【BL】神様に愛されたオメガと嫌われ者アルファ

のがみさんちのはろさん

文字の大きさ
15 / 24

第15話 密着

しおりを挟む


「っと、そろそろ帰らないと」

 そろそろ陽が落ちる頃。ルーカスはスケッチブックから視線を外し、小さく息を吐いた。
 数時間もずっと絵を描き続けたせいで少し手が痛いのか、右手をブラブラと揺らしている。

「お前の足じゃ遅くなるだろ。送ってく」
「ありがとうございます、助かります」
「しっかり捕まれよ」
「はい」

 また担がれるだろうと思っていたルーカスはお腹に力を入れたが、予想していた抱き方をされなかった。
 そっと横向きに抱き上げられ、思い切り密着している。彼の胸の厚みや体温を感じて、ルーカスの顔はドンドン赤くなっていく。

「どうした」
「いっ、いえ……」
「そうか。じゃあ、行くぞ」

 ヴァイスは走り出した。
 抱きかかえたルーカスを落とさないように、腕に力を込める。
 人の体温なんて毎日のように触れているのに、なぜ緊張してしまうのだろう。
 やっぱり彼が人と違うからなのか。
 ルーカスは興奮してフェロモンが溢れないように、無心になろうとする。
 落ち着け。落ち着けと、必死に自分に訴えかけているのに、胸の高鳴りは治まらない。

 その血は薄れているとはいえ、彼はかつて人間を支配していた獣人の子。そしてアルファだ。人間のアルファよりもずっと強い力がある。
 オメガ性であるルーカスが彼に反応するのも無理はないのかもしれない。


 森の出口に着き、ルーカスを下ろした。
 どうにか耐えられた。ここで発情してヴァイスに迷惑を掛けたくもなかったし、もうすぐ主人も来るはず。発情期《ヒート》でもないのに興奮状態になっていたら、普段の行動を怪しまれてしまうかもしれない。

「あ、ありがとうございました」
「ああ。それより、明日も来るのか」
「え、あの……ヴァイスさんが、迷惑でなければ……」
「そうか。なら、またあの場所で待ってる」
「っ! は、はい!」
「……っ」

 ほんのり赤くなった顔で微笑まれ、ヴァイスは思わず息を飲んだ。
 移動してる間も少し感じていたが、この少年に触れていると変な気持ちにされられる。
 必死に理性で押さえつけたが、欲情を煽られる。

「お前……この前の薬はどうした」
「え……あ、抑えられてませんでしたか……我慢したつもりだったんですけど……」
「いや、平気だ。薬がないなら、母さんの使っていたやつが残ってるけど……いや、さすがに古すぎるか」
「そ、そうですね」
「だったら、今度そういうのを和らげる薬草を持ってきてやる」
「あるんですか?」
「薬の材料にも使われるものだ。母さんもたまに使ってたし、効くと思う」
「それは、助かります。薬が減ってるのをご主人様に知られたくなかったので……」

 ルーカスはホッと胸を撫で下ろした。
 これで薬の問題は解決する。あとは主人にさえバレなければ、これからもヴァイスに会える。
 彼の絵を描くことが出来る。

「じゃあ、また明日」
「ああ。またな」

 ヴァイスに手を振って、ルーカスは家へと駆け足で戻った。
 その背中を見送り、ヴァイスも森の中へと戻る。

 薬を使うことすら主人に知られると困るのか。ヴァイスは彼の奇妙な言動が気掛かりで仕方なかった。
 神様に愛されている。その言葉の意味を知る方法はないだろうか。
 ヴァイスは小屋の中に何か手掛かりがないか調べることにした。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

結婚初夜に相手が舌打ちして寝室出て行こうとした

BL
十数年間続いた王国と帝国の戦争の終結と和平の形として、元敵国の皇帝と結婚することになったカイル。 実家にはもう帰ってくるなと言われるし、結婚相手は心底嫌そうに舌打ちしてくるし、マジ最悪ってところから始まる話。 オメガバースでオメガの立場が低い世界 こんなあらすじとタイトルですが、主人公が可哀そうって感じは全然ないです 強くたくましくメンタルがオリハルコンな主人公です 主人公は耐える我慢する許す許容するということがあんまり出来ない人間です 倫理観もちょっと薄いです というか、他人の事を自分と同じ人間だと思ってない部分があります ※この主人公は受けです

希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう

水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」 辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。 ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。 「お前のその特異な力を、帝国のために使え」 強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。 しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。 運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。 偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!

婚約破棄で追放された悪役令息の俺、実はオメガだと隠していたら辺境で出会った無骨な傭兵が隣国の皇太子で運命の番でした

水凪しおん
BL
「今この時をもって、貴様との婚約を破棄する!」 公爵令息レオンは、王子アルベルトとその寵愛する聖女リリアによって、身に覚えのない罪で断罪され、全てを奪われた。 婚約、地位、家族からの愛――そして、痩せ衰えた最果ての辺境地へと追放される。 しかし、それは新たな人生の始まりだった。 前世の知識というチート能力を秘めたレオンは、絶望の地を希望の楽園へと変えていく。 そんな彼の前に現れたのは、ミステリアスな傭兵カイ。 共に困難を乗り越えるうち、二人の間には強い絆が芽生え始める。 だがレオンには、誰にも言えない秘密があった。 彼は、この世界で蔑まれる存在――「オメガ」なのだ。 一方、レオンを追放した王国は、彼の不在によって崩壊の一途を辿っていた。 これは、どん底から這い上がる悪役令息が、運命の番と出会い、真実の愛と幸福を手に入れるまでの物語。 痛快な逆転劇と、とろけるほど甘い溺愛が織りなす、異世界やり直しロマンス!

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

「役立たず」と追放された神官を拾ったのは、不眠に悩む最強の騎士団長。彼の唯一の癒やし手になった俺は、その重すぎる独占欲に溺愛される

水凪しおん
BL
聖なる力を持たず、「穢れを祓う」ことしかできない神官ルカ。治癒の奇跡も起こせない彼は、聖域から「役立たず」の烙印を押され、無一文で追放されてしまう。 絶望の淵で倒れていた彼を拾ったのは、「氷の鬼神」と恐れられる最強の竜騎士団長、エヴァン・ライオネルだった。 長年の不眠と悪夢に苦しむエヴァンは、ルカの側にいるだけで不思議な安らぎを得られることに気づく。 「お前は今日から俺専用の癒やし手だ。異論は認めん」 有無を言わさず騎士団に連れ去られたルカの、無能と蔑まれた力。それは、戦場で瘴気に蝕まれる騎士たちにとって、そして孤独な鬼神の心を救う唯一の光となる奇跡だった。 追放された役立たず神官が、最強騎士団長の独占欲と溺愛に包まれ、かけがえのない居場所を見つける異世界BLファンタジー!

処理中です...