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7歳の冬
帰る場所
どいつもこいつも。
恋だの愛だので浮かれやがって………!
ナチオルド子爵令息はギリギリと歯噛みをしながら、忌々しげにウィルを睨んだ。
何で俺なんだよと思いながらも、ウィルは黙って肩を竦めた。
「朝早くに悪いな。」
《いや、もうどうせなら準備してホワイトスライムを連れて行こうかという話になったから、大丈夫だ。》
どうせ神殿をまともな使い方をしてないだろう。
ただでさえボロボロなのに更にボロボロになっている可能性が高いので、じゃあもうこの時間に起きたついでに掃除をしようかという話にもなった。
勿論、寒いのでホワイトスライムは一度家に帰すが。
とはいえ、騎士団が居るのであれば掃除も後回しにした方が良いかもしれない。
戦力は、必要だろうから。
《スライムとブルースライムはアムルと寝ているから、少しの間頼む。起きるまでには一度戻る予定ではあるが。》
「構わんぞ。どうせ掃除もするんだろ?」
ウィルはそうは言ったものの、そういう訳にはいかないだろう。
首は無くとも騎士達を睨みつければ、下っ端と思わしき騎士は怯えたように肩を震わせた。
ナチオルド子爵令息もサッと顔を青褪めて怯えた。
甘ったれだとはいえ貴族子息なんだから表情に出すな。
《………いや、今日はすぐ戻る。》
離れる時間が長ければ長い程、何か仕出かしそうな気がする。
ウィルもそれを分かっているから、敢えてそういう会話をした。
正直な話、家の中には大人よりも子供の方が多い。
人質に取られてしまう可能性も、怪我を負ってしまう可能性がある。
「じゃあ朝飯作って待っとくわ。」
二人並んで洗面所に向かうのを見送って、ウィルは手を振った。
………首が無いのに、洗面所で何するんだ?と思ったけど口には出すまい。
多分、ただクィル神官に引きずられて行っただけだろうから。
「………ナチオルド子爵令息。」
「なんだ!」
「俺は、息子達が大事なんですよ。」
誰一人血の繋がりはない。
しかもニール以外は皆、モンスターだ。
それでも俺にとっては最愛の子供達であり、シェルニーニャの忘れ形見でもある。
「息子達は、この村だから元気に育っているのです。」
ニールとシグルドはあの春の日まではたった二人だけで生きていた。
ウィルと出会わなかったら、ずっとずっと二人だけで生きていくつもりだったろう。
ヘルギはもしかしたら飢えて死んでしまっていたかもしれない。
そうじゃなくても、慣れない環境に弱って次の春を迎えられなかったかもしれない。
ハームンドだって、あんなに小さく弱く警戒心が薄かったら他のモンスターにあっさりと捕食されていただろう。
それか、闇妖精達に嬲り殺されていたか。
「あの子達が村を出たいと言うのならば見送ってやりたいとは思いますが………」
ウィルは言葉を止め、目を伏せた。
もしも、もしもニールが村を出たいと言ったら。
それだけでウィルはこの広い家に一人きりになるのだろう。
それはひどく寂しいとは思うけれど、父親としては受け入れなければならないだろう。
「そうだとしても、俺はこの村で、あの子達の帰る場所になれたらと思っています。」
自分の父と母のように。
嫌なことがあった時、うんざりしたようなことがあった時。
この家に戻って癒されたいと思ってくれれば、それが何よりも幸せだ。
恋だの愛だので浮かれやがって………!
ナチオルド子爵令息はギリギリと歯噛みをしながら、忌々しげにウィルを睨んだ。
何で俺なんだよと思いながらも、ウィルは黙って肩を竦めた。
「朝早くに悪いな。」
《いや、もうどうせなら準備してホワイトスライムを連れて行こうかという話になったから、大丈夫だ。》
どうせ神殿をまともな使い方をしてないだろう。
ただでさえボロボロなのに更にボロボロになっている可能性が高いので、じゃあもうこの時間に起きたついでに掃除をしようかという話にもなった。
勿論、寒いのでホワイトスライムは一度家に帰すが。
とはいえ、騎士団が居るのであれば掃除も後回しにした方が良いかもしれない。
戦力は、必要だろうから。
《スライムとブルースライムはアムルと寝ているから、少しの間頼む。起きるまでには一度戻る予定ではあるが。》
「構わんぞ。どうせ掃除もするんだろ?」
ウィルはそうは言ったものの、そういう訳にはいかないだろう。
首は無くとも騎士達を睨みつければ、下っ端と思わしき騎士は怯えたように肩を震わせた。
ナチオルド子爵令息もサッと顔を青褪めて怯えた。
甘ったれだとはいえ貴族子息なんだから表情に出すな。
《………いや、今日はすぐ戻る。》
離れる時間が長ければ長い程、何か仕出かしそうな気がする。
ウィルもそれを分かっているから、敢えてそういう会話をした。
正直な話、家の中には大人よりも子供の方が多い。
人質に取られてしまう可能性も、怪我を負ってしまう可能性がある。
「じゃあ朝飯作って待っとくわ。」
二人並んで洗面所に向かうのを見送って、ウィルは手を振った。
………首が無いのに、洗面所で何するんだ?と思ったけど口には出すまい。
多分、ただクィル神官に引きずられて行っただけだろうから。
「………ナチオルド子爵令息。」
「なんだ!」
「俺は、息子達が大事なんですよ。」
誰一人血の繋がりはない。
しかもニール以外は皆、モンスターだ。
それでも俺にとっては最愛の子供達であり、シェルニーニャの忘れ形見でもある。
「息子達は、この村だから元気に育っているのです。」
ニールとシグルドはあの春の日まではたった二人だけで生きていた。
ウィルと出会わなかったら、ずっとずっと二人だけで生きていくつもりだったろう。
ヘルギはもしかしたら飢えて死んでしまっていたかもしれない。
そうじゃなくても、慣れない環境に弱って次の春を迎えられなかったかもしれない。
ハームンドだって、あんなに小さく弱く警戒心が薄かったら他のモンスターにあっさりと捕食されていただろう。
それか、闇妖精達に嬲り殺されていたか。
「あの子達が村を出たいと言うのならば見送ってやりたいとは思いますが………」
ウィルは言葉を止め、目を伏せた。
もしも、もしもニールが村を出たいと言ったら。
それだけでウィルはこの広い家に一人きりになるのだろう。
それはひどく寂しいとは思うけれど、父親としては受け入れなければならないだろう。
「そうだとしても、俺はこの村で、あの子達の帰る場所になれたらと思っています。」
自分の父と母のように。
嫌なことがあった時、うんざりしたようなことがあった時。
この家に戻って癒されたいと思ってくれれば、それが何よりも幸せだ。
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