隣の席のオッドアイギャルは俺の心の声が聞こえるらしい

夕凪けい

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第98話 聞こえてるわよ……ばか

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「ねぇねぇ、安城さんって神田くんと話してるとき、すっごく楽しそうだよね?」

朝の教室。
登校してすぐ席に座り、いつものように静かに授業の準備をしていた私に——
クラスメイトの女子・桜間楓さんが声をかけてきた。

「え?そんなことないわよ……」

「え~?嘘だぁ。私、何度も見てるもん。安城さん、神田くんと話すときだけ……なんかすっごく可愛い顔してるよ?」

(なんだ、安城さんってもっと怖いのかと思ったけど……全然そんなことないんだ。普段はギャルで近寄りがたいのに、神田くんの前だけあんな柔らかい顔するんだもん。話しかけてよかった~)

彼女の心の声が、はっきりと届く。

……ギャルっぽい。この髪、この見た目。
いつもならそのせいで距離を置かれる。
別に、どう思われても構わない——そう割り切ってきたのに。

(……確かに、神田君と話すようになってから、妙に話しかけられることが増えた気がする。……彼の影響?)

ぶっきらぼうの私が「可愛いく笑ってる」なんて——ありえない。誰に言われても信じない。

(……神田君の前だけ、そんな顔……してる?そんなわけ……)

そう思った瞬間、教室の扉が——勢いよく開いた

「あっぶねぇ!もうちょいで遅刻だった……!」

ドアを閉めながら、死にそうな顔で教室に入る俺。
昨日の星梨奈さんの“重い話”のせいでまともに寝れなかった。

(あんな話聞かされたら、眠たくても、眠れねぇよ……!)

そんな愚痴を胸にしまいつつ席に向かう途中——

「ん?……安城が、クラスの女子と喋ってる?」

意外だった。

安城ってなんというか見た目が強いからか、クラスでは誰も近づかない雰囲気だった。実際はめっちゃくちゃ可愛いくておしとやかだけど。
それが今日は、普通に女の子と笑ってる。

俺は席に座り、腕を組んでドヤ顔で頷いた。

(……ふっ。ようやく俺の推し・恵梨香の魅力に気づきはじめたか?
 だがダメだぞ?ファンクラブ会員No.1は俺だ。絶対譲らん。異論は認めない)

その心の声は——案の定、安城に筒抜け。

(なっ……なによあんたっ!?会員No.って何よ!?てか昨日から“恵梨香”呼び捨てなのはどういうつもり!?)

顔を赤くしてこっちを見る安城。

その横をすり抜けるように、桜間楓さんが俺へ話しかけてくる。

クラスメイトの桜間楓が、妙に甘ったるい声で俺に話しかけてきた。

「神田く~ん!おはよう!ねぇねぇ、いきなりなんだけど……神田くんって、どんな女の子が好きなの?」

あまりにも急な質問に、隣の安城がピクリと肩を揺らした。

「な、なんだよ急に!?……ヒミツだよ!」

(ギャルっぽい子がタイプなんて、安城の前で言えるわけねぇだろ!!
 そんなこと言ったら絶対距離置かれる!!
 この質問は……今後の“推し活人生”が少なからず左右される。絶対ミスれねぇ!!)

当然、この心の声は安城にダダ漏れである。

(……ちょ、ちょっと……やめてよ……聞こえてるんだけど……)

安城はページをめくる手が止まり、そっと耳が赤くなる。

「へぇ~内緒なんだ?てっきりさ、私神田君ってギャルっぽい子がタイプなんだと思ってたけど?」

「は?は?何言ってんだ、お前!!ち、ちがうわい!」

(この女……さては心読めるのか……?俺は感の鋭い男だ……恐らく読心スキルがあるのだろうな?)

動揺を隠せない自称感の鋭い俺に、桜間はさらに踏み込んでくる。

「で、本当のところどうなの~?ギャル系、好きでしょ?」

バレたくない気持ちと、嘘をつきたくない気持ちがせめぎ合う。
そして——俺の“あれ”が、タイミング最悪に発動した。

「金髪のギャルが好きです……」

ピクッ。

安城の肩が跳ね、顔が一瞬で真っ赤に染まる。
朝間は一瞬ぽかんとした後——腹を抱えて笑い始めた。

「あはははははっ!!金髪までは聞いてないっての!!
 はいはい、ごちそうさま~!」

そう言って、にやにやしながら自分の席へ戻っていく。

(くっそ~あいつ俺の天敵だわ、要注意人物だな?俺の推し活を危険にさらす天敵。
 やばい……安城には聞こえてないよな!?)

恐る恐る横を見ると——
安城は静かに読書をしていた。

(……き、聞こえてなかったのか……よかった……俺の推し活人生、ギリギリで生還……今まで通りできそうだせ?)

安堵しながら準備を始める俺。

だがその瞬間——
読書の姿勢を崩さないまま、安城がほんの少しだけ視線を向けてきた。

(……聞こえてるわよ……ばか……)

ページの影に隠れた頬が、ほんのり赤く染まっていた。
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