うるせぇ!僕はスライム牧場を作るんで邪魔すんな!!

かかし

文字の大きさ
238 / 405
7歳の冬

帰る場所

どいつもこいつも。
恋だの愛だので浮かれやがって………!
ナチオルド子爵令息はギリギリと歯噛みをしながら、忌々しげにウィルを睨んだ。
何で俺なんだよと思いながらも、ウィルは黙って肩を竦めた。

「朝早くに悪いな。」
《いや、もうどうせなら準備してホワイトスライムを連れて行こうかという話になったから、大丈夫だ。》

どうせ神殿をまともな使い方をしてないだろう。
ただでさえボロボロなのに更にボロボロになっている可能性が高いので、じゃあもうこの時間に起きたついでに掃除をしようかという話にもなった。
勿論、寒いのでホワイトスライムは一度家に帰すが。
とはいえ、騎士団が居るのであれば掃除も後回しにした方が良いかもしれない。
から。

《スライムとブルースライムはアムルと寝ているから、少しの間頼む。起きるまでには一度戻る予定ではあるが。》
「構わんぞ。どうせ掃除もするんだろ?」

ウィルはそうは言ったものの、そういう訳にはいかないだろう。
首は無くとも騎士達を睨みつければ、下っ端と思わしき騎士は怯えたように肩を震わせた。
ナチオルド子爵令息もサッと顔を青褪めて怯えた。
甘ったれだとはいえ貴族子息なんだから表情に出すな。

《………いや、今日はすぐ戻る。》

離れる時間が長ければ長い程、何か仕出かしそうな気がする。
ウィルもそれを分かっているから、敢えてそういう会話をした。
正直な話、家の中には大人よりも子供の方が多い。
人質に取られてしまう可能性も、怪我を負ってしまう可能性がある。

「じゃあ朝飯作って待っとくわ。」

二人並んで洗面所に向かうのを見送って、ウィルは手を振った。
………首が無いのに、洗面所で何するんだ?と思ったけど口には出すまい。
多分、ただクィル神官に引きずられて行っただけだろうから。

「………ナチオルド子爵令息。」
「なんだ!」
「俺は、が大事なんですよ。」

誰一人血の繋がりはない。
しかもニール以外は皆、モンスターだ。
それでも俺にとっては最愛の子供達であり、シェルニーニャの忘れ形見でもある。

「息子達は、この村だから元気に育っているのです。」

ニールとシグルドはあの春の日まではたった二人だけで生きていた。
ウィルと出会わなかったら、ずっとずっと二人だけで生きていくつもりだったろう。
ヘルギはもしかしたら飢えて死んでしまっていたかもしれない。
そうじゃなくても、慣れない環境に弱って次の春を迎えられなかったかもしれない。
ハームンドだって、あんなに小さく弱く警戒心が薄かったら他のモンスターにあっさりと捕食されていただろう。
それか、闇妖精パープルフェアリー達に嬲り殺されていたか。

「あの子達が村を出たいと言うのならば見送ってやりたいとは思いますが………」

ウィルは言葉を止め、目を伏せた。
もしも、もしもニールが村を出たいと言ったら。
それだけでウィルはこの広い家に一人きりになるのだろう。
それはひどく寂しいとは思うけれど、父親としては受け入れなければならないだろう。

「そうだとしても、俺はこの村で、あの子達の帰る場所になれたらと思っています。」

自分の父と母のように。
嫌なことがあった時、うんざりしたようなことがあった時。
この家に戻って癒されたいと思ってくれれば、それが何よりも幸せだ。
感想 62

あなたにおすすめの小説

スライム牧場番外編

かかし
BL
「うるせぇ!僕はスライム牧場を作るんで邪魔すんな!!」の番外編です。 思いついたネタを、思いつくままに。 完全不定期更新なのでご容赦ください。

人気アイドルの俺、なぜかメンバー全員に好かれてます

七瀬
BL
デビュー4年目の人気アイドルグループ「ECLIPSE(エクリプス)」に所属する芹沢 美澄(せりざわみすみ)は、昔からどこか抜けていてマイペースな性格。 歌もダンスも決して一番ではないはずなのに、なぜかファンからもメンバーからも目を離されない存在だった。 世話焼きな幼なじみ、明るく距離の近い同い年、しっかり者で面倒見のいい年上、掴みどころのない自由人、そして無言で隣にいるリーダー——。 気づけば、美澄の周りにはいつも誰かがいて、当たり前のように甘やかされていく。

妹に婚約者を取られるなんてよくある話

龍の御寮さん
BL
ノエルは義母と妹をひいきする父の代わりに子爵家を支えていた。 そんなノエルの心のよりどころは婚約者のトマスだけだったが、仕事ばかりのノエルより明るくて甘え上手な妹キーラといるほうが楽しそうなトマス。 結婚したら搾取されるだけの家から出ていけると思っていたのに、父からトマスの婚約者は妹と交換すると告げられる。そしてノエルには父たちを養うためにずっと子爵家で働き続けることを求められた。 さすがのノエルもついに我慢できず、事業を片付け、資産を持って家出する。 家族と婚約者に見切りをつけたノエルを慌てて追いかける婚約者や家族。 いろんな事件に巻き込まれながらも幸せになっていくノエルの物語。 *ご都合主義です *更新は不定期です。複数話更新する日とできない日との差がありますm(__)m

記憶を無くしたら家族に愛されました

レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない… 家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…

愛され方を教えて

あちゃーた
BL
主人公リハルトは自分を愛さなかった元婚約と家族のために無惨に死んだ…はずだった。 次に目が覚めた時、リハルトは過去に戻っていた。 そこは過去のはずなのにどこかおかしくて…

妖精です、囲われてます

うあゆ
BL
僕は妖精 森で気ままに暮らしていました。 ふと気づいたら人間に囲まれてました。 でもこの人間のそばはとても心地いいし、森に帰るタイミング見つからないなぁ、なんて思いながらダラダラ暮らしてます。 __________ 妖精の前だけはドロ甘の冷徹公爵×引きこもり妖精 なんやかんやお互い幸せに暮らします。

死ぬだけの悪役令息に転生したら、待っていたのは攻略対象達からの溺愛でした。

きうい
BL
 病でで死んでしまった優は、気が付いたら読んでいた小説の悪役令息として転生していた。    それもどのルートでも十五歳という歳になると、死ぬ運命にある悪役———フィオレン・オーレリウス。  前世で家族に恵まれず、家族愛とは程遠い世界で生きてきた優は、愛されたいという願望を捨て、ひとりで生きることを決意する。  しかし、家族に対して表情と感情を隠し、言葉も発さず、一人で生きて行く術を身につけようと家族から距離をとるフィオレンとは裏腹に、家族や攻略対象達は異常なほどの愛を注ぐ。  フィオレンの知らない所で、小説のシナリオとは正反対の道を辿ることになるも、愛に無頓着で無自覚なフィオレンは溺愛されていき………?