65 / 80
第二部
第4話 【過去からの贈り物】
しおりを挟むクラッドとリドが残してくれた魔王城。
ここが敵に乗っ取られていなくて良かった。でも根城にするには絶好の場所だったはずなのに何でここをアジトにしなかったんだろう。
さすがに千年以上経ったこの世界はもう俺の知ってるアイゼンヴァッハとは違うだろうから、もう地理が分からない。国もダンジョンも何もかも変わってると思っていいだろう。
どこか街に行って地図とか買いたいな。
そのためにも、まずは蓮をどうにかしないと。
「うーん……どうしようかな」
「宝石じゃないと駄目なのか?」
「いや。単純にお前が身に着けていられるものであれば何でもいいけど」
「なるほどー」
俺達は部屋の中を調べた。
魔王城は基本的に変わってないな。俺が使っていた時のままだ。懐かしくて少し目の奥が熱くなってくる。
「……蓮。お前の初期装備に何かないの」
「特に何もないかな」
蓮は自分の体を触ってみるが、アイテムなどは何も持っていないようだ。俺も何も持ってない。
神剣は俺らの体を用意するだけで精一杯だったみたいだし、さすがに装備品まで期待するのは駄目だよな。
「あ。伊織、これは?」
「ん?」
「この箱、全然開かないんだけど」
手招きされ、俺は蓮の元へと歩み寄った。
本棚に置かれた小さな箱。蓮が蓋を開けようとしてもビクともしない。何か鍵でも必要なんだろうか。
「そんなの、前はなかったと思うけど……」
「ここにあるなら魔王の私物じゃないの?」
「うーん……」
俺はそれを蓮から受け取った。
その箱が俺の手に置かれた瞬間、小さくカチっという音が聞こえた。
「……ん?」
「今の音って、もしかして開いたの?」
「え、何もしてないのに」
「もしかしたら伊織が触れたら開くようになっていたとか」
「まさかそんな……」
俺は恐る恐るその箱を開けてみた。
中に入っていたのは白銀に輝く二つの指輪。その中央には赤い宝石が埋め込まれていた。
まるでペアリングみたいだ。もしかしたらクラッドかリドが用意しておいたものかもしれない。さすがにこれは使うわけにはいかないな。
箱を閉じようと蓋に触れた時、その指輪が光を放った。
「っ!?」
「うわ!」
その光から声が聞こえた気がした。
懐かしい声。優しくて柔らかな囁き。
――もし、また貴方がこの世界に来たときの役に立つように。
その光が収まると、箱の中にあったはずの指輪が俺達の指に嵌っていた。
リド。お前はいつも用意がいいな。先を見越しすぎててちょっと怖いよ。でも助かる。ありがとう。
俺は左手の薬指に付けられた指輪にそっと触れた。
「結婚指輪みたいだね」
「……え、あ!?」
ニッコリ笑う蓮に、俺は遅れて気付いた。
そうか、この指に嵌める意味ってそういうことか。リド、そこまで気を回さなくていいんだよ。さすがに恥ずかしいだろ。
「と、ととととにかくその指輪に魔法陣を刻む。俺とお前にパスを繋いで、指輪を経由して魔力を俺に送るようにするから」
「それで伊織の方は大丈夫なの?」
「俺のこの体は魔王のものだからな。お前が無尽蔵の魔力精製機だとしたら、俺は上限の無いのタンクだ。問題はない」
「そっか。じゃあ二人で一つだね」
「嬉しそうだな」
「だって、この世界での俺達は敵同士だったからさ。こうして勇者と魔王が共闘できるなんて胸熱な展開じゃん」
「……まぁ、分からなくもないけど」
確かにそうだな。前にこの世界に来たときは殺し合う間柄だったんだもんな。
それが今は肩を並べて戦うことができる。これ以上ない頼もしい仲間だ。
俺は蓮の手を取り、魔法陣を展開する。互いの指輪に紋章を刻み、パスを繋いだ。その瞬間から蓮の魔力が流れ込んでくる。
温かい。体中を包み込むような魔力。まるで蓮そのものだな。常に蓮に抱きしめられてるような感覚がして、ドキドキする。
「……ちょっと、慣れるまで時間かかりそう」
「そう?」
「あ、ああ」
「顔赤いけど」
「うるさい、見るな」
人の魔力を受け取るってこんな感じなのか。
なんか、体が痺れてるみたい。ちょっとの刺激だけで過剰に反応してしまう。
早く慣れないと。流れ込んだ魔力を自分のものに変換すればいい。意識を集中させて、水をろ過するイメージで。
集中。集中。集中、したいのに。
「……伊織、平気?」
蓮の手が俺の頬に触れる。
うわ、それヤバい。どこ触られてもビリビリする。
今はそんな場合じゃないのに。急がなきゃいけないのに。
体が、熱い。
「伊織」
「れ、ん」
「そんな顔しないでよ。俺、ずっと我慢してたのに」
蓮がそっとキスをした。
柔らかい感触に背中が震える。
「ガグンラーズに邪魔されてから、ずっと我慢してたんだけどな……」
「ご、めん……すぐに慣れるから」
「うん。でも今はお互いにこのままじゃ戦いに集中できないでしょ?」
そう言って蓮は俺を抱き上げてベッドに運んだ。
一度発散させないと駄目かもしれない。俺はそのまま蓮を受け入れた。
10
あなたにおすすめの小説
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
異世界転生した双子は今世でも双子で勇者側と悪魔側にわかれました
陽花紫
BL
異世界転生をした双子の兄弟は、今世でも双子であった。
しかし運命は二人を引き離し、一人は教会、もう一人は森へと捨てられた。
それぞれの場所で育った男たちは、やがて知ることとなる。
ここはBLゲームの中の世界であるのだということを。再会した双子は、どのようなエンディングを迎えるのであろうか。
小説家になろうにも掲載中です。
ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる
街風
ファンタジー
「お前を追放する!」
ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。
しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
悪役令息ですが破滅回避で主人公を無視したら、高潔な態度だと勘違いされて聖人認定。なぜか溺愛ルートに入りました
水凪しおん
BL
BL小説『銀の瞳の聖者』の悪役令息ルシアンに転生してしまった俺。
原作通りなら、主人公ノエルをいじめ抜き、最後は断罪されて野垂れ死ぬ運命だ。
「そんなの絶対にお断りだ! 俺は平和に長生きしたい!」
破滅フラグを回避するため、俺は決意した。
主人公ノエルを徹底的に避け、関わらず、空気のように生きることを。
しかし、俺の「無視」や「無関心」は、なぜかノエルにポジティブに変換されていく。
「他の人のように欲望の目で見ないなんて、なんて高潔な方なんだ……!」
いじめっ子を視線だけで追い払えば「影から守ってくれた」、雨の日に「臭いから近寄るな」と上着を投げつければ「不器用な優しさ」!?
全力で嫌われようとすればするほど、主人公からの好感度が爆上がりして、聖人認定されてしまう勘違いラブコメディ!
小心者の悪役令息×健気なポジティブ主人公の、すれ違い溺愛ファンタジー、ここに開幕!
異世界転移して美形になったら危険な男とハジメテしちゃいました
ノルジャン
BL
俺はおっさん神に異世界に転移させてもらった。異世界で「イケメンでモテて勝ち組の人生」が送りたい!という願いを叶えてもらったはずなのだけれど……。これってちゃんと叶えて貰えてるのか?美形になったけど男にしかモテないし、勝ち組人生って結局どんなん?めちゃくちゃ危険な香りのする男にバーでナンパされて、ついていっちゃってころっと惚れちゃう俺の話。危険な男×美形(元平凡)※ムーンライトノベルズにも掲載
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる