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第3章 精霊の森
行商人レダ
しおりを挟むクラウディはローランドルから数日歩いた。そして幾らかの森を抜けて街道に沿って進んでいると開けた草原に出た。
道中ラビラビが数体とノックボアに遭遇したが難なく倒して素材を剥ぎ取った。
それとは別に大きな蜘蛛にも遭遇する。体長5mくらいで大きな腹は赤と黒のラインが交互に入った見た目。前足の2本には返りのついた鎌を持っていた。糸に絡め取られそうになったが魔法で燃やしてそのまま蜘蛛も焼いて倒した。
しかし木に火が燃え移り、消化のために余計に水魔法を使ってしまった。元男の少女は使う魔法も考えなければならないと二度手間になることを学んだ。
少女が森の出口の木の下で休んでいると森に向かって冒険者らしき5人組が見えた。
それをいち早く気づいて前もって茂みに隠れてやり過ごすクラウディ。
魔法使いが2人に剣士が2人と僧侶がひとり。傷だらけで少女と同じように森の出口────冒険者たちから見たら入り口────で休憩を取り出した。
その間息を潜めていると興味深い会話が聞こえてきた。
「────やれやれ危なかったな」
「あの霧やべー。シャドウレインが出るとは聞いてないよほんと」
「本当にね。逃れたの奇跡ね」
「ああいう見たことない現象は迂回すべきだったんだ。なのにこいつ……」
「は?俺だけのせいじゃねーだろ?!お前らだって────」
────シャドウレインか……
冒険者たちは小一時間休むと森へと入っていった。
クラウディは彼らの気配が完全に消えると茂みから出てきてレイボストンがある方向を見つめた。まだ見えないが冒険者たちの口ぶりからしてここから1週間もかからないだろう。
彼女は軽く食事を摂ると出発した。
途中荷車を馬で引く行商人らしき人物が見え話しかけられる。緑の前掛けにベレー帽のようなものを被った若い男だった。クラウディは念の為フードを深く被っていた。
「そこの君、良かったら品を見ていかないか?」
一回断ったが見るだけでもとそう言って荷車を止めた。荷車の周りには護衛らしき男性と女性が前後に待機している。
少女も興味はあったため促されて荷車の中に入った。
中はかなり狭いが薬品の入った小瓶や小さい字がたくさん書いてある巻物のようなもの、本や雑貨など様々なものがあった。
これは一つ一つ見てるとキリないなと思った少女はうーんと唸った。それにインベントリ外にある金は3000ユーンと少ない。もし盗まれた時に大変だからだ。
「少年、いくらある?あれなら欲しいものとか言ってくれたら見繕うけど」
そんな様子の小さな旅人をみて行商人は言った。
────欲しいものか……1番は元の世界に帰る方法だが
少女は今までの事を思い返してそうだと声を上げた。
「男性向けの香水はあるか?」
その質問に行商人は首を傾げたが、棚の1列を手早く並べ替えた。
「ここからここまで男性向けの香水です。値段順に並べてるので気にいるのがあれば」
少女が匂いを嗅いでもいいか聞くと笑顔で頷いた。
頭がクラクラとするような甘ったるいニオイもあれば、えずくような刺激のあるニオイまであった。
元男の少女は1番キツイ匂いのものを購入した。値段は1500ユーン。
「他は何かありますか?」
クラウディは無いと言おうとしたがふと上を見ると白塗りの仮面が立てかけてあるのが目に入った。
「あれは声が変わる仮面です。マジックアイテムですが見た目も悪いし特に人気はありませんよ」
少女の視線を追って気づいた商人が、ニコリと笑った。
「いくらだ?」
「え?」
「まいどー。私行商人のレダと申します以後ご贔屓に」
行商人たちは仮面を持つ少年をその場に残し、馬を再び引いて立ち去った。
「いいんですか?あの仮面。呪われてますよね」
馬を操るレダの弟子が言った。
「まあ本人が欲しいと言うなら売るしか無いよ。別に呪いって言っても大した事はないし」
────まあダンジョンとかでは致命的になるかもだけど。そこでは付けないでしょ
「師匠も悪い人ですね有り金全部もらうなんて」
苦笑いする弟子にクスクスと笑うレダ。
────あの子はすぐに取り引きに応じたし、まだ持ってるよお金
「さ、スコットさんのところに早く向かうよ」
少女は仮面を早速試した。マナの消費なしで変声ができるならこれほどいいものはない。
最初は特に変化がなく騙されたかと思ったが、色々試すと1番イメージしやすい声が変声されて出す事ができた。元男の時の声だ。
元男の時も仮面をつけていたのでかえって馴染む。
ただ意識を集中すると、生命石も反応するので常時つけていると石のマナが減ってしまう為同時にはつけられない。
クラウディは仮面を外しインベントリに仕舞った。
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