劇ではいつも『木』の役だったわたしの異世界転生後の職業が『木』だった件……それでも大好きな王子様のために庶民から頑張って成り上がるもん!

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第三章 木は職業じゃないと思います

10本目

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 わたしが裏庭で光合成を終え、桜の木を成長させてからお部屋に戻ろうとすると、中庭の廊下でお父さんが身なりの良さそうな人を見送っていた……なにか大事な商談でもあったのかな?

 この時は特に気にならなかったのだけど、その日の夕食の時にお父さんがみんなにアドバイスを求めてきた。

「第二王子様のお披露目時にお渡しする贈り物? 余所の国のおもちゃじゃ駄目なの?」

 お母さんはあまり興味なさそうにパンをちぎっている。

「領主様のお使いの方がわざわざこの店に来られてな……どうも、一番珍しい……というか、第二王子喜ばれた物を贈った領主様にとある領地が下賜 かしされるんだとか?」

 お父さんがお髭を撫でながら難しそうな顔をしている。

「それで遣いの方が来られたのですか?」

 リューイ兄さんが食事の手を止めてお父さんに質問する。

「この近くの領主様と言えばトルア領のザード様だっけ?」

 リュナン兄様も領主様の名前をちゃんと覚えているようだ……えらいなぁ。

「そうだ……そこで私の店から第二王子様のお眼鏡にかなう贈り物を用意出来れば、今、市場が熱いフロムナ製陶器の取引をうちで独占させてもらえると言う事だ」

「なんだい、きっとそれは他の店にも行ってそうじゃないの? そんな事より最近、麦の値段が上がってきてるわよね……」

 お母さんは贈り物で大きな目を当てるよりも目先の問題の方が気になるようだ。

「それはそうだが、今となってはこの街でライバルはいないと思うしな」

「父さん油断は禁物です、僕も何かいい物がないか調べてみます」

「俺も俺も、兄ちゃんには負けないぞ!」

 二人の兄はやる気満々でだね……それにしても贈り物ねぇ。これがWEB小説なら前世のアイデアで凄いプレゼントをしちゃうんだろうけど、生憎わたしはそれをするつもりはない。

 ……この時はそう思っていた。


「困ったぞ、ミケロ商会が北方の白馬を手に入れたそうだ……まさか、あの商会に北部とのコネがあったとは」

「父さんが南部から取り寄せた金細工じゃ勝てないの?」

「モチーフが悪かった……私の取り寄せたのは馬 の金細工の像なのだ……さすがに本物の、しかも希少な馬だとインパクトでも負けてしまうだろう」

 そんなもんなんだ。お父さんは「こまった時間が無いと」嘆いている。リュナン兄さんも一緒に悩んでいる。
 あらら、こんなんだったらわたしも何か考えておけば良かったのかも?

 でも……どうしよう、もしかしたらアレならいけるのかも?

「ねぇ、お父さん……」



 店の裏庭に集まったみんなは声もなく空を見上げている……あ、正確には植えられた木が咲かせた花だ。
 あれから頑張って花を咲かせるくらい成長させたんだから!

「う、美しい……こんな淡く綺麗なピンク色の花びらなど見た事が無い」

 お父さんが口をぽかんと開けて見上げている。

「本当だ、これは何て言う花……木なんだ?」

 リューイ兄さんは惚けながら呟いた。

「これは『桜』だよ……その『桜』の種類で『彼岸桜』って言うんだ」

「サクラ……ヒガンザクラ……これは、一目見れば心に残る美しさだ、忘れる事など出来ない……そして花びらが散るのも美しい」

「いいわね、これを見ながらお酒でも飲みたいわね~」

 家族がわたしが頑張って育てた桜の木を見上げ……まさに心を奪われている。お母さんがお花見なんて知らないのに核心を突いていてビックリだよ。

「しかし、アーリャが大切に育てた桜をいいのかい?」

「良いんだよお父さん、わたしだって家族みんなの役に立ちたいもん」

 末っ子だからって好き放題やらせてもらっているし、恩返ししないと心苦しいもんね。
 お父さんは感激してわたしを抱きしめてきた……ちょっとお髭がくすぐったい。

「父さん、アーリャの育てた大切なサクラで店を大きくして、みんなをもっと幸せにするからな」

「うん、ありがとう……でも、わたしは今も幸せだよ」



 こうして、桜の木は領主様の遣いの人達が取りに来て運ばれて行き……1週間後、見事に第二王子様のお眼鏡にかなったという報告を聞く事が出来たのでした。
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