれた“ありがとう”みたいな、そんな笑顔だった。
まるで地雷を踏み抜くかのような衝撃――
数分前、「これで姫花は確実に笑顔になるだろう」なんてほくそ笑んでいた過去の自分を、俺は全力でぶん殴りたい。いや、爆死させたい。
「……っは。いや違う、まだ終わってない。まだ“希望”は残ってる」
意識を目の前に引き戻す。
目前には目を丸くした妹と、テーブルに置かれたプレゼントの箱。1つはもう……戦死済みだ。プリントTシャツ(失敗作)。
だが、残る2つ。希望が詰まった残弾だ。
(落ち着け……落ち着け俺。ここから挽回できる。絶対に)
俺は深呼吸しながら、まるで国家予算の振り分けを決定するかのような真剣な面持ちで思考を回す。
いや、違う。姫花の笑顔を取り戻すこと――それ以上に重大な任務なんて、この世にあるわけがない。
(この2つのうち一つもTシャツだ……写真が違うだけで、失敗作の兄弟機。よし、これは“なかったこと”にして)
となると残りは――安城に相談して選んでもらったあのプレゼント。
(……信じるしかねえ、安城センス……!)
震える手で、俺はその箱を取り出した。
すべては、妹の笑顔のために――!
「お兄ちゃん、こっちも開けていい?」
姫花の声は軽いものだったが、その瞳の奥にはうっすらと期待していない気配と、兄に対する遠慮と心配が見え隠れしていた。
それを見た瞬間、俺の心に走るのは――罪悪感と焦り。
「こ、こっちが本命なんだ! 姫花、絶対喜んでくれるはずだ!」
もう後には引けない。これは……最後の切り札だ。
(落ち着け、俺……まだ勝負は終わってない。笑顔を諦めるには、まだ早い)
姫花が、丁寧に――それはもう、やけに“丁寧”に包装を剥がしていく。
その様子はまるで、“中身にはもう期待してないけど一応開ける”といった、
ゲームのスキップできない長台詞を虚無で流すプレイヤーのような――いや、逆にレアアイテムが手に入るフラグかもしれない。
……運命の瞬間。
「――えっ、これって!」
姫花の目が見開かれ、瞳にきらめきが宿る。
「リルスチュアートの新作コスメ!?」
その瞬間、姫花の顔に“幸せの花”がパアッと咲いた。
ああ、この表情だ。この笑顔のために、俺はここまで来たんだ。
「これ、もう諦めてたのに……並んでも買えなくて……てか、なんで、にぃに私が欲しいって知ってたの? 誰にも話してないのに……」
……“お兄ちゃん”から“にぃに”に呼び方が戻ったあたり、答えは出ている。
「へっ、何年お兄ちゃんやってると思ってんだ。妹の欲しいもんぐらい、わかるに決まってんだろ」
(……本当は安城に相談したんだけどな。てか、お前誰にも話してないって言ってたけど、安城知ってたぞ?)
「にぃに、ほんっっと大好き!!」
その一言が、俺の脳内にファンファーレを鳴り響かせた。
――任務完遂。
妹を笑顔にするという極秘ミッション、ここに成功。
俺は、この重大な任務を完遂した。
それは、ただの誕生日プレゼントじゃない。妹・姫花に“笑顔”を届けるという、最重要ミッションだ。
「お兄ちゃん、毎年、毎年……本当にありがとうね」
ふと、姫花がそう呟いた。
その笑顔は、言葉で言い表せないほど眩しくて、柔らかくて、
俺の語彙力じゃ到底届かないところにある美しさだった。
思わず、情けなくなる。
どれだけの言葉を並べても、この笑顔の価値には敵わない。
──俺と姫花は、ずっと2人だった。
母は早くに他界し、父は格闘技のプロとして海外を転戦している。
誰よりも強いはずの父は、誰よりも遠い存在だった。
だから、俺が守らなきゃいけなかった。
この笑顔だけは、絶対に、曇らせちゃいけないって。
……と、ここまでは完璧だった。
あの箱を見つけられるまでは。
「ところでお兄ちゃん……もう一つのプレゼントは?」
(やべええええええええええええええ)
記憶の奥底に封印していたもう一つの箱。
あの、爆死確定の“黒歴史爆弾”が……ついに発見された。
「こ、これはだな……うん、忘れてくれ。頼む、記憶から削除してくれ」
俺は必死だった。
人間、最後の記憶がその日の印象を決める。
今この“コスメ笑顔MAX状態”のまま、誕生日会を終了させるべきだ。
だが、妹は逃してくれない。
「なんでよ! にぃに! 見せなさいよ~!」
「駄目だって! 順番ミスったんだって! これはコスメに勝てるほどのポテンシャルないんだよ!」
必死の抵抗も虚しく、姫花は包装紙をビリビリと破いた。
現れたのは──
俺と姫花が小さかった頃のツーショットがプリントされた、Tシャツ。
俺は泥まみれで、姫花はそれを指差して笑ってる。そんな1枚だ。
(やっべぇ……これ絶対アウトだろ……)
“は?”
“さすがにドン引きなんだけど”
“そういうのってもういらないから”
そんなセリフが飛んでくるのを覚悟して、目を閉じたその時──
「ふふっ……なんでこんな写真選ぶのよ、にぃにってば」
そう言いながらも、姫花はTシャツをぎゅっと抱きしめていた。
目尻にはうっすら涙が浮かんでいる。
「……にぃにのバカ。でも、すっごく嬉しいよ」
その声は、さっきの明るい喜びとは、まったく別のトーンだった。
胸の奥にじんわりと染み込んでくるような……深くて、温かい音色だった。
(……え? プリントTシャツ、アリだったの?女の子ってやっぱりわからん…)
「にぃに、これからも、私を守ってね?」
――ああ。
俺はまた一つ、約束をもらった。
そのとき見せた姫花の笑顔は、
ぽっと頬を染めたみたいな笑顔に、思わずこっちまで照れてしまいそうになる。
それは、桜色のリボンで包まれた“ありがとう”みたいな、そんな笑顔だった。
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