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第一部
32話 「魔王らしくなろう」
しおりを挟むそうだ。またあの国の様子見に行かないと。
もう暫くしたら動きが出るかもしれない。それまでは適当に他の国の様子やダンジョン見に行って、俺も魔物達がどうしてるのかこの目で確認しないと。
人間同士の争いなら勇者が関わることもないだろうし、何の心配もいらないだろう。
とりあえず、今日のところは休もう。抑えていた魔力を元に戻せば消費した体力は回復するけど、俺のメンタルは回復しない。
――コンコン
部屋のドアがノックされ、俺は指先だけ動かして扉を開けた。もう返事するのも億劫。
「魔王様、大丈夫ですか?」
「んー」
ベッドに突っ伏したままの俺に、リドが心配そうに声をかける。
ゴメン。今の俺、余裕ない。
「人間達の様子を見に行かれたんですよね。どうでした?」
「俺が見に行ったときは特に動きがなかったから、そのまま帰ってきたよ」
「そうでしたか。まぁあの程度の小国ですし、どっちが勝とうと魔王様の計画に支障はないでしょう」
「そうだな……あんなに大勢の人が死んでるのに、なんで続けるんだろうね」
「我々魔族には理解できないものです。ここで我らが侵攻したらどうなるかとは考えないのでしょうかね」
本当にそうだ。今は人間と魔族が戦ってる最中なのに、人同士で争ってる場合なのか。
それとも、勇者がいるから魔物の心配はないってことだろうか。
もしそうなら武力介入しちゃうぞ。
「なぁリド。もし俺がその戦争に手を出したらどうなる?」
「そうですね。魔王様の力を示されるのは悪いことではないと思いますよ」
「ふうん……まぁ、面倒だからしないけど」
「人間が減る分には良いんじゃないですか。我々が困ることはないですし」
「そうだな……アイツらの勝手だし」
戦争なんて他人事のように考えてしまうのは、前世の俺にとって遠い出来事だからかな。高校生の俺には無縁だったし、教科書の中の話でしかなくて、ニュースとかで耳にする言葉だったから。
本当はもっとまじめに考えなきゃいけないんだろうけど、日本は戦争しない国だし。だから今もそういう言葉を聞いてもピンとこない。
人が倒れてるのを見ても、あまりショックじゃなかった。これは俺が魔王になったせいなのかな。
「……魔王様」
「うん?」
「あまり、人と関わるものではありませんよ」
「え?」
「様子を見に行くのは結構ですが、魔王様がフラフラ出歩くと威厳に関わりますから」
「あ、ああ。そうだな、悪い」
「いえ。まだ勇者もここまで来そうにないので、問題はありませんが一応」
ビックリした。いきなりそんなこと言うから、俺が勇者と会ってるのがバレたのかと思った。
そうだよな。さすがに魔王が魔王城を不在にしておくのはよくないか。いくら訪ねてくる人がいないからって、それは良くないな。
そもそも俺、まだ魔王城の玉座にも座ってない。魔王なのに。
「……俺、毎日ちゃんと玉座にいた方がいいのかな」
「ま、毎日じゃなくても大丈夫ですよ。ですが、そのお姿になってから他の魔族の前に出てませんからね」
「そうだよなぁ……元の姿にちゃんと変化できるようにイメトレしないとな」
「魔物全体の士気にも関わりますからね。くれぐれもお気を付けください」
「うん。ありがとう、リド」
リドの言葉は本当に助かるな。至らない俺をきちっと導いてくれる。
そうだな。もっとこの城のみんなのことにも目を向けないとダメだよな。俺、自分のことでいっぱいいっぱいになってた。
リドがいるからどうにかなってるけど、さすがに俺も魔王らしいことしないと駄目だな。本来なら俺がみんなを導く立場なんだから。
「俺、こんな格好でもみんなに認めてもらえるように振る舞うよ!」
「あなたを認めていないものなんていませんよ」
「俺が嫌なんだよ。明日からみんなに声掛けてく!」
「いきなり話しかけても驚かれると思うので、その辺だけ気を付けてくださいね」
「うん!」
しっかり魔王業しないとな。
毎日頑張ってるみんなを労わなきゃ。
お尻の違和感なんか気にしてる場合じゃないんだ。
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