落ちこぼれ元錬金術師の禁忌

かかし

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家族ってさ、思ったよりも複雑で、でも思ったよりも簡単になれるんだって思った。
手を伸ばす勇気さえあれば。
そして、その手を掴む勇気さえあれば。
前提条件は全然簡単じゃないけど、でも、そこさえクリアできれば簡単だった。
後はそうだ。
会話。会話が大事。

俺とディクセル様………というより俺は卑屈になって頑なに会話を拒んでいた。
ディクセル様とだけじゃなくて、兄さんとも。
もしかしたら、カミラとも会話をしていれば何か変わったかもしれない。
そこに関してはもしもifの話でしかないけれど。

「あらら、リオンの口元凄いね。」
「だろうな。肩がすごく冷たい。」

眠さも限界だったのか、ディクセル様に抱かれたままのリオンはとうとう涎を垂らして眠ってしまった。
それが全部ディクセル様の肩に流れているので、正直凄いことになってるのはどっちかと言えばディクセル様の肩だ。
シャツの色が変わっちゃってるし。
ちょっと申し訳ないなと思うけど、思わず笑っちゃう。
クスクスと笑えば、ディクセル様も困ったように苦笑した。

「昨日から、大興奮だったもんね。」

そう、昨日から。
リオンがディクセル様のことをパパと沢山呼び、そしてこうして懐いているのを見るとずっと前から親子だったように思えてしまう。
でも実際は、昨日会ったばかりだ。
リオンが特殊なのか、それともディクセル様が凄いのか………。

「ぅむ………ママぁ………」
「抱っこしてるのパパなんだけどなぁ。」
「ふふっ。昨日からパパばっかり呼ばれて寂しかったから、お相子です。」

ふにゃふにゃと幸せそうに笑いながら、リオンはギュッとディクセル様のシャツを握って俺を呼んだ。
ママ冥利に尽きる。
因みに寂しかったのは結構本気だったりする。
だってずっとパパに抱っこ強請ってるんだもん。
でもこうして最終的にママに来てくれるんだから、たまにパパに譲る位は我慢してあげようと思う。

「リオンがこうして俺に懐いてくれるのは、ミリが愛情たっぷり育てた証拠だろうな。」

ディクセル様が言った言葉に、俺は首を傾げる。
どういう意味だ?

「ミリの愛情を沢山受けたから、疑ってないんだよ。愛してくれるって、真っ直ぐ信じれるんだ。」

貴重な子だよと、ディクセル様は言う。
そうなんだろうか?
良く分からない。
必死だったからっていうのもあるけど、リオンはとにかく可愛かった。
でもそんな可愛い我が子に、俺のエゴでしなくて良い我慢を強いていたことも分かっていたから。
俺にたくさんのモノをくれたリオンに、俺はただ愛情を注ぐことでしか出来なかった。

「それでも、だよ。」

そうなのかな。
でも、そうだと良いなと思う。

「だからその分、俺も一緒にリオンを愛するよ。ミリのことは、もっと愛するけど。」

まずは二年分。
ディクセル様のその言葉に、カッと顔が赤くなるのを感じた。
羞恥が九割くらいで、残り一割は喜びで。
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