うるせぇ!僕はスライム牧場を作るんで邪魔すんな!!

かかし

文字の大きさ
355 / 406
8歳の夏

突然の帰宅

ニールが発情の熱に苦しんでいる中、セドリックが村に到着したのはなんとそこからたった2時間後だった。
何故だか胸騒ぎがして、いつもよりも数時間早く学園を出たのだ。
少しでも早くなるように、そう安くない金額を出して特急集合馬車オムニバスすら使って。

「セドリック!?」
「「兄ちゃん!?」」
「ただいま。ニールは?」

流石に驚く面々に、セドリックは鞄を雑に置いて洗面所へ駆け込んだ。
妙にソワソワとする。
入念に手を洗って、これがどうか嫌な意味での胸騒ぎでありませんようにと祈る。

「ニールはウィルが一緒に居る。寝室だ。」
「寝てる?」
「いや、どうにも寝れてないみたいだな。」

リースの言葉に、セドリックはギュッと眉根を寄せた。
何か酷いことがあったのだろうか。
不安に思うセドリックに、リースは特に何を言う訳でもなく寝室へと案内する。
今がどういう状態か、それはウィルが説明すべきだろう。

「ウィル、まだ起きてるか?」

不安そうに、今にも寝室に飛び込んでしまいそうなセドリックの首根っこを掴んでリースはノックした。
多分、セドリックはニールの発情状態に中てられている。
ニールがヒトで本物の発情じゃないからか、まだセドリックの理性は残っているようなのが幸いだった。
これが本当の獣人同士での発情だったら………想像しただけでゾッとした。

「どうした?」
「セドリックが帰り着いた。どうする?」
「は?」

バタバタという音がして、扉が開いた。
目を見開き、本気で驚いた表情を浮かべているウィル。
しかしウィルはこの状態に覚えがあるらしく、とびきりの溜息を吐いたかと思えば少しだけ待てとセドリックの頭を撫でて部屋の中へと戻った。
そして未だ知らぬ熱に弄ばれ苦しんでいるニールの傍に行き、頬を撫でてやった。

「ニール、起きれるか?」
「んぅ………」
「セドリックが帰って来た。分かるか?」

ウィルの言葉に、ニールは首を傾げる。
もう朝なのだろうか。
朝にならないと帰って来ないって聞いた。
ニールはぼぅっとした頭で、そんなことを考える。

「抱えるぞ。」

ウィルは一応声を掛けて、ニールを抱き上げた。
先程から、無意識にウィルを拒絶するような反応をするのだ。
つがいを持つ獣人としては当然の反応だが、ヒトもそうなってしまうとは聞いたことがない。
、だからだろうか。

「セドリック。部屋に行け。」
「ニール!これは………」
「発情状態だ。お前に任せる。」

ウィルはそう言って、セドリックにニールを渡した。
セドリックが抱き締めた瞬間、ぶわりと鼻腔いっぱいに広がるセドリックの匂い。
大好きで安心できる匂いに、ニールは無意識にすりっと身体を懐かせた。

「だが、最後までは手を出すなよ。」
「が………頑張る………」
「初めての状態なんだ。怖がらせるな。まぁ、若かった俺でもできたんだ、やれるさ。」

ちょっとしたプレッシャーを浴びせながら、ウィルはセドリックの背中を叩いた。
でももしもの時は………分かるよな?
感想 62

あなたにおすすめの小説

スライム牧場番外編

かかし
BL
「うるせぇ!僕はスライム牧場を作るんで邪魔すんな!!」の番外編です。 思いついたネタを、思いつくままに。 完全不定期更新なのでご容赦ください。

結婚式の翌朝、夫に「皇太子の愛人だろう」と捨てられました――ですが私は、亡き国王の娘です

柴田はつみ
恋愛
母の遺した薬草店を守りながら、慎ましく暮らしていたアンリ。 そんな彼女に求婚してきたのは、国内でも名高い騎士にして公爵家当主、アルファだった。 真っすぐな想いを向けられ、彼を信じて結婚したアンリ。 けれど幸せなはずの結婚式の翌朝、夫は冷たく言い放つ。 「君を愛していると本気で思っていたのかい? 」 彼はアンリが第一皇太子と深い仲にあり、自分との結婚は身を隠すための偽装だと誤解していたのだ。 アンリは実は、亡き国王の婚外子。 皇太子にとっては、隠して守らなければならない妹だったのである。

「お前がいると息が詰まる」と追放された令嬢——翌週から公爵家の予定が全て狂った

歩人
ファンタジー
クラリッサは公爵家の日程管理を一手に担う令嬢。前世の社畜経験を活かし、行事計画、来客対応、予算管理まで完璧にこなしていた。 だが婚約者ヴィクトルは言った。「お前がいると息が詰まる。もっと華やかな女がいい」 追放されたクラリッサが去った翌週、公爵家の予定が全て狂い始める。 舞踏会の招待状は届かず、外交晩餐会の料理は手配されず、決算書類は行方不明。 一方クラリッサは、若き領主の元で「定時退社」という夢を叶えていた。 「もう、残業はしません」

悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています

かきんとう
恋愛
 王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。  磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。  その中心に、私は立っていた。  ――今日、この瞬間のために。 「エレノア・フォン・リーベルト嬢」  高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。

「仲睦まじい夫婦」であるはずのわたしの夫は、わたしの葬儀で本性をあらわした

ぽんた
恋愛
サヤ・ラドフォード侯爵夫人が死んだ。その葬儀で、マッケイン王国でも「仲睦まじい夫婦」であるはずの彼女の夫が、妻を冒涜した。その聞くに堪えない本音。そんな夫の横には、夫が従妹だというレディが寄り添っている。サヤ・ラドフォードの棺の前で、夫とその従妹はサヤを断罪する。サヤは、ほんとうに彼らがいうような悪女だったのか?  ※ハッピーエンド確約。ざまぁあり。ご都合主義のゆるゆる設定はご容赦願います。

また恋人に振られたので酒に飲まれていたらゴツい騎士に求婚していた件

月衣
BL
また恋人に振られた魔導省のエリート官吏アルヴィス。失恋のショックで酒に溺れた彼は勢いのまま酒場に現れた屈強な王宮騎士ガラティスに求婚してしまう。 翌朝すべての記憶を保持したまま絶望するアルヴィスだったが当のガラティスはなぜか本気だった。 「安心しろ。俺は誠実な男だ。一度決めたことは覆さない」 逃げようとするエリート魔導師と絶対に逃がさない最強騎士 貢ぎ体質な男が捕まる強制恋愛コメディのつもりです!!

あなたの愛したご令嬢は俺なんです

久野字
BL
「愛しい令息と結ばれたい。お前の家を金銭援助するからなんとかしろ」 没落寸前の家を救うため、強制的な契約を結ばれたアディル。一年限りで自分の体が令嬢に変わる秘薬を飲まされた彼は、無事に令息と思いを通じ合わせることに成功するが……

家族に忘れられていた第五王子は愛され生活を送る

りーさん
ファンタジー
 アズール王国の王宮には、多くの王子や王女が住んでいる蒼星宮という宮がある。  その宮にはとある噂が広まっていた。併設されている図書館に子どもの幽霊が現れると。  そんなある日、図書館に出入りしていた第一王子は子どものような人影を見かける。  その時、父である国王にすら忘れられ、存在を知られていなかった第五王子の才覚が露になっていく。