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お尻の際どいところまで刺青が入ってるのを見せてくれる男
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彼の引き締まった裸の背中は、滑らかな筋肉と美しい幾何学模様で覆われている。さまざまな意味やシンボルが含まれているのだと言うそれは、緻密なタペストリーのようだった。
背中の幾何学模様は全面に広がり、下部は彼の穿いているスラックスの中にまで続いているのが分かる。
「……ウキツさんの刺青、これどこまで続いてんの」
ソファに座ったまま背中の模様をなんとなく目で追っていたおれは、何も考えずふと疑問を口にした。
「気になる?」
ウキツさんは首だけ振り返っておれに微笑みかけた。着替えのために手に取った新しい白いシャツが元の場所に戻される。
「着なよ。別に、入れたとき痛かったのかなと思っただけ」
「痛かったけど、もう忘れちゃったかなあ」
忘れたかどうか自分で分からないなんて、変な人だと思う。おれはウキツさんがどういう人なのかよく知らない。ウキツさんは時々この店にふらりとやって来ては、バックヤードで着替えをしたり飯を食ったり泊まったりしている。バイトのおれはオーナーや店長にそれを任されているだけだ。
「見せようか。結構ギリギリまで入ってるんだよ」
そう言ってウキツさんは背中側のウエスト部分に指を引っ掛け、穿いているものを下着ごと少しだけ下げて見せた。尻の谷間が覗き、幾何学模様はその狭間にも入り込んでいる。
「いいって」
どうしてもその終端が知りたかったというわけでもない。おれが手を軽く振って断ると、ウキツさんはちょっと拍子抜けしたように首を傾けた。
「そっかあ。『刺青全部見たい』って僕とやりたい人がよく言うから、もしかしてそういう意味かと思った」
「そんなんじゃないよ」
「残念だなあ」
何が残念なのか、追求したらよくないことが起こりそうな気がする。だがウキツさんはおれの気など構わずに、上半身裸のままソファの隣に座ってきた。
「これがあると、もし顔が潰れても誰だか分かるから便利なんだよ」
できれば顔が潰れるような目になんか遭わないで欲しいけど、ウキツさんにはそういうことがありえるんだろう。おれはウキツさんのことを何も知らない。
「──だから僕の刺青、全部見てしっかり覚えておいてくれる?」
ウキツさんはずるい。それだけはおれにも分かった。
****
「……ウキツさんが誘ったんだよね?」
行為の後、おれはソファの後ろでズボンをはきながら一応の確認をした。あまりに手際良く持ち込まれたので、ウキツさんどころかおれ自身がはっきり同意したのかもよく覚えていない。
「そうだよ?」
合皮の安っぽい黒いソファの上に裸で寝そべりながら、ウキツさんは煙草に火を着けた。バックヤードのソファに、小さな焼け焦げを黒マジックで塗り潰してごまかした跡があるのには以前から気付いていたが、こういう理由だったのかも知れない。
「食われたみたいでなんか悔しいんだけど」
実際きみ食われてるよ、と笑うウキツさんの言葉を無視しておれは続けた。
「次おれが誘ったら、ウキツさん誘われてくれんの」
その言葉に、ウキツさんは上半身ごと振り向いておれの顔をまじまじ見る。ウキツさんの肩の幾何学的な模様が身体と一緒にくにゃりと歪むのが綺麗で、おれはそっちを見ていた。
「……イトなんとかくん、ちょっと」
起き上がったウキツさんは左手でちょいちょいと手招きをする。右手の煙草は火を着けたばかりでまだ長いのに、テーブルの上のブリキの灰皿であっさり揉み消された。
「何。ウキツさんおれの名前うろ覚えだね」
招かれるままに隣に座ると、強引に顎を捕まれてキスされた。舌を入れられて、吸われる。ぬめぬめとしたそれに口内をねっとり擦り上げられて、力が抜けそうになる。煙草のにおいがかろうじて気を逸らしてくれたが、下半身はこっちの気を無視して疼いてしまう。
おれはまた流されそうになりながら、どうにかウキツさんを引き剥がした。ウキツさんの力が思った以上に強かったので、結構頑張ったと思う。
「え、何? ウキツさん、ほんとに何、急に」
「今、僕のこと誘ったよね」
「誘ってない」
誘ってない、と思う。ただ、さっきウキツさんに誘われたのかもはっきりしないおれが断言していいのか自信はない。
「次は誘うって言っただけ」
「『次』、今からしようか」
何がこの人のスイッチになるのか、おれには全く分からない。
「まだ誘ってないって」
「でも僕、誘われちゃったから」
剥き出しの情欲で濡れた目が、無遠慮なまでにおれに向けられる。言葉とは反対に、今まさにおれの方が誘われていると思う。
「あー……そっか」
何となく感じたのは、もしおれがこの人を誘う時があるのなら、それはこの人がおれに誘われたいと思った時なんだろう。
スイッチを入れる権限なんて、元々こっちにはなかった。ウキツさんがその気になった時に、おれのスイッチも勝手に入れられる。そういうことだ。たぶん。そんな気がする。
「じゃあいいよ、それで。その代わり後でウキツさんの背中の写真撮らせて」
「お、何。エロいことに使う?」
「綺麗だからスマホのロック画面にする」
ウキツさんは、まじかあ……と呟きながらおれの服に手をかけて脱がしかける。
「イトなんとかくんさあ、自分のちんちんをあんまり安売りするのはよくないよ」
ウキツさんには言われたくないと思った。
背中の幾何学模様は全面に広がり、下部は彼の穿いているスラックスの中にまで続いているのが分かる。
「……ウキツさんの刺青、これどこまで続いてんの」
ソファに座ったまま背中の模様をなんとなく目で追っていたおれは、何も考えずふと疑問を口にした。
「気になる?」
ウキツさんは首だけ振り返っておれに微笑みかけた。着替えのために手に取った新しい白いシャツが元の場所に戻される。
「着なよ。別に、入れたとき痛かったのかなと思っただけ」
「痛かったけど、もう忘れちゃったかなあ」
忘れたかどうか自分で分からないなんて、変な人だと思う。おれはウキツさんがどういう人なのかよく知らない。ウキツさんは時々この店にふらりとやって来ては、バックヤードで着替えをしたり飯を食ったり泊まったりしている。バイトのおれはオーナーや店長にそれを任されているだけだ。
「見せようか。結構ギリギリまで入ってるんだよ」
そう言ってウキツさんは背中側のウエスト部分に指を引っ掛け、穿いているものを下着ごと少しだけ下げて見せた。尻の谷間が覗き、幾何学模様はその狭間にも入り込んでいる。
「いいって」
どうしてもその終端が知りたかったというわけでもない。おれが手を軽く振って断ると、ウキツさんはちょっと拍子抜けしたように首を傾けた。
「そっかあ。『刺青全部見たい』って僕とやりたい人がよく言うから、もしかしてそういう意味かと思った」
「そんなんじゃないよ」
「残念だなあ」
何が残念なのか、追求したらよくないことが起こりそうな気がする。だがウキツさんはおれの気など構わずに、上半身裸のままソファの隣に座ってきた。
「これがあると、もし顔が潰れても誰だか分かるから便利なんだよ」
できれば顔が潰れるような目になんか遭わないで欲しいけど、ウキツさんにはそういうことがありえるんだろう。おれはウキツさんのことを何も知らない。
「──だから僕の刺青、全部見てしっかり覚えておいてくれる?」
ウキツさんはずるい。それだけはおれにも分かった。
****
「……ウキツさんが誘ったんだよね?」
行為の後、おれはソファの後ろでズボンをはきながら一応の確認をした。あまりに手際良く持ち込まれたので、ウキツさんどころかおれ自身がはっきり同意したのかもよく覚えていない。
「そうだよ?」
合皮の安っぽい黒いソファの上に裸で寝そべりながら、ウキツさんは煙草に火を着けた。バックヤードのソファに、小さな焼け焦げを黒マジックで塗り潰してごまかした跡があるのには以前から気付いていたが、こういう理由だったのかも知れない。
「食われたみたいでなんか悔しいんだけど」
実際きみ食われてるよ、と笑うウキツさんの言葉を無視しておれは続けた。
「次おれが誘ったら、ウキツさん誘われてくれんの」
その言葉に、ウキツさんは上半身ごと振り向いておれの顔をまじまじ見る。ウキツさんの肩の幾何学的な模様が身体と一緒にくにゃりと歪むのが綺麗で、おれはそっちを見ていた。
「……イトなんとかくん、ちょっと」
起き上がったウキツさんは左手でちょいちょいと手招きをする。右手の煙草は火を着けたばかりでまだ長いのに、テーブルの上のブリキの灰皿であっさり揉み消された。
「何。ウキツさんおれの名前うろ覚えだね」
招かれるままに隣に座ると、強引に顎を捕まれてキスされた。舌を入れられて、吸われる。ぬめぬめとしたそれに口内をねっとり擦り上げられて、力が抜けそうになる。煙草のにおいがかろうじて気を逸らしてくれたが、下半身はこっちの気を無視して疼いてしまう。
おれはまた流されそうになりながら、どうにかウキツさんを引き剥がした。ウキツさんの力が思った以上に強かったので、結構頑張ったと思う。
「え、何? ウキツさん、ほんとに何、急に」
「今、僕のこと誘ったよね」
「誘ってない」
誘ってない、と思う。ただ、さっきウキツさんに誘われたのかもはっきりしないおれが断言していいのか自信はない。
「次は誘うって言っただけ」
「『次』、今からしようか」
何がこの人のスイッチになるのか、おれには全く分からない。
「まだ誘ってないって」
「でも僕、誘われちゃったから」
剥き出しの情欲で濡れた目が、無遠慮なまでにおれに向けられる。言葉とは反対に、今まさにおれの方が誘われていると思う。
「あー……そっか」
何となく感じたのは、もしおれがこの人を誘う時があるのなら、それはこの人がおれに誘われたいと思った時なんだろう。
スイッチを入れる権限なんて、元々こっちにはなかった。ウキツさんがその気になった時に、おれのスイッチも勝手に入れられる。そういうことだ。たぶん。そんな気がする。
「じゃあいいよ、それで。その代わり後でウキツさんの背中の写真撮らせて」
「お、何。エロいことに使う?」
「綺麗だからスマホのロック画面にする」
ウキツさんは、まじかあ……と呟きながらおれの服に手をかけて脱がしかける。
「イトなんとかくんさあ、自分のちんちんをあんまり安売りするのはよくないよ」
ウキツさんには言われたくないと思った。
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