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第42話 ステージの真ん中で、あなたに届くように
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神田くんの手の温もりが、閉ざしていた私の過去をそっと呼び起こす――。
「わたしもいつか――ああなりたいっちゃん」
家族と一緒に訪れた、はじめてのライブ。
暗い客席から見上げたステージは、まるで別世界のようにきらきらと輝いていた。
心の奥に、ふわりと芽生えた小さな“憧れ”。
それが、私のすべてのはじまり――。
薄暗い客席から見上げたステージ。
きらきらと輝くスポットライトの中で、
アイドルは歌い、踊り、笑っていた。
そして観客は、まるでそれに応えるように――
ペンライトを振り、涙し、声を届けていた。
まるで、ステージをつくっているのが、
アイドルひとりじゃなくて――
**“観客とアイドル、ふたりでひとつ”**のように感じた。
(ステージって、こんなに眩しかとね…… )
(うちも、いつか――あのステージに立ちたかっちゃん!!)
私の胸に芽生えた小さな憧れ。
それはやがて、夢へと育っていった。
私の実家は博多で、古くから続く小さな旅館。
いつか継ぐことになるって、誰もが当たり前のように思っていた。
でも――私は、諦めなかった。
高校卒業後、教育大学に進学しながら、
こっそりアイドル養成所に通い始めた。
授業の合間にボイトレ、夜はダンスレッスン、朝は早朝実習。
体は正直、ボロボロだった。
でも、それでも――“夢のステージ”を諦めたくなかった。
そして私は、
持ち前の歌声と、少しだけ自信のある容姿で――
ほんの少しだけ、人より早くデビューすることができた。
だけど、デビューはゴールなんかじゃなかった。
本当の苦しみは、そこからだった。
学校では教員免許のための勉強、現場実習、教育心理学の試験。
アイドルの現場では、昼夜逆転、ファン対応、SNS運用、レッスン三昧。
気づけば、週に一度しか家に帰れない生活になっていた。
(……うち、なんでこんなに無理しよるっちゃろ……ほんとに、これでよかと? もう、諦めたほうがよかっちゃないと?)
自分の進むべき道が、本当は間違ってるんじゃないか――
そんな疑心暗鬼が、毎日のように心を締めつけていた。
そんな日々のなかで――
私を救ってくれたのは、たったひとりのファンだった。
彼は、いつも一番前の席にいた。
「エル!オー!ブイ!イー!華恋ちゃん!今日も可愛い華恋ちゃん!ファイトー!」
まるでアイドルのライブ会場みたいに、全力で声を張り上げる。
周りの視線? そんなもの、彼には関係ない。
(……ばかやね。そやけど――その笑顔に、うちはどんだけ救われてきたっちゃろう)
他の誰でもない、私だけを見てくれた。
ペンライトの色も、いつだって私の担当カラー。
コールのタイミングも、応援メッセージも、
全部、全部、私のことだけを“知ろうとしてくれてた”。
「今日もステージ最高だったよ」
「君は必ず夢を叶えられよ!」
「無理しないでね、応援してるよ」
「安心して!僕だけは君の味方だよ!」
SNSにくれる、何気ないその一言が、
どれだけ私の心を救ってくれたか――
気づけば、
私は彼に、特別な感情を抱くようになっていた。
ファンとアイドル――その関係は、越えてはいけないものだった。
でも、
それでも、私は彼を思っていた。
(いつか……この気持ちを伝えられたらって――
ほんのちょっとだけ、夢見てもいいやろ?)
それでも――私は、自分の夢に向かって走った。
そんなある日、私は――
ついに“夢のステージ”を手に入れた。
有名アイドルグループHoney Elaris(ハニー・エラリス)への加入が決まったのだ。
国民的アイドル、テレビでも雑誌でも見ない日はない。
そのグループに、私が入る――信じられない話だった。
最初にそれを聞いたとき、
胸の奥が熱くなって、手が震えた。
(……やっと、努力が報われたんだ)
その日の夜、私はSNSで報告をした。
ずっと応援してくれた人たちへ、感謝と決意を込めて。
フォロワーは一気に伸び、コメント欄には「おめでとう」の文字があふれた。
「すごい!ついに華恋ちゃんが!」
「絶対Honey Elaris(ハニー・エラリス)でセンターになれるよ!」
本当に、心の底から嬉しかった。
これまでの辛い日々が、いっきに薔薇色へと塗り替えられていくようで――
私はスマホを握ったまま、泣いた。
でも――
彼からのメッセージからは何もなかった
私のことをいつも一番に応援してくれた、あの人。
いつもライブ後にメッセージをくれていた彼。
(……どげんしたっちゃろ? 忙しかとかな……?)
ほんの少しの違和感。
でも、あの時の私はそれすら“気のせい”と信じたかった。
そうして、私の――
Honey Elaris(ハニー・エラリス)としての活動が始まった。
それは、地獄の始まりだった。
舞台裏、スタジオ、楽屋。
笑顔とメイクの下で、空気は妙に冷たかった。
私以外のメンバーは、
もうずっと前から一緒に夢を追いかけてきた仲間たち。
そこに、
“途中から来たよく知らない子”――
つまり、私が入る。
当然だ。
私が逆の立場だったら、きっと同じように戸惑った。
だけど、それだけじゃなかった。
「なんか、急に加入してきた子が人気って、ねぇ?」
「ほら、“声が可愛い”とか言われてた子」
「事務所のゴリ押しじゃないの?」
ひそひそ話が、
あからさまに私の耳に届くようになった。
スタジオで立ち位置を確認すれば、
「どきなさいよ。そこ私の場所なんだけど」と冷たく言われる。
収録前、笑顔で話しかけようとしても、
空気を切るように目を逸らされる。
レッスン中に音響がわざと止まる。
楽屋の飲み物だけなくなる。
「私、そんなの知らな~い」と言われて終わる。
(……え?なんで……?)
胸の奥が、少しずつ、冷たくなっていった。
彼女たちの“夢”の中に、
私は――いらなかった。
歓迎されてないのなんて、わかってた。
裏で何を言われてるかなんて、全部……気づいてた。
それでも。
それでも私は、ステージの上では笑っていた。
誰よりも練習して、誰よりも声を出して、
誰よりも、自分の“夢”を信じてた。
夢って、そういうものだと思ってた。
魂を削って、傷だらけになっても。
最後まで走り抜けた人だけが、掴めるものなんだって。
そして――その日が来た。
私、朝倉華恋は――
Honey Elaris(ハニー・エラリス)のセンターに選ばれた。
「おめでとう、華恋ちゃん。君が、次のセンターだ」
その言葉が耳に届いた瞬間、
頭が真っ白になった。
(……え? 本当に……私が?)
膝が震えた。
足元がぐらついた。
でも、胸の奥だけは、熱かった。
「やった……やったぁ……! 私、ついに……ついにセンターを掴んだんだ!」
ずっと夢見てた場所。
ステージの真ん中で、照明を一身に浴びるその場所に――
ようやく、たどり着いた。
(見ててよ……私、ちゃんとここまで来たけん……)
それからの毎日は、目まぐるしく過ぎていった。
テレビの収録。雑誌の取材。MV撮影。
(ここからが、本当のスタート)
忙しい。寝る暇もない。スケジュールは毎日ぎっしり。でも、それすらも嬉しかった。ようやく私は報われたんだ。
夢が現実になっていく。
あの頃、幼い私が見上げていたあのステージに――
私は、もうすぐ届くんだ。
そう、思ってた。
あの“事件”が起こるまでは。
「わたしもいつか――ああなりたいっちゃん」
家族と一緒に訪れた、はじめてのライブ。
暗い客席から見上げたステージは、まるで別世界のようにきらきらと輝いていた。
心の奥に、ふわりと芽生えた小さな“憧れ”。
それが、私のすべてのはじまり――。
薄暗い客席から見上げたステージ。
きらきらと輝くスポットライトの中で、
アイドルは歌い、踊り、笑っていた。
そして観客は、まるでそれに応えるように――
ペンライトを振り、涙し、声を届けていた。
まるで、ステージをつくっているのが、
アイドルひとりじゃなくて――
**“観客とアイドル、ふたりでひとつ”**のように感じた。
(ステージって、こんなに眩しかとね…… )
(うちも、いつか――あのステージに立ちたかっちゃん!!)
私の胸に芽生えた小さな憧れ。
それはやがて、夢へと育っていった。
私の実家は博多で、古くから続く小さな旅館。
いつか継ぐことになるって、誰もが当たり前のように思っていた。
でも――私は、諦めなかった。
高校卒業後、教育大学に進学しながら、
こっそりアイドル養成所に通い始めた。
授業の合間にボイトレ、夜はダンスレッスン、朝は早朝実習。
体は正直、ボロボロだった。
でも、それでも――“夢のステージ”を諦めたくなかった。
そして私は、
持ち前の歌声と、少しだけ自信のある容姿で――
ほんの少しだけ、人より早くデビューすることができた。
だけど、デビューはゴールなんかじゃなかった。
本当の苦しみは、そこからだった。
学校では教員免許のための勉強、現場実習、教育心理学の試験。
アイドルの現場では、昼夜逆転、ファン対応、SNS運用、レッスン三昧。
気づけば、週に一度しか家に帰れない生活になっていた。
(……うち、なんでこんなに無理しよるっちゃろ……ほんとに、これでよかと? もう、諦めたほうがよかっちゃないと?)
自分の進むべき道が、本当は間違ってるんじゃないか――
そんな疑心暗鬼が、毎日のように心を締めつけていた。
そんな日々のなかで――
私を救ってくれたのは、たったひとりのファンだった。
彼は、いつも一番前の席にいた。
「エル!オー!ブイ!イー!華恋ちゃん!今日も可愛い華恋ちゃん!ファイトー!」
まるでアイドルのライブ会場みたいに、全力で声を張り上げる。
周りの視線? そんなもの、彼には関係ない。
(……ばかやね。そやけど――その笑顔に、うちはどんだけ救われてきたっちゃろう)
他の誰でもない、私だけを見てくれた。
ペンライトの色も、いつだって私の担当カラー。
コールのタイミングも、応援メッセージも、
全部、全部、私のことだけを“知ろうとしてくれてた”。
「今日もステージ最高だったよ」
「君は必ず夢を叶えられよ!」
「無理しないでね、応援してるよ」
「安心して!僕だけは君の味方だよ!」
SNSにくれる、何気ないその一言が、
どれだけ私の心を救ってくれたか――
気づけば、
私は彼に、特別な感情を抱くようになっていた。
ファンとアイドル――その関係は、越えてはいけないものだった。
でも、
それでも、私は彼を思っていた。
(いつか……この気持ちを伝えられたらって――
ほんのちょっとだけ、夢見てもいいやろ?)
それでも――私は、自分の夢に向かって走った。
そんなある日、私は――
ついに“夢のステージ”を手に入れた。
有名アイドルグループHoney Elaris(ハニー・エラリス)への加入が決まったのだ。
国民的アイドル、テレビでも雑誌でも見ない日はない。
そのグループに、私が入る――信じられない話だった。
最初にそれを聞いたとき、
胸の奥が熱くなって、手が震えた。
(……やっと、努力が報われたんだ)
その日の夜、私はSNSで報告をした。
ずっと応援してくれた人たちへ、感謝と決意を込めて。
フォロワーは一気に伸び、コメント欄には「おめでとう」の文字があふれた。
「すごい!ついに華恋ちゃんが!」
「絶対Honey Elaris(ハニー・エラリス)でセンターになれるよ!」
本当に、心の底から嬉しかった。
これまでの辛い日々が、いっきに薔薇色へと塗り替えられていくようで――
私はスマホを握ったまま、泣いた。
でも――
彼からのメッセージからは何もなかった
私のことをいつも一番に応援してくれた、あの人。
いつもライブ後にメッセージをくれていた彼。
(……どげんしたっちゃろ? 忙しかとかな……?)
ほんの少しの違和感。
でも、あの時の私はそれすら“気のせい”と信じたかった。
そうして、私の――
Honey Elaris(ハニー・エラリス)としての活動が始まった。
それは、地獄の始まりだった。
舞台裏、スタジオ、楽屋。
笑顔とメイクの下で、空気は妙に冷たかった。
私以外のメンバーは、
もうずっと前から一緒に夢を追いかけてきた仲間たち。
そこに、
“途中から来たよく知らない子”――
つまり、私が入る。
当然だ。
私が逆の立場だったら、きっと同じように戸惑った。
だけど、それだけじゃなかった。
「なんか、急に加入してきた子が人気って、ねぇ?」
「ほら、“声が可愛い”とか言われてた子」
「事務所のゴリ押しじゃないの?」
ひそひそ話が、
あからさまに私の耳に届くようになった。
スタジオで立ち位置を確認すれば、
「どきなさいよ。そこ私の場所なんだけど」と冷たく言われる。
収録前、笑顔で話しかけようとしても、
空気を切るように目を逸らされる。
レッスン中に音響がわざと止まる。
楽屋の飲み物だけなくなる。
「私、そんなの知らな~い」と言われて終わる。
(……え?なんで……?)
胸の奥が、少しずつ、冷たくなっていった。
彼女たちの“夢”の中に、
私は――いらなかった。
歓迎されてないのなんて、わかってた。
裏で何を言われてるかなんて、全部……気づいてた。
それでも。
それでも私は、ステージの上では笑っていた。
誰よりも練習して、誰よりも声を出して、
誰よりも、自分の“夢”を信じてた。
夢って、そういうものだと思ってた。
魂を削って、傷だらけになっても。
最後まで走り抜けた人だけが、掴めるものなんだって。
そして――その日が来た。
私、朝倉華恋は――
Honey Elaris(ハニー・エラリス)のセンターに選ばれた。
「おめでとう、華恋ちゃん。君が、次のセンターだ」
その言葉が耳に届いた瞬間、
頭が真っ白になった。
(……え? 本当に……私が?)
膝が震えた。
足元がぐらついた。
でも、胸の奥だけは、熱かった。
「やった……やったぁ……! 私、ついに……ついにセンターを掴んだんだ!」
ずっと夢見てた場所。
ステージの真ん中で、照明を一身に浴びるその場所に――
ようやく、たどり着いた。
(見ててよ……私、ちゃんとここまで来たけん……)
それからの毎日は、目まぐるしく過ぎていった。
テレビの収録。雑誌の取材。MV撮影。
(ここからが、本当のスタート)
忙しい。寝る暇もない。スケジュールは毎日ぎっしり。でも、それすらも嬉しかった。ようやく私は報われたんだ。
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