80 / 80
第二部
最終話 【ありがとう】
しおりを挟む
―――
――
気付けば、俺達は元の世界に戻っていた。
スマホの時計を確認すると、俺らが向こうの世界に行った日から数分しか経ってなかった。
神剣がそうなるようにしてくれたのかな。
「……帰ってきたのか」
「みたい、だね」
「はぁぁぁぁぁ……なんか、一気に疲れた」
「そうだね。でも伊織、ちょっとスッキリした顔してるよ」
蓮にそう言われて、俺は少し恥ずかしくなった。
俺自身も気付いてる。
なんとなく胸の痞えが消えたような気がする。
いじめられた傷がそう簡単に言えるわけない。むしろずっと残るもの。これは一生背負い続けるものだ。
それでも、俺は悲しむだけで終わりたくない。
元の世界に戻った加治がどうなったかなんて俺には関係ない。今アイツがどう思ってるかなんて俺には関係ない。
もう俺には無関係だ。
俺はアイツと違って、前を向く。
今、アイツに言えることは一つ。
ざまぁみろ。
お前は俺が弱いと思って罵り続けていた。俺が下にいると思って優越感に浸っていたんだろう。でも、俺がいつまでも下にいると思うな。
俺は立ち止まらない。
残念だったな。俺には立ち止まった時に背中を押してくれる人がいるんだ。
「蓮」
「うん?」
「ありがとう」
「俺は何もしてないよ。殴り損ねたし」
本気で悔しそうな顔してる。
殴るよりも凄いことしてるんだから良いだろ。
もう、今度こそ本当に二度と向こうの世界に行くこともなくなったんだな。
でもクラッドやリドに会うことも出来た。
何も思い残すことはない。
「あのさ、蓮」
「なに?」
「俺、教師目指してみようかな」
「おー、いいじゃん。似合うと思うよ」
「難しいとは思うけど、俺だからこそ出来ることがあるんじゃないかなって」
いじめのツラさも怖さも知ってるからこそ、出来ることがあると信じたい。
俺は、もっと色んな人と関わっていきたい。
もしかしたら異世界を救うより大変かもしれないけど。
魔法もないこの世界で俺は無力かもしれないけど。
「俺はもう、自分の武器を持ってるつもりだ」
「うん。伊織なら出来るよ」
蓮が俺の頭を撫でてくれる。
少しずつ、一歩ずつ。俺に出来ることをしよう。
俺にはもう、勇気がある。
沢山の人がくれた、俺だけの勇気。
ありがとう、蓮。
ありがとう、リド。
ありがとう、クラッド。
「それじゃあ、気持ち切り替えていこうか。もう勇者も魔王も剣も魔法もないんだからさ」
「そうだな。今日からまた、ありのままの俺達だ」
「じゃあ早速、家帰るね」
「は!?」
「だって、着替え取ってこなきゃ」
「は?」
「だって伊織の家、クリスマスまでご両親いないんでしょ?」
俺は一気に顔が熱くなった。
そうだ。あの日の続きが始まるんだ。
一之瀬伊織として、ここからまたスタートする。
俺はやっと立ち上がったんだ。
「クリスマスの次はお正月だね」
「気が早いよ」
「向こうの世界に行ったときからずっと思ってたんだよ。こっち帰ってきたら何しようかって」
「へぇ、何をしたいんだ」
「沢山あるけど、最初は……あの日の続きかな」
そう言って、蓮は俺を抱きしめて口付けた。
これから先、何十年経ってもお前と一緒にいられたら。
それだけで俺は、前を向ける。お前が俺の勇気なんだ。
だってお前は、俺の勇者。
俺が勝てないのは、たった一人お前だけだ。
―――
――
三学期の始まり。俺は教室のドアの前で深呼吸した。
まずは、初めの一歩を踏むんだ。
勢いよくドアを開けて、大きな声を上げた。
「おはよう!」
そして俺は、新しい一歩を進む。
未来に向かって。
――
気付けば、俺達は元の世界に戻っていた。
スマホの時計を確認すると、俺らが向こうの世界に行った日から数分しか経ってなかった。
神剣がそうなるようにしてくれたのかな。
「……帰ってきたのか」
「みたい、だね」
「はぁぁぁぁぁ……なんか、一気に疲れた」
「そうだね。でも伊織、ちょっとスッキリした顔してるよ」
蓮にそう言われて、俺は少し恥ずかしくなった。
俺自身も気付いてる。
なんとなく胸の痞えが消えたような気がする。
いじめられた傷がそう簡単に言えるわけない。むしろずっと残るもの。これは一生背負い続けるものだ。
それでも、俺は悲しむだけで終わりたくない。
元の世界に戻った加治がどうなったかなんて俺には関係ない。今アイツがどう思ってるかなんて俺には関係ない。
もう俺には無関係だ。
俺はアイツと違って、前を向く。
今、アイツに言えることは一つ。
ざまぁみろ。
お前は俺が弱いと思って罵り続けていた。俺が下にいると思って優越感に浸っていたんだろう。でも、俺がいつまでも下にいると思うな。
俺は立ち止まらない。
残念だったな。俺には立ち止まった時に背中を押してくれる人がいるんだ。
「蓮」
「うん?」
「ありがとう」
「俺は何もしてないよ。殴り損ねたし」
本気で悔しそうな顔してる。
殴るよりも凄いことしてるんだから良いだろ。
もう、今度こそ本当に二度と向こうの世界に行くこともなくなったんだな。
でもクラッドやリドに会うことも出来た。
何も思い残すことはない。
「あのさ、蓮」
「なに?」
「俺、教師目指してみようかな」
「おー、いいじゃん。似合うと思うよ」
「難しいとは思うけど、俺だからこそ出来ることがあるんじゃないかなって」
いじめのツラさも怖さも知ってるからこそ、出来ることがあると信じたい。
俺は、もっと色んな人と関わっていきたい。
もしかしたら異世界を救うより大変かもしれないけど。
魔法もないこの世界で俺は無力かもしれないけど。
「俺はもう、自分の武器を持ってるつもりだ」
「うん。伊織なら出来るよ」
蓮が俺の頭を撫でてくれる。
少しずつ、一歩ずつ。俺に出来ることをしよう。
俺にはもう、勇気がある。
沢山の人がくれた、俺だけの勇気。
ありがとう、蓮。
ありがとう、リド。
ありがとう、クラッド。
「それじゃあ、気持ち切り替えていこうか。もう勇者も魔王も剣も魔法もないんだからさ」
「そうだな。今日からまた、ありのままの俺達だ」
「じゃあ早速、家帰るね」
「は!?」
「だって、着替え取ってこなきゃ」
「は?」
「だって伊織の家、クリスマスまでご両親いないんでしょ?」
俺は一気に顔が熱くなった。
そうだ。あの日の続きが始まるんだ。
一之瀬伊織として、ここからまたスタートする。
俺はやっと立ち上がったんだ。
「クリスマスの次はお正月だね」
「気が早いよ」
「向こうの世界に行ったときからずっと思ってたんだよ。こっち帰ってきたら何しようかって」
「へぇ、何をしたいんだ」
「沢山あるけど、最初は……あの日の続きかな」
そう言って、蓮は俺を抱きしめて口付けた。
これから先、何十年経ってもお前と一緒にいられたら。
それだけで俺は、前を向ける。お前が俺の勇気なんだ。
だってお前は、俺の勇者。
俺が勝てないのは、たった一人お前だけだ。
―――
――
三学期の始まり。俺は教室のドアの前で深呼吸した。
まずは、初めの一歩を踏むんだ。
勢いよくドアを開けて、大きな声を上げた。
「おはよう!」
そして俺は、新しい一歩を進む。
未来に向かって。
31
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(30件)
あなたにおすすめの小説
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
異世界転生した双子は今世でも双子で勇者側と悪魔側にわかれました
陽花紫
BL
異世界転生をした双子の兄弟は、今世でも双子であった。
しかし運命は二人を引き離し、一人は教会、もう一人は森へと捨てられた。
それぞれの場所で育った男たちは、やがて知ることとなる。
ここはBLゲームの中の世界であるのだということを。再会した双子は、どのようなエンディングを迎えるのであろうか。
小説家になろうにも掲載中です。
ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる
街風
ファンタジー
「お前を追放する!」
ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。
しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。
異世界転移して美形になったら危険な男とハジメテしちゃいました
ノルジャン
BL
俺はおっさん神に異世界に転移させてもらった。異世界で「イケメンでモテて勝ち組の人生」が送りたい!という願いを叶えてもらったはずなのだけれど……。これってちゃんと叶えて貰えてるのか?美形になったけど男にしかモテないし、勝ち組人生って結局どんなん?めちゃくちゃ危険な香りのする男にバーでナンパされて、ついていっちゃってころっと惚れちゃう俺の話。危険な男×美形(元平凡)※ムーンライトノベルズにも掲載
悪役令息ですが破滅回避で主人公を無視したら、高潔な態度だと勘違いされて聖人認定。なぜか溺愛ルートに入りました
水凪しおん
BL
BL小説『銀の瞳の聖者』の悪役令息ルシアンに転生してしまった俺。
原作通りなら、主人公ノエルをいじめ抜き、最後は断罪されて野垂れ死ぬ運命だ。
「そんなの絶対にお断りだ! 俺は平和に長生きしたい!」
破滅フラグを回避するため、俺は決意した。
主人公ノエルを徹底的に避け、関わらず、空気のように生きることを。
しかし、俺の「無視」や「無関心」は、なぜかノエルにポジティブに変換されていく。
「他の人のように欲望の目で見ないなんて、なんて高潔な方なんだ……!」
いじめっ子を視線だけで追い払えば「影から守ってくれた」、雨の日に「臭いから近寄るな」と上着を投げつければ「不器用な優しさ」!?
全力で嫌われようとすればするほど、主人公からの好感度が爆上がりして、聖人認定されてしまう勘違いラブコメディ!
小心者の悪役令息×健気なポジティブ主人公の、すれ違い溺愛ファンタジー、ここに開幕!
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
面白かったです!お疲れ様でした!
ご感想ありがとうございます。
最後まで読んでくださってありがとうございました!!
ご感想ありがとうございます。
ちょっと露骨すぎましたね。二部では伊織が自分自身と向き合う話として書いています!
ご感想ありがとうございます。
そう言ってもらえて嬉しいです!!二部は一部より短くなるとは思いますが、最後まで読んでもらえると幸いです!