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8歳の春
速達
「ゆうびーん。それも速達。」
「はいよー。………ん?モリス市長から?」
セドリックが悲痛な叫びをあげている頃、ウィルは久しぶりの郵便を受け取り怪訝そうに首を傾げた。
村長であるリースならば分かるが、一村民のウィルがモリス市長の手紙を受け取る理由なんて無い筈だ。
間違いか?とも思ったが、宛名にはちゃんとウィルの名前が記載してある。
「ウィルさん。」
「うおっ!」
「そのシーリングスタンプ、モリス市長からですよね。立場ある者からの手紙を後回しにすると、痛い目見ますよ。」
後で見ようかとそのままリビングのテーブルに置こうとすると、ちょうど窓際で日向ぼっこをしながらゆっくりと足を動かしていたアムルに見咎められた。
そしてそのまま正論で諫められる。
なんとも目敏い。
そして元貴族なので、言葉が重い。
「………はーい………。」
ウィルはボソッとそう返事し、ナイフを手に取ってスタンプを剥がした。
唇を尖らせ、明らかに不満だという感情を表した表情で。
ニールも不満がある時はそういう顔をするので、素直過ぎる親子の良く似た表情にアムルは思わず呆れてしまう。
返事は良い子なんだが、表情が全く良い子じゃない。
「んあ?」
「ん?どうしたんです?」
渋々と読み進めていたウィルが、唐突に何かに気付いたような声を上げた。
グッと身体を伸ばしていたアムルは、ウィルの反応に興味を示してよたよたとした足取りで近寄った。
貴族だった頃には絶対に見せなかった野次馬根性。
元々、アムルは好奇心が旺盛なのだ。
「………昔の知り合いが、今からここに来るらしい。」
「今から?随分と急ですね。」
苦虫を嚙み潰したような顔をしているので、あまり親しくないのは察せる。
以前深夜と早朝に訪ねて来た常識知らずな騎士が居たらしいが、恐らくはその1人だろう。
しかし、そんな知り合いの来訪を何故わざわざモリス市長が?
そう首を傾げようとして、ふと、気付く。
「もしかして、モリス市長が最後に話されていた方が?」
「ああ。どうやらモリス市長のパートナーになったらしい。」
なるほど、と納得すると同時に、あまりのスピード展開に少しゾッとした。
モリス市長はどれだけその人物に執着していたというのか。
あの言い方だと、幼い頃から虎視眈々と狙っていたような感じだったし、そのパートナーの人は逃げた方が良いのでは?
無自覚モラハラしてそうだし。
「で、スライム種の赤ん坊を拾ったから色々聞きたいんだと。」
「あ、赤ん坊???スライム種の???それは可愛い………否、違う。そんなのがぽんと落ちてるものなのですか?」
赤ん坊という括りで言えばハームンドにホワイトスライムとブルースライムもそうだが、彼らは恐らく親を亡くした子達だ。
しかしそんな偶然、そう頻繁にあるものじゃないだろう。
じゃないと街のそこかしこに孤児の赤ちゃんスライムが居るようなことになるだろう。
「まぁ、いずれにしても相手が来てからだな。」
ウィルはそう言って一つ伸びをして、あっと小さく呟いた。
貴族ならば、アムルと面識あるんじゃないか?面倒臭い。
「はいよー。………ん?モリス市長から?」
セドリックが悲痛な叫びをあげている頃、ウィルは久しぶりの郵便を受け取り怪訝そうに首を傾げた。
村長であるリースならば分かるが、一村民のウィルがモリス市長の手紙を受け取る理由なんて無い筈だ。
間違いか?とも思ったが、宛名にはちゃんとウィルの名前が記載してある。
「ウィルさん。」
「うおっ!」
「そのシーリングスタンプ、モリス市長からですよね。立場ある者からの手紙を後回しにすると、痛い目見ますよ。」
後で見ようかとそのままリビングのテーブルに置こうとすると、ちょうど窓際で日向ぼっこをしながらゆっくりと足を動かしていたアムルに見咎められた。
そしてそのまま正論で諫められる。
なんとも目敏い。
そして元貴族なので、言葉が重い。
「………はーい………。」
ウィルはボソッとそう返事し、ナイフを手に取ってスタンプを剥がした。
唇を尖らせ、明らかに不満だという感情を表した表情で。
ニールも不満がある時はそういう顔をするので、素直過ぎる親子の良く似た表情にアムルは思わず呆れてしまう。
返事は良い子なんだが、表情が全く良い子じゃない。
「んあ?」
「ん?どうしたんです?」
渋々と読み進めていたウィルが、唐突に何かに気付いたような声を上げた。
グッと身体を伸ばしていたアムルは、ウィルの反応に興味を示してよたよたとした足取りで近寄った。
貴族だった頃には絶対に見せなかった野次馬根性。
元々、アムルは好奇心が旺盛なのだ。
「………昔の知り合いが、今からここに来るらしい。」
「今から?随分と急ですね。」
苦虫を嚙み潰したような顔をしているので、あまり親しくないのは察せる。
以前深夜と早朝に訪ねて来た常識知らずな騎士が居たらしいが、恐らくはその1人だろう。
しかし、そんな知り合いの来訪を何故わざわざモリス市長が?
そう首を傾げようとして、ふと、気付く。
「もしかして、モリス市長が最後に話されていた方が?」
「ああ。どうやらモリス市長のパートナーになったらしい。」
なるほど、と納得すると同時に、あまりのスピード展開に少しゾッとした。
モリス市長はどれだけその人物に執着していたというのか。
あの言い方だと、幼い頃から虎視眈々と狙っていたような感じだったし、そのパートナーの人は逃げた方が良いのでは?
無自覚モラハラしてそうだし。
「で、スライム種の赤ん坊を拾ったから色々聞きたいんだと。」
「あ、赤ん坊???スライム種の???それは可愛い………否、違う。そんなのがぽんと落ちてるものなのですか?」
赤ん坊という括りで言えばハームンドにホワイトスライムとブルースライムもそうだが、彼らは恐らく親を亡くした子達だ。
しかしそんな偶然、そう頻繁にあるものじゃないだろう。
じゃないと街のそこかしこに孤児の赤ちゃんスライムが居るようなことになるだろう。
「まぁ、いずれにしても相手が来てからだな。」
ウィルはそう言って一つ伸びをして、あっと小さく呟いた。
貴族ならば、アムルと面識あるんじゃないか?面倒臭い。
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