グッバイシンデレラ

かかし

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ヤることヤって女を半ば追い出すように帰した後、俺はスマホに入っていたメッセージを見て愕然とした。
それは俺の恋人からのモノで、俺の浮気を責めるような内容………ではなく、寧ろ俺の恋人だった男は自分が浮気相手と思い込み謎過ぎる謝罪の言葉と共についでのように別れの言葉が混ざったメッセージだった。

意味が分からない。
浮気しておいてなんだが、俺はアイツをセフレだと思ったことは一度もない。
恋人だとちゃんと認識していたし、確かに今セックスをしていたけれどそれは浮気のつもりはけしてなくて過去の遊びを清算するもので、だから―――

頭の中が混乱する。
何を言っても言い訳にすらならないのは分かっているけれど、でも俺はこの期に及んで彼を手放したくないと思っていた。

一目惚れだった。
どこにでも居るような普通の男に、ノンケの俺が一目惚れした。
最初は認めたくなどなかったけれど、彼に近付く男にも女にも嫉妬して怒鳴り込みたくなる衝動を抑え込む内に、俺は半ば諦めるように彼への想いを認めた。

偶然を装って距離を詰めていき、彼の俺に対する警戒心をヒシヒシと感じながらそれでも必死に宥めに宥めて。
ほぼ無理矢理友人の位置をもぎ取ると、今度は彼の家に転がり込んで甘えた。
最初は笑って流してくれたけれど、どんどん表情が苦しそうになってきて、ややあって自分はゲイだからもう来ないで欲しいと告げられた。
その時の歓喜たるや、言うまでもないだろう。
好みのタイプじゃないかもしれない、けれども、俺は彼の恋人になれるチャンスがあるんだと!

『なら俺と付き合ってよ』

俺の言葉に、彼は驚いたように目を見開き、やがて悲しそうに首を横に振った。
振られたんだ、俺は。
でも諦めたくなかった。
だってそうだろう?
好きな人から意識してもらえる性別で、恋人が居るのかと聞けば居なくて。
じゃあ俺で良くないか?
好きな人が居るのかと聞けば濁されたけど、でも付き合うまではいってないんだろう?
恋人の立場は早い者勝ちだ。
遠慮していたらいつまで経っても俺は彼の何者になることもできない。
彼に好いてもらえたからというだけで、何もしないソイツが彼の恋人になれるだなんて耐えきれなかった。

その日から必死に口説いて口説いて口説き落として、一週間後に漸く頷いてもらうことができた。
誰とも熱を交わしたことがない彼の、ファーストキスも処女も全部俺が貰えた。
初めてであることに拘りはなかったけれど、彼に関しては別だった。
初めての恋人、初めて男。
彼の初めては全部俺が良いって思ってたから、同棲だってした。
このままずっと一緒に。
初めてばかりじゃ足りない。
俺が最後の男でないと嫌だ。

頭にチラつくのはあの日彼が濁した【好きな人】の存在。

このままだとダメだ。努力しないといけない。
そうじゃないと、俺は彼の最後の男にはなれない。
そこでふと思い出したのは、俺は今までの遊び相手を精算していなかったということだ。
不誠実な男を彼は嫌がるかもしれない。
だからちゃんと別れ話を全員に持ちかけた。
セフレだったのはお互い様だったからほぼ全員スムーズにいったのに、あの女だけはそうはいかなかった。

俺達の部屋で最後に抱けと、そうじゃないと彼に全部ぶちまけると言われたから仕方なく従った。

思い出せば、冷静になってくる。
二人の部屋に女連れ込んで抱いた男の、どこが誠実なんだ?
ゲイの彼とノンケでしかもヤリチンで有名だった俺。
女と彼、恋人はどちらでしょう?
100人聞けば100人が女が恋人だと答えるだろう。

それでも、どうしても。
別れたくない。
努力するから、だから恋人面させてください。
そんな想いを込めながら何度も電話をかける。

『お呼び出ししましたが、お出になりません』
『お呼び出ししましたが、電波の届かない場所に居られるか、電源が入っていないためお出になりません』

自動音声が告げる言葉が、まるで死刑宣告のように聞こえた。
多分、電源を切られているのだろう。
心臓が痛い。
蹲って泣きながら、それでも俺は彼に繋がるまで電話をかけ続けた。
メッセージもたくさん送った。
着拒されてるかもしれなかったから、オンライン通話も繋いだ。
どれもこれも、返事はなかった。

どうかこれが全て、夢でありますように。
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