傭兵魔術師は異世界で英雄を目指す

畑の神様

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1章

情報収集

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 さて、俺は遂に三歳児へとクラスアップした。

 三歳になった俺にできないことは無い。文字も読めるし、言葉も話せる。体だって鍛えられる。

 正直、歩行を解禁した時は家中の皆が大騒ぎして大変な目に合ったが、それもご愛嬌だろう。

 でもまぁそのおかげで今では毎日中庭で走りこんだり、筋トレをしたりし、終わったら本を読んでから魔力を枯渇させて睡眠と、ひたすらこのサイクルを繰り返す日々を送ることができているのだから結果オーライだ。

 そのおかげで最近この年の子供にしては体力も筋肉もだいぶついてきたし、魔力は正直すでに前世の魔力量くらいなら追いつきつつある。

 これなら前世の魔力量を超えるのも時間の問題だろう。
 今では最初に使った身体強化くらいなら一日中でも使える自信がある程だ。

 そして何より人目を気にせずこれらをできるようになったのは大きな収穫だと思う。

 これでついに、まるで年端もいかない子供が親に隠れてAVを見るように足音を気にする日々ともおさらば。

 俺は誰が来ても堂々と室内で本を読むし、筋トレもする!!

 もう俺に怖いものは無い!! 俺最強!!

 …………。

 ……とにかく、俺はそうして日々を過ごしていた。

 情報収集の方も着々と進んでいる。
 一年が地球と同じで365日であることや、曜日のような感覚もしっかりと存在し、魔物や冒険者ギルドと言ったまさにファンタジーな要素がいっぱいであること、金銭の大雑把な価値などだ。

 そして今日も俺はいつも通り、情報収集に精を出そうと本棚の前までやって来ていた。


「さて、今日はどの本を読んでみようか……だいぶこの世界の文字にも慣れてきたし、そろそろ難しいそうな本にも手を出してみるかな?」

 程度の軽い本は既にある程度読み込んだ。
 まぁ内容が簡単ということは一通り読むのも楽ということなのだから、精神が大人の俺があっさりと読み込めるのも当然と言えよう。
 おかげで文字もだいぶ把握できた。
 そろそろ難しめの本に手を出してもいいころ合いだと思う。

 俺はそう思い至って、沢山ある本の中からひとまず手近な所にあったなんとなく分厚さ的に難しい本を手に取ってみた。

 さて、今日はこれにするかな? どれタイトルは……


「なっ……【魔法大全】だとッ!?」


 それを見た瞬間、俺は驚きを隠せず、不覚にも混乱して思わず声を上げてしまった。
 なぜなら、そこに書いてあった文字が魔術ではなく、“魔法”となっていたからだ。


「まさか……この世界に普及しているのは魔術ではなく魔法なのか?
 いや、そんな馬鹿なこと、あり得るはずがない!!」


 魔法を使える者達なんてのは本物の化け物たちばかりだ。
 時空を自在に操り、理を思いのままに捻じ曲げる……そんな化け物たちがこの世界では辺り前のように溢れてるとでも?
 もしそうだとすればお母さんが以前生み出したあの水にもとんでもない神秘が内包されてたってことになるが……そうは見えなかったし……。

 う~ん、このまま考えてても仕方がない、ひとまず中身をのぞいてみるとするか……。

 俺は恐る恐る本を手に取り、パラパラとページを捲っていった。


「なるほど……な……」


 数十分後、俺はざっとではあるが本の内容の把握を終えていた。
 この本に書いてあったことをざっと要約すればこうだ。

 曰く、魔法というものはすでにこの世界に深く根付いているもので、人々は魔法を使って普段から生活している。

 曰く、魔法には稀に例外があるものの、基本的には五つの属性があり、火、水、土、風、無というように分かれている。
 この世界の人の殆どはこの中のどれか一つの属性を生まれながらに保持して、初級の魔法くらいなら割と簡単に使えるようになる。

 曰く、魔法は一人に一つの属性のエレメントを神から与えられ、体内に存在するそれを介することで発動する。

 曰く、無属性とはエレメントを持たない者のことを指し、彼のものは俗に属性魔法と言われる魔法、その一切を使うことができない。
 無属性の者が行使できる魔法はせいぜい身体強化が関の山であり、その力は属性魔法のそれに遠く及ばない、いわゆる神に見捨てられた子である。
 しかし、無属性の者が生まれる確率は非常に低く、そうそう生まれることは無い。

 と、まぁ、こんなところか……だが、その内容に軽く目を通した俺の心中はと言えば、正直拍子抜けだ、というのが一番適当だろう。

 【魔法大全】というそのタイトルを見て、俺が真っ先に想像したのは元の世界における魔法である。
 それを修得した者達は魔術師の間では賢者と呼ばれるが、そこまで至った者達には常識やセオリーというものの一切は通用しない。
 斬られても時空を巻き戻すことでその場で蘇ったり、炎に触れれば熱く、焼かれるという理そのものを無理やり冷たく、涼しいというように捻じ曲げたりする……そんな奇跡の御業。
 それこそが俺の世界における魔法というものなのだ。

 しかし、これは違う。
 時空を歪めることもできないし、ましてや理をいじくるなど不可能。
 この世界における魔法とは、いくつかの違いはあれど、所詮ただの魔術に相違ない。
 それもそう高くないレベルのものだ。

 だいたい全ての魔術をいくつかの属性という枠に収めてしまおうなどという時点で既にたかが知れている。
 恐らく、エレメントというのは属性元素エレメントのことを言っているのだろうが、それを通さなければ魔術を使えないなんてことは無い。
 魔術に必ず属性があるとは限らず、また魔術というものは、例え一見同じ属性のおなじものに見えても、そこにどんな意味や、また何かとの関連性を付与することによって、その効果は大きく違って来るものなのだ。

 例えば、ただの炎を出せばそれはただの火に過ぎないが、そこにプロメテウスがゼウスから簒奪したとする原初の火の伝承を絡めることにより、その炎は一瞬にして一時的に神の炎としての力を手に入れることで、その存在そのものを飛躍的に昇華させ、その炎に触れたありとあらゆるものを一瞬にして灰燼と化す程の代物へと変化させるといった具合だ。

 もちろん、そんなことをするためにはそれ相応の特別な依代やそれなりの技術と知識が必要になどが必要になってくるわけで、正直俺には縁のないようなものなのだが……それはまぁ今はいいだろう。

 とにかく、魔術というものはそれほど同じ属性をとっても、その性質は全く異なってくるものなのだ。
 要はその魔術がどのような手順を踏んで発動されたかというその過程こそが重要なのである。

 それをこの世界は何を思ったか一緒くたに纏めあげてしまった。
 恐らくこの世界における魔法というものは、より巨大なほど強く、より火力などが強い程いいという陳腐なものなのだろう。

「全くあきれたものだ……。
 これは最早、神秘の法というものをなめきっているとしか思えないな。
 いくら俺でもこれは無いと思っちまうレベルだぞ、これ……?
 …………はぁ」


 俺も修業と研鑽、経験こそ積んだものの、実際は才能が無く、その多くを使いこなせなかった程度の魔術師だが、流石にこれにはため息が出てしまう。

 さっきまで魔法と聞いて恐れおののいていた自分が馬鹿らしくなってきた。

 ……だが、とは言ってもだ。さんざん言ったがそれでも本を読むだけではわからない物もある。
 この本を読んだだけで、この世界の魔術体系そのものが完全に前世のものより下だと決めつけるのはいささか早計だろう。


「いつか機会があればこの世界の魔術について、もう少し深く学んでみたいものだな。
 もしかすると何か俺の中にも発展があるかもしれないし」


 と、俺は若干無理矢理にこの世界の魔法に対する希望を作りつつ、本を読み進めていった……。

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