うるせぇ!僕はスライム牧場を作るんで邪魔すんな!!

かかし

文字の大きさ
172 / 405
7歳の秋

君を感じる

《ただいま。》

あの後、結局起きてしまったスライムとホワイトスライムが、ずるい!自分達も!と言わんばかりに器用に首無し妖精騎士デュラハンのマントを引き摺りながら寄って来たので三匹と一緒にマントをかぶってうとうととし始めた時、洞窟内に待ち侘びていた声が響いて目が覚めた。
………フォレスだけ。
スライム達は安全だと言わんばかりに無防備に眠っている。
大丈夫だろうか、この子達。

「おかえり、首無し妖精騎士デュラハン。」
《ただいま。良い子にしてたか?………少し熱が出てるな。》

首無し妖精騎士デュラハンは愛馬と共に洞窟の中に入ると、真っ先にフォレスの所へと歩み寄り跪いて頭を撫でてくれた。
思えば大人に頭を撫でられたのなんて、本当に幼い頃。
それこそまだミルコが居た頃じゃないだろうか。
居なくなった頃はもうマナー教育が厳しくなった頃で、そうなると基本的に貴族の子供は親からのボディタッチは無くなる。
甘えを失くすためだ。
………その割に、一番下の弟はたっぷり甘やかされているように思うが。

《フォレス?大丈夫か?》
「あっ、うん。少しぼうっとしていただけだ。」

ふと回想していたら首無し妖精騎士デュラハンが心配そうな声色で声を掛けたので、フォレスは慌てて首を横に振った。
考え事をしていただけで、心配されるようなことではない。
吐き気がする程痛いけれど、我慢出来ない訳でもない。

《客人が来てるんだ。フォレスにも少し対応してもらいたんだが………無理そうなら止めておくぞ?》
「寝たままで構わないなら、大丈夫だ。外で待たせているのか?」

それならば早く洞窟の中に入れないと、誰であれ失礼だろう。
元貴族としての感覚でそう言ったが、その実、はモンスターだと思っていた。
首無し妖精騎士デュラハンと同じように人型、或いはコミュニケーションが人間と同じタイプのモンスターだと。

《連れてきてなんだが、無理はしないように。》
「うん。」

首無し妖精騎士デュラハンはフォレスにそう言い含めると、そっと頭を撫でてから外へ向かった。
恐らく、客人を呼びに行ったのだろう。
未だにすよすよと眠っているスライムを撫でていると、首無し妖精騎士デュラハンの愛馬が自分も撫でろと言わんばかりに鼻先を寄せてきた。
鼻息が擽ったい。
けれど、嫌ではなかった。
少し温かい気持ちでその鼻先を撫でていたから、正直油断していた。

「やっぱり洞窟だと湿気がすごいな。」
「きのう、あめだったもんね。」
「すごかったもんねー。」
「………えっ?」

どう聞いてもモンスターではなく人間の声。
その中で妙に心地好い声も聞こえて、心臓が変な鼓動のあげ方をしている。
どう聞いても子供の声なのに、ずっと聞いていたい。
首無し妖精騎士デュラハンの声と同じ位、安心する。
道さえ間違えなければ、この声の主はずっと味方で居てくれる。
そんな確信を抱けるような、声。
何故だろうか。
泣きたい程に、嬉しかった。
感想 62

あなたにおすすめの小説

スライム牧場番外編

かかし
BL
「うるせぇ!僕はスライム牧場を作るんで邪魔すんな!!」の番外編です。 思いついたネタを、思いつくままに。 完全不定期更新なのでご容赦ください。

悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています

かきんとう
恋愛
 王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。  磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。  その中心に、私は立っていた。  ――今日、この瞬間のために。 「エレノア・フォン・リーベルト嬢」  高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。

空港清掃員58歳、転生先の王宮でも床を磨いたら双子に懐かれ、国王に溺愛される

木風
恋愛
羽田空港で十五年、黙々と床を磨いてきた清掃員・田中幸子(58)は事故死し、没落寸前の子爵令嬢エルシアとして転生する。 婚約破棄の末に家を追われた彼女が選んだのは、王宮の清掃員――前世の技で空気まで変わるほど磨き上げていく仕事だった。 やがて母を亡くした双子王子王女に懐かれ、荒れた執務室の主である喪中の国王とも距離が縮まり……。 「泣くなら俺の胸で」――床も心も磨き直す、清掃令嬢の溺愛成り上がり。

人気アイドルの俺、なぜかメンバー全員に好かれてます

七瀬
BL
デビュー4年目の人気アイドルグループ「ECLIPSE(エクリプス)」に所属する芹沢 美澄(せりざわみすみ)は、昔からどこか抜けていてマイペースな性格。 歌もダンスも決して一番ではないはずなのに、なぜかファンからもメンバーからも目を離されない存在だった。 世話焼きな幼なじみ、明るく距離の近い同い年、しっかり者で面倒見のいい年上、掴みどころのない自由人、そして無言で隣にいるリーダー——。 気づけば、美澄の周りにはいつも誰かがいて、当たり前のように甘やかされていく。

悪役の僕 何故か愛される

いもち
BL
BLゲーム『恋と魔法と君と』に登場する悪役 セイン・ゴースティ 王子の魔力暴走によって火傷を負った直後に自身が悪役であったことを思い出す。 悪役にならないよう、攻略対象の王子や義弟に近寄らないようにしていたが、逆に構われてしまう。 そしてついにゲーム本編に突入してしまうが、主人公や他の攻略対象の様子もおかしくて… ファンタジーラブコメBL シリアスはほとんどないです 不定期更新

誘拐された公爵令嬢ですが、なぜか皇帝に溺愛されています』

富士山麓
恋愛
舞踏会で王太子から婚約破棄を告げられそうになった瞬間―― 目の前に現れたのは、馬に乗った仮面の皇帝だった。 そのまま攫われた公爵令嬢ビアンキーナは、誘拐されたはずなのに超VIP待遇。 一方、助けようともしなかった王太子は「無能」と嘲笑され、静かに失墜していく。 選ばれる側から、選ぶ側へ。 これは、誰も断罪せず、すべてを終わらせた令嬢の物語。

婚約破棄されたので田舎の一軒家でカフェを開くことにしました。楽しく自由にしていたら居心地が良いとS級冒険者達が毎日通い詰めるようになりました

緋月らむね
ファンタジー
私はオルレアン侯爵令嬢のエルティア。十四歳の頃、家の階段を踏み外して頭を打った衝撃で前世を思い出した。    前世での名前は坂島碧衣(さかしまあおい)。祖父母の引退後、祖父母の経営していた大好きなカフェを継ぐつもりでいたのに就職先がブラック企業で過労の挙句、継ぐ前に死んでしまった。そして、自分が息抜きでやっていた乙女ゲーム「星屑のカンパニー」の悪役令嬢、オルレアン侯爵令嬢エルティアに転生してることに気がついた。  エルティアは18歳の舞踏会で婚約破棄を言い渡される。それだけならまだしも、婚約者から悪役令嬢として断罪され、婚約破棄され、父親から家を追い出され、よからぬ輩に襲われて殺される。  前世だってやりたかったことができずに死んでしまったのに、転生してもそんな悲惨な人生を送るなんて、たまったもんじゃない!!それなら私は前世継ごうと思っていた祖父母のやっていたようなカフェを開いて楽しく自由な人生を送りたい。  森が開けた自然豊かな場所で念願のカフェを侍女のシサとともに開いて楽しく自由にカフェをやっていたら、個性豊かなS級冒険者たちが常連として私のカフェにやってくるようになりました!