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第一部
43話 「運命の日」
しおりを挟む元々俺は、いじめられっ子だ。
毎日死ねと言われ、彼らのストレスの捌け口に利用され、ただただ降り掛かる暴力に耐えていた。
「お前、何のために生きてるの?」
「生きてて楽しい?」
「さっさと死んだ方がいいんじゃねーの?」
俺にだって分からないよ。何のために生きてるのかなんて。
自分が何でいじめられなきゃいけないのかも分からない。ただ普通にしてただけなのに、なんで理不尽な暴力を受け続けなきゃいけないのか理解できない。
でも、俺には立ち向かう勇気がなかった。
だからとにかく我慢していればいいと思う毎日を過ごしていた。大人しくしていればいい。そうすれば、やり過ごせる。心を殺して、耐えれば一日が終わる。また明日も、そうやって過ごす。
誰かに相談も出来なかった。いじめられてる自分が情けなくて、言葉にすると惨めになりそうな気がして、言えなかった。いつだって俺を心配してくれた両親に、何も言うとこが出来なかった。ただただ大丈夫だよって笑顔を張り付けて、何一つ平気じゃないのに強がっていた。
そんな日々を送っていた俺が、死を目前にして世界が変わった。言葉通り、俺の現実が変わったんだ。
まさかの魔王。一気に立場が変わりすぎて驚いた。
何かに立ち向かうことなんて出来なかった俺が、世界を支配しようとしてる。笑えるよな。
でも、魔王クラッドは俺なら出来るって思ってくれた。自分の命を懸けて、俺を生かしてくれた。
俺みたいな奴に何が出来るんだって思う。ずっと嫌なことから逃げ続けてきた俺なんかにって。ずっとゲームの世界に現実逃避してるような奴だぞ。そりゃそう思うのも当然だろ。
だけど、そんな俺を支えてくれる人がいた。
俺に勇気をくれた人が目の前に現れた。
俺の背中を押してくれる人たちがいる。
助けたいと思えるみんながいる。
だから俺は、戦うことを選んだ。
俺を救ってくれた人を、今度は俺が救いたいと思った。
俺は初めて、生きる意味を見つけたんだ。
俺は魔王。
この世界を支配する王。
この世界に革命をもたらす者だ。
カツン、カツンと、足音が響き渡る。
俺はゆっくりと前へ歩む。
この世界に来て、初めて座る王座。
不思議と心は穏やかだ。この体が、あるべき場所に戻ってこれたことを喜んでいるようにも思える。
俺の前には、魔王に仕える仲間たちが跪いて並んでいる。
この時を、待ち望んだように。
俺は深く深呼吸して、前を見据えた。
「……不思議だね。俺、怖いとか全然そういうのないよ」
俺の言葉に、リドが顔を上げる。
「魔王城のシステムは万全です。いつでも勇者を迎え撃つことができます」
「ありがとう」
とうとう、この日が来た。
間もなく、勇者がこの場所に来る。
本当の「約束の場所」に。
待ち侘びた。最後に会ったあの日から、ずっと待っていたんだ。
「世界は変わる。俺たちが変えるんだ」
人間じゃないだけで、悪という烙印を押すこの世界に破滅を。
そして、新たな世界を築くんだ。
「勝とう。この世界の希望に」
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