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第一章.狂犬
微かな予兆2
しおりを挟むドクドクと激しく鼓動する心臓。
そしてその熱い視線から、私は目をそらすことが出来なかった。
しかしそれも、その男子の元に急に3人の男子が来たことで終わりを迎える。訪れた3人に向いたその人に視線に、どうしてかほっとしていた。
何を話しているかは分からないが何やら口論しているみたいで、怒鳴り声まで響き出している。
「うわ! あれ狂犬くんじゃん!」
「え、どれ?」
「あの3人に囲まれてる男子よ! 早速喧嘩してるじゃん」
聞こえて来る怒鳴り声に反応したあいちゃんは、窓の外を眺めて途端に顔をしかめていた。指差す先には、さっき視線を感じたその男の子。
「あの人が…」
口論していたと思ったら今度は殴り合いの喧嘩にまで発展していたその場。3対1で不利な状況な筈なのに、その人は3人に向かい殴りあっていた。
あれが、噂の狂犬と呼ばれている人。
そして私の、お隣さん。
「てか学校来てたんだねー、ほんと狂犬くんがいると学校が騒がしいよ」
関わりたくないと、騒ぎを聞き付けた先生が4人の元に来て止めている現状を見ながらぼやいたあいちゃん。
ただそれに、私は何も答えることは出来なかった。
心臓はまだうるさい。あの向けられる視線が忘れられない。
よく分からない、初めての感情に私はそわそわしてそれを紛らわせるようにカフェラテを全部飲み干した。
まだ見ぬお隣さんを、今日初めて見た。
はっきりと見た訳でもないのに、何故が脳裏にその姿が焼き付いて消えない。
この日見たみんなの恐れる狂犬くんの第一印象は――
"よく分からないけど何故かそわそわする人"と私の中で決定付けられたのだった。
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