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彼氏を息子にしたら、いかん。
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「ララちゃんのお父さんから聞いてきたんです」
ララの父親ハンスが、ろくでもない男と娘を別れさせて、安定感のある隣町の男に嫁がせる事に成功した事は、この界隈の年頃の娘を持つ親たちの間で、風のようにニュースとなったらしい。
ミシェルは、外国から流れてきた腕のいい占い師、という事になった様子。
領主様の知り合いで、お屋敷にしばらく滞在する事になった、という設定らしい。
人当たりのいいカロンが、そこのところは上手にやったらしい。
ハンスが屋敷の離れのあらかたの修繕を終えて、ミシェルが仕事場の下見にきたときには、もうそうやって、占い待ちの女が外でニコニコと待っていた。
身なりから、仕事をしている平民の女らしい。若くはないが、良い笑顔の、あっけらかんとした、女だ。
「ミシェル!もうお客さんがきたよ!いそがないと!」
カロンはその可愛い顔を紅潮させて、大喜びだ。
(まだそれっぽい準備ができてないんだけどな・・ま、なんとかなる・・かな?)
ミシェルは前の世界の占い師が使っていたような、いろいろなツールを思い出して、適当にダンテの家の棚からもってきていた。
サイコロ、棒、水晶の置物、鳥の羽。ずっしり入ったカバンは、新しい仕事場に並べる間も無く、まだミシェルの肩に引っ掛かっている。
カロンによると、この世界の占い師は、魔獣の骨を焼いたり、水盤を使ったりする方法がメインらしい。
ミシェルの「ぽい」は全く「ぽく」はないらしいが、異国情緒があって、逆にいいと、カロンにはお褒めをもらったところだ。
てきぱきと、勝手にダンテの家の細々したものを勝手に離れにもっていくミシェルに、ダンテはなにも言わなかった。
ニコニコと笑顔の女に好感を持ったこともある。
ミシェルも、営業用のいい笑顔を作って、新居に女を招き入れた。
「いいですよ、さあ、入ってください」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「それでね、今の仕事は天職だと思うんですが、叔母様が、そろそろ田舎にかえってこないか、って」
女は、オーザと名乗った。仕事の相談をしたい、とのことだった。
ミシェルは、急ごしらえの、小さな部屋に、オーザを呼び寄せた。
部屋はハンスに壁をつけてもらっただけ、扉はまだ間に合っていないから、カーテンを取り付けただけ。部屋の中は、ダンテの館の地下室で埃を被っていた、高級そうではあるが、相当年代ものの、古い机と、椅子だけだ。
あとは「ポイ」ものとして、異世界に放り込まれた時に赤いコートのポケットに入っていた、向こうの世界の文庫本を鞄のなかから手元にたぐりよせて、なんとかオーザの話を聞く体制に入った。こんな簡素な占い部屋だが、女の方は気にならないらしい。
オーザは、古い椅子に腰かけるや、早速ペラペラと、話をはじめる。
「家の契約がきれかけてて、でも、彼氏とまだこれからどうするか決めてないんですけど、どうしよっかなー、って。叔母様の家はとっても広くて、でも田舎で仕事はあんまりなくて。ミシェルさん、どうしたらいいと思います?」
失礼します、とミシェルの部屋にカロンがよい香りのする紅茶を運んできてくれた。
この離れには、簡易の台所はあるが、何も台所用のものなど持ってきていない。カロンが気を利かせて屋敷の方から持ってきたのだろう。
(この子は本当に気が利くわね)
カロンの後ろにさざめく、複数の美しい精霊のようなものを見送りながら、ミシェルは、このあっけらかんとした女の観察をはじめた。
女は、実にあっけらかんとしている。ふうふうと、カロンの入れてくれた紅茶を嬉しそうに無邪気に楽しんでいる。
だが、よく観察すると、目じりには皺があるし、指先はささくれている。身なりは若いが、実年齢はどうやら、身なり程は若くはないらしい。
わけがありそうだ。
ミシェルは、息を整えると、女の後ろに集中する。
集中すると、カロンの後ろに見えていたような、光のさざめきが女の後ろに見えてきた。
ララの父親ハンスが、ろくでもない男と娘を別れさせて、安定感のある隣町の男に嫁がせる事に成功した事は、この界隈の年頃の娘を持つ親たちの間で、風のようにニュースとなったらしい。
ミシェルは、外国から流れてきた腕のいい占い師、という事になった様子。
領主様の知り合いで、お屋敷にしばらく滞在する事になった、という設定らしい。
人当たりのいいカロンが、そこのところは上手にやったらしい。
ハンスが屋敷の離れのあらかたの修繕を終えて、ミシェルが仕事場の下見にきたときには、もうそうやって、占い待ちの女が外でニコニコと待っていた。
身なりから、仕事をしている平民の女らしい。若くはないが、良い笑顔の、あっけらかんとした、女だ。
「ミシェル!もうお客さんがきたよ!いそがないと!」
カロンはその可愛い顔を紅潮させて、大喜びだ。
(まだそれっぽい準備ができてないんだけどな・・ま、なんとかなる・・かな?)
ミシェルは前の世界の占い師が使っていたような、いろいろなツールを思い出して、適当にダンテの家の棚からもってきていた。
サイコロ、棒、水晶の置物、鳥の羽。ずっしり入ったカバンは、新しい仕事場に並べる間も無く、まだミシェルの肩に引っ掛かっている。
カロンによると、この世界の占い師は、魔獣の骨を焼いたり、水盤を使ったりする方法がメインらしい。
ミシェルの「ぽい」は全く「ぽく」はないらしいが、異国情緒があって、逆にいいと、カロンにはお褒めをもらったところだ。
てきぱきと、勝手にダンテの家の細々したものを勝手に離れにもっていくミシェルに、ダンテはなにも言わなかった。
ニコニコと笑顔の女に好感を持ったこともある。
ミシェルも、営業用のいい笑顔を作って、新居に女を招き入れた。
「いいですよ、さあ、入ってください」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「それでね、今の仕事は天職だと思うんですが、叔母様が、そろそろ田舎にかえってこないか、って」
女は、オーザと名乗った。仕事の相談をしたい、とのことだった。
ミシェルは、急ごしらえの、小さな部屋に、オーザを呼び寄せた。
部屋はハンスに壁をつけてもらっただけ、扉はまだ間に合っていないから、カーテンを取り付けただけ。部屋の中は、ダンテの館の地下室で埃を被っていた、高級そうではあるが、相当年代ものの、古い机と、椅子だけだ。
あとは「ポイ」ものとして、異世界に放り込まれた時に赤いコートのポケットに入っていた、向こうの世界の文庫本を鞄のなかから手元にたぐりよせて、なんとかオーザの話を聞く体制に入った。こんな簡素な占い部屋だが、女の方は気にならないらしい。
オーザは、古い椅子に腰かけるや、早速ペラペラと、話をはじめる。
「家の契約がきれかけてて、でも、彼氏とまだこれからどうするか決めてないんですけど、どうしよっかなー、って。叔母様の家はとっても広くて、でも田舎で仕事はあんまりなくて。ミシェルさん、どうしたらいいと思います?」
失礼します、とミシェルの部屋にカロンがよい香りのする紅茶を運んできてくれた。
この離れには、簡易の台所はあるが、何も台所用のものなど持ってきていない。カロンが気を利かせて屋敷の方から持ってきたのだろう。
(この子は本当に気が利くわね)
カロンの後ろにさざめく、複数の美しい精霊のようなものを見送りながら、ミシェルは、このあっけらかんとした女の観察をはじめた。
女は、実にあっけらかんとしている。ふうふうと、カロンの入れてくれた紅茶を嬉しそうに無邪気に楽しんでいる。
だが、よく観察すると、目じりには皺があるし、指先はささくれている。身なりは若いが、実年齢はどうやら、身なり程は若くはないらしい。
わけがありそうだ。
ミシェルは、息を整えると、女の後ろに集中する。
集中すると、カロンの後ろに見えていたような、光のさざめきが女の後ろに見えてきた。
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