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7歳の冬
いや、知らん
「い………いじめがあったなんて聞いてない!」
「言ってないからな。………ま、そんなこんなで村に妻と一緒に戻って来たんだが………」
ウィルはそこまで言って、手紙をアーサーに渡した。
見ても良いと判断し、アーサーは中身を見る。
そこに書かれていたのは、一応の謝罪と復職要請だった。
謝罪があるだけマシなのか?と思いたくはなるが、中身を読み進めていくと不快感が募る。
結局、市民が憧れる騎士像を、物語のような騎士のような立ち振る舞いをウィルがやれてしまった為に、王都に住む者達の理想が高くなり残っている騎士達は立ち振る舞い一つ一つを頭の先から爪先まで常に見られることとなった。
そしてそもそも、ウィルが居ないことを問題視された。
何故居ないのか。
何処に行ったのか。
そもそも彼と彼の番をどうしてあんな安アパートに住まわせていたのか。
重箱の隅を突くような、ともすれば言い掛かりのような噂がウィルが去って半年で瞬く間に回り始めた。
最初は大したことではないと放っていたらしい。
実際、去年までは何も手紙が来なかったくらいだし。
だがウィルは自分自身をただの騎士団の一員としてしか思っておらず、その評価を王都の住民達も同じように思っているとばかり思っていたので特に何も言うことなく去って行った。
それが逆に憶測に憶測を呼んでしまい、有能なウィルを嫉んだ無能の貴族が追い出したというなんとも事実に近い噂が尾鰭に背鰭にとつけて元気に泳ぎ始めたのだ。
それこそもう、放っておけばおく程悪化を繰り返し取り返しがつかない程に成長した。
だから取り敢えず彼らを落ち着かせる為にも戻って来て欲しいと、そういうことだった。
けれどもそんなの、ウィルにはどうだって良い話だ。
幼馴染で同じ村に住むクィル神官にとっても。
というかクィル神官自身、まだ見習いとして王都に住んでいた頃に王都の騎士団の一部の団員からセクハラ紛いなことをされてから王都騎士団にはあまり良い印象を持っていないのに何故協力してやらなくてはいけないのか。
《随分と、自分勝手であり不器用な話だな。それこそ辞めた人間のことなんて、好き勝手捏造でもすれば良いだろうに。》
ウィルが悪いのだと、印象操作をすれば良いとも思ってしまう。
どうせ王都の人間はいくら侯爵領とはいえこんな田舎に来ることなんてないし、逆にウィルも王都に行くことはないのだからいくらでもやりようがある。
それなのにわざわざ呼び寄せるなんて………阿保か?というのがアーサーの率直な意見だった。
「ウィルさんが悪意に晒されろと?」
《王都の悪意なんざ、ここには届かんよ。それに、知識がある生き物は刺激と話題に飢えている。そんなに長くは続かない。》
正直な話、妖精騎士の間でもそうだったのだから人間だってそうだろう。
人の噂も七十五日。
新しい話題が起きれば、すぐに終わる。
実際、今否定の噂を流さなかったから無駄に神格化され刺激され続けているだけで、平民だから所詮は………みたいな噂ならば途端に新鮮味をなくして消せていた筈だ。
「俺もそう思うんだがな。どうもそういう話でもないらしい。」
ウィルはそう言って手紙の後半を指した。
ちなみに何故中身を知っているかというと、1年前と変化が無いだろうと思っているからだ。
実際、言い回しと必死さが違うだけで中身はそう変わらない。
「1年前に王族が、獣人の有能性に目を付けた。その時に、騎士団に獣人のハーフが居たことを話題に出したんだ。」
その上で、住民達の噂が耳に入ってしまった。
つまり今、騎士団は上から下からと突かれての大騒動らしい。
《いや………知らん………》
真剣に聞いて損した。
そう思うくらいに、どうでも良い話だった。
「言ってないからな。………ま、そんなこんなで村に妻と一緒に戻って来たんだが………」
ウィルはそこまで言って、手紙をアーサーに渡した。
見ても良いと判断し、アーサーは中身を見る。
そこに書かれていたのは、一応の謝罪と復職要請だった。
謝罪があるだけマシなのか?と思いたくはなるが、中身を読み進めていくと不快感が募る。
結局、市民が憧れる騎士像を、物語のような騎士のような立ち振る舞いをウィルがやれてしまった為に、王都に住む者達の理想が高くなり残っている騎士達は立ち振る舞い一つ一つを頭の先から爪先まで常に見られることとなった。
そしてそもそも、ウィルが居ないことを問題視された。
何故居ないのか。
何処に行ったのか。
そもそも彼と彼の番をどうしてあんな安アパートに住まわせていたのか。
重箱の隅を突くような、ともすれば言い掛かりのような噂がウィルが去って半年で瞬く間に回り始めた。
最初は大したことではないと放っていたらしい。
実際、去年までは何も手紙が来なかったくらいだし。
だがウィルは自分自身をただの騎士団の一員としてしか思っておらず、その評価を王都の住民達も同じように思っているとばかり思っていたので特に何も言うことなく去って行った。
それが逆に憶測に憶測を呼んでしまい、有能なウィルを嫉んだ無能の貴族が追い出したというなんとも事実に近い噂が尾鰭に背鰭にとつけて元気に泳ぎ始めたのだ。
それこそもう、放っておけばおく程悪化を繰り返し取り返しがつかない程に成長した。
だから取り敢えず彼らを落ち着かせる為にも戻って来て欲しいと、そういうことだった。
けれどもそんなの、ウィルにはどうだって良い話だ。
幼馴染で同じ村に住むクィル神官にとっても。
というかクィル神官自身、まだ見習いとして王都に住んでいた頃に王都の騎士団の一部の団員からセクハラ紛いなことをされてから王都騎士団にはあまり良い印象を持っていないのに何故協力してやらなくてはいけないのか。
《随分と、自分勝手であり不器用な話だな。それこそ辞めた人間のことなんて、好き勝手捏造でもすれば良いだろうに。》
ウィルが悪いのだと、印象操作をすれば良いとも思ってしまう。
どうせ王都の人間はいくら侯爵領とはいえこんな田舎に来ることなんてないし、逆にウィルも王都に行くことはないのだからいくらでもやりようがある。
それなのにわざわざ呼び寄せるなんて………阿保か?というのがアーサーの率直な意見だった。
「ウィルさんが悪意に晒されろと?」
《王都の悪意なんざ、ここには届かんよ。それに、知識がある生き物は刺激と話題に飢えている。そんなに長くは続かない。》
正直な話、妖精騎士の間でもそうだったのだから人間だってそうだろう。
人の噂も七十五日。
新しい話題が起きれば、すぐに終わる。
実際、今否定の噂を流さなかったから無駄に神格化され刺激され続けているだけで、平民だから所詮は………みたいな噂ならば途端に新鮮味をなくして消せていた筈だ。
「俺もそう思うんだがな。どうもそういう話でもないらしい。」
ウィルはそう言って手紙の後半を指した。
ちなみに何故中身を知っているかというと、1年前と変化が無いだろうと思っているからだ。
実際、言い回しと必死さが違うだけで中身はそう変わらない。
「1年前に王族が、獣人の有能性に目を付けた。その時に、騎士団に獣人のハーフが居たことを話題に出したんだ。」
その上で、住民達の噂が耳に入ってしまった。
つまり今、騎士団は上から下からと突かれての大騒動らしい。
《いや………知らん………》
真剣に聞いて損した。
そう思うくらいに、どうでも良い話だった。
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