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第36話 推しが目の保養すぎてもはや視力上がりそうな件について
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教室に戻った俺は、さっきの聖の安定の可愛さに、まだ余韻に浸っていた。
(あっかんべ~!か…なるほど、可愛いな)
いや、余韻に溺れそうになっていた――
自分の席の前に立った瞬間、
右隣に座る、“俺の推し”が視界に飛び込んできた。
――安城恵梨香。
凛とした姿勢。整った横顔。
まるで彫刻のように静かで、完璧で、近寄りがたいのに、つい見惚れてしまう。もはや芸術の域に達していると言っても過言ではない
……これは、あかん、視線を逸らせない。
席に座るだけなのに、俺は数秒の間を必要としてしまった。
(うん。異常なし。今日も俺の推しは完璧だ。
目の保養どころか、視力回復しそうだぜ。)
(あっいっけね、推しに見惚れて座るのが遅れたわ。あまりまじまじと見すぎると引かれちまうからな……)
(安城、気づいてないみたいだし良かった)
心の中で軽くごまかしながら、俺はようやく座席に腰を下ろす。
もちろん――その“心の声”は、しっかりと彼女に届いていた。
(……異常なのはあなたの頭ね。
何よ、「目の保養すぎて視力上がる」って。)
(……そうだ。安城に――姫花の誕生日プレゼントの件、お礼を言わなきゃ)
頭ではわかってる。わかってるんだけど――
いざ言おうとすると、なんだろうな、ちょっとだけ、変に緊張する自分がいる。
……いやいや、そらそうだろ。
だって相手は、**俺の“推し”**だぞ?
平然と話しかけられるようになったら、それはもう“推し”じゃない。
推しは尊い。だからこそ、会話すら緊張するのだ。
(……やめよう、考えるの。キリがない。照れてないで、素直に伝えろ俺)
気合いを入れて、俺は安城に声をかけた。
「……安城、姫花の誕生日プレゼントの件、サンキュな。
あいつ、すげぇ喜んでたぜ。ほんとに……ありがとな」
安城は相変わらず、本を読みながら顔を上げることなく答える。
「……そう。喜んだみたいで、ほんとうに良かったわ」
抑揚のない、静かな声。
でも――その横顔の口元が、ほんのわずかに、やわらかく緩んだように見えた。
気のせいかもしれない。でも。
(……いや、気のせいじゃない。たぶん)
その一瞬だけ、俺の鼓動が跳ねた。
「ところでさ……どうして姫花があれ欲しがってたってわかったんだ?
あいつ、自分でも“誰にも言ってない”って言ってたんだけど」
俺がそう問いかけると、安城はページをめくる指を止めることなく、さらりと答えた。
「……バカね。女の“勘”よ」
(いやいや、勘鋭すぎるだろ。下手したらその鋭さで怪我するレベルだわ……)
会話はそこまでだった。
……短い。短すぎる。
楽しい時間ってのは、ほんとにあっという間だ。
(……もうちょい、推しと話してたかったぜ)
もちろんその心の声は、今日も例外なく、彼女に届いていた。
(……知らないわよ。そういうのは)
と、彼女は本の活字に視線を戻しながら、ほんの一瞬だけまばたきを深くした。
――が。
次の瞬間、俺の脳裏にふと浮かんでしまった。
(そういえば……最近、自分の身の丈に合わないぐらい綺麗な女の子と話す機会が増えたな)
(……あの“綺麗なお姉さん”もだし)
そのワードが、運悪く――いや、もはや確信犯のように、彼女に届いてしまった。
パタン、と乾いた音を立てて、安城が本を閉じた。
そして、静かにこちらへと顔を向ける。
その瞳は、まるで――
彼氏のスマホから浮気の証拠が見つかったときの、冷たい軽蔑の視線に感じられた。
(……いや、ちょっと待ってくれ。勘鋭すぎるだろ……!)
と心の中で土下座していると、チャイムが鳴り響いた。
その音は、まるで俺のメンタルが轟沈したことを高らかに知らせる終了のゴングのようだった。
(あっかんべ~!か…なるほど、可愛いな)
いや、余韻に溺れそうになっていた――
自分の席の前に立った瞬間、
右隣に座る、“俺の推し”が視界に飛び込んできた。
――安城恵梨香。
凛とした姿勢。整った横顔。
まるで彫刻のように静かで、完璧で、近寄りがたいのに、つい見惚れてしまう。もはや芸術の域に達していると言っても過言ではない
……これは、あかん、視線を逸らせない。
席に座るだけなのに、俺は数秒の間を必要としてしまった。
(うん。異常なし。今日も俺の推しは完璧だ。
目の保養どころか、視力回復しそうだぜ。)
(あっいっけね、推しに見惚れて座るのが遅れたわ。あまりまじまじと見すぎると引かれちまうからな……)
(安城、気づいてないみたいだし良かった)
心の中で軽くごまかしながら、俺はようやく座席に腰を下ろす。
もちろん――その“心の声”は、しっかりと彼女に届いていた。
(……異常なのはあなたの頭ね。
何よ、「目の保養すぎて視力上がる」って。)
(……そうだ。安城に――姫花の誕生日プレゼントの件、お礼を言わなきゃ)
頭ではわかってる。わかってるんだけど――
いざ言おうとすると、なんだろうな、ちょっとだけ、変に緊張する自分がいる。
……いやいや、そらそうだろ。
だって相手は、**俺の“推し”**だぞ?
平然と話しかけられるようになったら、それはもう“推し”じゃない。
推しは尊い。だからこそ、会話すら緊張するのだ。
(……やめよう、考えるの。キリがない。照れてないで、素直に伝えろ俺)
気合いを入れて、俺は安城に声をかけた。
「……安城、姫花の誕生日プレゼントの件、サンキュな。
あいつ、すげぇ喜んでたぜ。ほんとに……ありがとな」
安城は相変わらず、本を読みながら顔を上げることなく答える。
「……そう。喜んだみたいで、ほんとうに良かったわ」
抑揚のない、静かな声。
でも――その横顔の口元が、ほんのわずかに、やわらかく緩んだように見えた。
気のせいかもしれない。でも。
(……いや、気のせいじゃない。たぶん)
その一瞬だけ、俺の鼓動が跳ねた。
「ところでさ……どうして姫花があれ欲しがってたってわかったんだ?
あいつ、自分でも“誰にも言ってない”って言ってたんだけど」
俺がそう問いかけると、安城はページをめくる指を止めることなく、さらりと答えた。
「……バカね。女の“勘”よ」
(いやいや、勘鋭すぎるだろ。下手したらその鋭さで怪我するレベルだわ……)
会話はそこまでだった。
……短い。短すぎる。
楽しい時間ってのは、ほんとにあっという間だ。
(……もうちょい、推しと話してたかったぜ)
もちろんその心の声は、今日も例外なく、彼女に届いていた。
(……知らないわよ。そういうのは)
と、彼女は本の活字に視線を戻しながら、ほんの一瞬だけまばたきを深くした。
――が。
次の瞬間、俺の脳裏にふと浮かんでしまった。
(そういえば……最近、自分の身の丈に合わないぐらい綺麗な女の子と話す機会が増えたな)
(……あの“綺麗なお姉さん”もだし)
そのワードが、運悪く――いや、もはや確信犯のように、彼女に届いてしまった。
パタン、と乾いた音を立てて、安城が本を閉じた。
そして、静かにこちらへと顔を向ける。
その瞳は、まるで――
彼氏のスマホから浮気の証拠が見つかったときの、冷たい軽蔑の視線に感じられた。
(……いや、ちょっと待ってくれ。勘鋭すぎるだろ……!)
と心の中で土下座していると、チャイムが鳴り響いた。
その音は、まるで俺のメンタルが轟沈したことを高らかに知らせる終了のゴングのようだった。
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