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7歳の冬
それは劣等感
―――ナチオルド子爵令息には、優秀な父と兄が居た。
二人には別にそんなつもりはないだろうけれど、それでも二人の立ち振る舞いがいちいち彼の癪に障った。
だって周りは、いつも比較してくるから。
父ができるから、兄ができるから。
彼のやることなすこと全部、比較され落とされ続けた。
そうしてコネで入った騎士団ですら、同期入団したウィルに比べられる。
ナチオルド子爵令息的には、努力しているのだ。
それが実らなかっただけ。
またはその努力の天井がウィルにとっては床でしかなかったという、そういうよくある話なだけ。
ナチオルド子爵令息自身、騎士団の中で可愛がられては、いた。
けれども努力については、一度たりとも褒められたことはなかった。
………あのスライムですら、褒められているのに。
ナチオルド子爵令息はパープルスライムにそんな嫉妬の念を抱いた。
このパープルスライムが赤ん坊なことは分かっている。
けれども、何故スライムの赤ん坊如きがたかだかミルクを飲んだ程度であんなに褒められているんだ。
「ニール、ソーセージ要る?」
「えっ!?いいの!?」
「いいよ。シグルド、遠慮しないで食べな。この時期の狩りは危ないんだし。」
そう思っていたのに、何故か。
本当に何故か、ナチオルド子爵令息だけウィルの家の朝食にお呼ばれすることになってしまった。
しかも席がニールの隣………の隣。
ニールの両隣はセドリックとグレイスライムが占領しているので、ナチオルド子爵令息はセドリックの隣に座ることとなった。
何故。
番同士のイチャイチャは身体に悪い。
ただでさえ着替えまでした状態で洗面所から仲良く戻って来て、そのままぐっすりと眠っているホワイトスライムを連れて神殿に向かったアーサーとクィル神官を見せつけられたばかりなのに。
しかも何故か、ハームンドは膝の上に居る。
なんだこの拷問。
「おにいさんは、きしさまなの?」
「おにいさんは、えらいひとなの?」
しかもセドリックの弟だという双子が反対側の隣に座っている。
同じ顔と声で似たようなことを言われると、頭がおかしくなりそうだ。
そう思いながら、ナチオルド子爵令息は保存食と思われるソーセージを齧った。
自分が居る所為で、保存食が減るのではないだろうか。
少しだけ、ほんの少しだけ心配になった。
「ああ。そうだ。」
双子の質問にまとめてそう答えながら、皿に盛りつけられた野菜を見た。
緑色の乾燥野菜は水で戻されているのだが、苦みが強くて得意ではなかった。
だが子供達の前で残すのはどうにも憚られた。
あとウィルの前で弱味を見せるのは、絶対に嫌だと思ったのだ。
グッと眉根を寄せながら、一口で食べてしまう。
ソーセージも一緒に食べたけれど、苦みが強すぎてなんの助けにもならない。
「すっ………すごい!」
「きしさま、すごい!」
「おにいさんすごいね!」
水で流し込むように野菜を飲み込めば、子供達はキラキラとした目で拍手喝采をする。
馬鹿にしてるのかと普段なら怒鳴るところなのだが、この三人は本気でそう思っているのがありありと分かるから調子が狂う。
どういう育ち方をしたら、こんなに素直になるのか。
思えばウィルも、素直といえば素直な性格だった。
この村だからこそ、だというのだろうか。
ナチオルド子爵令息は視線を下げて、膝の上で大人しくしているハームンドを見た。
グッとボディを上に伸ばして、一生懸命視線を合わせようとしているように見える。
「………大人、だからな。」
ぽつりと呟く。
子供達の興奮したような喝采が、どこか遠くに感じた。
二人には別にそんなつもりはないだろうけれど、それでも二人の立ち振る舞いがいちいち彼の癪に障った。
だって周りは、いつも比較してくるから。
父ができるから、兄ができるから。
彼のやることなすこと全部、比較され落とされ続けた。
そうしてコネで入った騎士団ですら、同期入団したウィルに比べられる。
ナチオルド子爵令息的には、努力しているのだ。
それが実らなかっただけ。
またはその努力の天井がウィルにとっては床でしかなかったという、そういうよくある話なだけ。
ナチオルド子爵令息自身、騎士団の中で可愛がられては、いた。
けれども努力については、一度たりとも褒められたことはなかった。
………あのスライムですら、褒められているのに。
ナチオルド子爵令息はパープルスライムにそんな嫉妬の念を抱いた。
このパープルスライムが赤ん坊なことは分かっている。
けれども、何故スライムの赤ん坊如きがたかだかミルクを飲んだ程度であんなに褒められているんだ。
「ニール、ソーセージ要る?」
「えっ!?いいの!?」
「いいよ。シグルド、遠慮しないで食べな。この時期の狩りは危ないんだし。」
そう思っていたのに、何故か。
本当に何故か、ナチオルド子爵令息だけウィルの家の朝食にお呼ばれすることになってしまった。
しかも席がニールの隣………の隣。
ニールの両隣はセドリックとグレイスライムが占領しているので、ナチオルド子爵令息はセドリックの隣に座ることとなった。
何故。
番同士のイチャイチャは身体に悪い。
ただでさえ着替えまでした状態で洗面所から仲良く戻って来て、そのままぐっすりと眠っているホワイトスライムを連れて神殿に向かったアーサーとクィル神官を見せつけられたばかりなのに。
しかも何故か、ハームンドは膝の上に居る。
なんだこの拷問。
「おにいさんは、きしさまなの?」
「おにいさんは、えらいひとなの?」
しかもセドリックの弟だという双子が反対側の隣に座っている。
同じ顔と声で似たようなことを言われると、頭がおかしくなりそうだ。
そう思いながら、ナチオルド子爵令息は保存食と思われるソーセージを齧った。
自分が居る所為で、保存食が減るのではないだろうか。
少しだけ、ほんの少しだけ心配になった。
「ああ。そうだ。」
双子の質問にまとめてそう答えながら、皿に盛りつけられた野菜を見た。
緑色の乾燥野菜は水で戻されているのだが、苦みが強くて得意ではなかった。
だが子供達の前で残すのはどうにも憚られた。
あとウィルの前で弱味を見せるのは、絶対に嫌だと思ったのだ。
グッと眉根を寄せながら、一口で食べてしまう。
ソーセージも一緒に食べたけれど、苦みが強すぎてなんの助けにもならない。
「すっ………すごい!」
「きしさま、すごい!」
「おにいさんすごいね!」
水で流し込むように野菜を飲み込めば、子供達はキラキラとした目で拍手喝采をする。
馬鹿にしてるのかと普段なら怒鳴るところなのだが、この三人は本気でそう思っているのがありありと分かるから調子が狂う。
どういう育ち方をしたら、こんなに素直になるのか。
思えばウィルも、素直といえば素直な性格だった。
この村だからこそ、だというのだろうか。
ナチオルド子爵令息は視線を下げて、膝の上で大人しくしているハームンドを見た。
グッとボディを上に伸ばして、一生懸命視線を合わせようとしているように見える。
「………大人、だからな。」
ぽつりと呟く。
子供達の興奮したような喝采が、どこか遠くに感じた。
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