月に兎がおりまして

りずべす

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壹、天兎

天兎⑤

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 ばたついた週末を終え月曜日を迎える。その朝、目が覚めるとまたアオがベッドの中にいた。
「おいお前! なんでこっちにくるんだ! 窓際で寝るって言っただろ!」
「月が沈んだあとの窓際なんて、ただ寒いだけじゃない! あんただって嬉しいくせに!」
「うっ……れしいかどうかは別にして、ほんとびっくりするからやめろよ……」
 起き抜けに突然、ベッドでアオを見るのは心臓に悪い。兎の姿なら割と冷静に対処できるが、人の姿だった日にはもう、赤くなる顔を抑えるだけで精一杯だ。
 何せこいつは、寝るときには素っ裸なのだ。もちろん何度も服を着用するように言ったのだが、こいつはどうやら寝相が悪いらしく、睡眠時に、兎に人に姿を変える。するともう、服など脱げてしまって意味がない。
 そしてアオが俺のベッドに潜るときは、狙っているかのように、だいたい人の姿をしていた。そんな朝はしばらく、アオの肌の柔らかさが脳裏から離れなくて煩悶した。
 こうなるとあまり口論にもならず、結局、俺が引き下がることになる。渋い顔で着替えをし、顔を洗って、朝食を済ませる。ついでにアオにも同じ朝食を用意してやり、それを餌にようやく着物の着用を要求。片手間で適当に家事を片付けた。
 学校へ行く時間になったので鞄を持って玄関先に立つと、相変わらず寝起きとは見違えるような立派な着物姿でアオが現れる。
「これからこうしてあんたを見送るのが、あたしの日課になるわけね」
「妙な言い方はやめてくれ。あと、俺が留守の間、家の中の物とか壊すなよ」
「こんなお淑やかな兎に向かって失礼ね」
 淑やかの意味を知らないのではないかと思ったが、わざわざ説明する時間も惜しいので、無視して俺は家を出た。
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