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7歳の夏
婚約者(仮)
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「勿論、ニールの気持ちが一番大事だからな。」
ウィルが言った言葉に何度も何度も頷きつつ、セドリックはこれでもかという程に尻尾を振った。
床を掃除するどころか、あまりの風圧に逆に埃が舞いそうな程である。
分かりやすい奴だなと呆れつつも、まあ番を前にした獣人なんてそんなモンかとも納得してしまう。
何せ、自分がそうなのだから。
「ニール、おいで。」
「あ、お父さん!」
身振り手振りで報告会をしていたニールを手招きして呼ぶ。
よっぽど楽しかったのだろう。
興奮が冷めきってなくて、ほこほこと頬が温かくなっている。
そんなニールの頬をむぎゅっと手で挟んで、まるい額にキスをする。
ニールは子供特有の甲高い声で笑ったけども、愛しい息子のだと思えば全くうるさく感じないのだから不思議だ。
「ニールに大事な話がある。」
「だいじなはなし?」
興奮しきっていたのに、ウィルの言葉にピタリと止まってジッとウィルの目を見詰めた。
やはりお兄さんだからか、それとも元からの性格からか。
未だ落ち着きのないクリスとカイルと違って、ちゃんと切り替えができるから本当に偉いなとセドリックは思った。
「ああ。ニール、セドリックは好きか?」
「うん!」
ニコニコと。
屈託のない笑顔でそう言われて、セドリックは思わず胸を掻きむしりたくなるような衝動に駆られた。
可愛い。
例えセドリックの欲しい意味の【好き】が含まれていなかったとしても。
セドリックにとっては百点満点の笑顔と答えだった。
「じゃあセドリックを助けてやって欲しい。」
「セディお兄ちゃんを?僕が?」
「ああ。」
ニールの表情に、不安そうな色が滲む。
嗚呼、そんな表情をしてほしくない。
ギュッと抱き締めて、大丈夫、何にもないんだよ気にしないでと言いたくなる衝動をなんとか抑える。
折角ウィルが後ろ盾になってくれたのだ。
自らの手でそれを無下にしたくはない。
「ニール。ニールはな、セドリックの番なんだ。」
「つがい?お父さんとお母さんみたいな?」
「そう。」
ウィルはニールを抱き上げながら、あっさりとそこはネタ晴らしをした。
もう言っちゃうのかと思ったセドリックだったが、ここは全面ウィルにお任せだ。
何故ならばニールの許しが無い以上、セドリックはまだ他人なのだ。
「でもニールはヒトだから、絶対セドリックを選ばないとって訳じゃない。セドリックじゃない別の存在を好きになっても良いんだ。」
きょとんとするニールに、ウィルはその小さな頭を撫でくり回しながらそう言い聞かせる。
グサグサとセドリックの心を刺してくる言葉であるが、真っ当な正論である。
ひっそりと心の中で泣きながらも、セドリックが出来るのは黙ってニールの決断を待つだけだ。
「でももし、ニールがよかったらセドリックに傍に居る理由を与えてやって欲しいんだ。」
「そうしたら、僕もセディお兄ちゃんといっしょにいれる?」
ニールの言葉に、ウィルもセドリックも「お?」と思った。
言葉を素直に受け取ってみれば、まるでニールがセドリックと一緒に居たがっているようにも聞こえる。
というか、まさにそうなのではないだろうか。
不安に垂れていたセドリックの尻尾が、期待でゆっくりと横に振られていく。
「ニールはセドリックと一緒に居たいか?」
「うん………!いっしょにいたい!つがいなら、いれる?」
ちょっとだけほっぺを赤くしながら、ニールはセドリックに手を伸ばした。
嬉しい。
嬉しい。
ニールの言葉の中に、セドリックの期待する意味が含まれているかもしれないと思うと嬉しくて仕方なかった。
「ああ。でもまだニールは幼いから、結婚はできない。7歳だからな。」
「うん。」
「だからセドリックとニールは結婚じゃなくて、婚約して欲しいんだ。」
「こんやく。」
実年齢が10歳であっても、戸籍上は7歳だ。
婚姻可能年齢になるにはまだまだ先の話。
その時が来た時にどうなるのかはニール次第ではあるが、その年齢までキープしても構わないだろうというのがウィルの考えだったのだが。
「ああ。結婚を約束することだ。貴族じゃないから、口約束だがな。」
やっぱやめたをしても良い。
そんな軽さでの提案だったのだが、なんだか結構ガッツリとした話になりそうだなとウィルは思った。
尚、セドリックは感激して目に涙を滲ませだしたのでますます役に立ちそうにない。
「じゃあけっこんできるねんれいになったら、けっこんできる?」
「ああ。ニールが良いなら、結婚しても良い。」
「じゃあこんやく、する。」
正直ニールにとって婚約も結婚も分からなかったけど、でもずっとセドリックと一緒に居れるという事実は魅力的なことに思えた。
学園に居る間は一緒に居れないという事は勿論分かっているが、それでもこうして村に帰って来た時に一緒に居て良い理由があるならそうなりたいと思うのはニールの中では自然な流れだった。
「本当に………俺と結婚してくれる………?」
「婚約、な。」
「うん!けっこんする!」
「婚約な!婚約!まだ結婚しない!」
うちの子をそんなに早く嫁にやってたまるか!
そう思ってしまうのは、男親としての性だろう。
………多分。
ウィルが言った言葉に何度も何度も頷きつつ、セドリックはこれでもかという程に尻尾を振った。
床を掃除するどころか、あまりの風圧に逆に埃が舞いそうな程である。
分かりやすい奴だなと呆れつつも、まあ番を前にした獣人なんてそんなモンかとも納得してしまう。
何せ、自分がそうなのだから。
「ニール、おいで。」
「あ、お父さん!」
身振り手振りで報告会をしていたニールを手招きして呼ぶ。
よっぽど楽しかったのだろう。
興奮が冷めきってなくて、ほこほこと頬が温かくなっている。
そんなニールの頬をむぎゅっと手で挟んで、まるい額にキスをする。
ニールは子供特有の甲高い声で笑ったけども、愛しい息子のだと思えば全くうるさく感じないのだから不思議だ。
「ニールに大事な話がある。」
「だいじなはなし?」
興奮しきっていたのに、ウィルの言葉にピタリと止まってジッとウィルの目を見詰めた。
やはりお兄さんだからか、それとも元からの性格からか。
未だ落ち着きのないクリスとカイルと違って、ちゃんと切り替えができるから本当に偉いなとセドリックは思った。
「ああ。ニール、セドリックは好きか?」
「うん!」
ニコニコと。
屈託のない笑顔でそう言われて、セドリックは思わず胸を掻きむしりたくなるような衝動に駆られた。
可愛い。
例えセドリックの欲しい意味の【好き】が含まれていなかったとしても。
セドリックにとっては百点満点の笑顔と答えだった。
「じゃあセドリックを助けてやって欲しい。」
「セディお兄ちゃんを?僕が?」
「ああ。」
ニールの表情に、不安そうな色が滲む。
嗚呼、そんな表情をしてほしくない。
ギュッと抱き締めて、大丈夫、何にもないんだよ気にしないでと言いたくなる衝動をなんとか抑える。
折角ウィルが後ろ盾になってくれたのだ。
自らの手でそれを無下にしたくはない。
「ニール。ニールはな、セドリックの番なんだ。」
「つがい?お父さんとお母さんみたいな?」
「そう。」
ウィルはニールを抱き上げながら、あっさりとそこはネタ晴らしをした。
もう言っちゃうのかと思ったセドリックだったが、ここは全面ウィルにお任せだ。
何故ならばニールの許しが無い以上、セドリックはまだ他人なのだ。
「でもニールはヒトだから、絶対セドリックを選ばないとって訳じゃない。セドリックじゃない別の存在を好きになっても良いんだ。」
きょとんとするニールに、ウィルはその小さな頭を撫でくり回しながらそう言い聞かせる。
グサグサとセドリックの心を刺してくる言葉であるが、真っ当な正論である。
ひっそりと心の中で泣きながらも、セドリックが出来るのは黙ってニールの決断を待つだけだ。
「でももし、ニールがよかったらセドリックに傍に居る理由を与えてやって欲しいんだ。」
「そうしたら、僕もセディお兄ちゃんといっしょにいれる?」
ニールの言葉に、ウィルもセドリックも「お?」と思った。
言葉を素直に受け取ってみれば、まるでニールがセドリックと一緒に居たがっているようにも聞こえる。
というか、まさにそうなのではないだろうか。
不安に垂れていたセドリックの尻尾が、期待でゆっくりと横に振られていく。
「ニールはセドリックと一緒に居たいか?」
「うん………!いっしょにいたい!つがいなら、いれる?」
ちょっとだけほっぺを赤くしながら、ニールはセドリックに手を伸ばした。
嬉しい。
嬉しい。
ニールの言葉の中に、セドリックの期待する意味が含まれているかもしれないと思うと嬉しくて仕方なかった。
「ああ。でもまだニールは幼いから、結婚はできない。7歳だからな。」
「うん。」
「だからセドリックとニールは結婚じゃなくて、婚約して欲しいんだ。」
「こんやく。」
実年齢が10歳であっても、戸籍上は7歳だ。
婚姻可能年齢になるにはまだまだ先の話。
その時が来た時にどうなるのかはニール次第ではあるが、その年齢までキープしても構わないだろうというのがウィルの考えだったのだが。
「ああ。結婚を約束することだ。貴族じゃないから、口約束だがな。」
やっぱやめたをしても良い。
そんな軽さでの提案だったのだが、なんだか結構ガッツリとした話になりそうだなとウィルは思った。
尚、セドリックは感激して目に涙を滲ませだしたのでますます役に立ちそうにない。
「じゃあけっこんできるねんれいになったら、けっこんできる?」
「ああ。ニールが良いなら、結婚しても良い。」
「じゃあこんやく、する。」
正直ニールにとって婚約も結婚も分からなかったけど、でもずっとセドリックと一緒に居れるという事実は魅力的なことに思えた。
学園に居る間は一緒に居れないという事は勿論分かっているが、それでもこうして村に帰って来た時に一緒に居て良い理由があるならそうなりたいと思うのはニールの中では自然な流れだった。
「本当に………俺と結婚してくれる………?」
「婚約、な。」
「うん!けっこんする!」
「婚約な!婚約!まだ結婚しない!」
うちの子をそんなに早く嫁にやってたまるか!
そう思ってしまうのは、男親としての性だろう。
………多分。
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