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奇妙な案内人
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中古宇宙艇販売屋の親爺はゴロス人だった。
腕がなんと四本もある〝種族〟で、エンジニア向きの身体をしている。逞しい身体つきで、ジムが店を訪ねたときは忙しく四本の腕を動かして、なにか機械の調整をしているところだった。
「宇宙船が欲しいんだけど」とジムが声を掛けると、親爺は上半身だけ捻じ曲げ、じろじろと疑い深い視線を投げかけてきた。
「宇宙船? お前さんが?」
ジムが頷くと作業の手を止め、尻のポケットからウエスを取り出し、四本の手についた油を拭った。口許に楊枝を咥えている。その楊枝をぷっ、と吐き出すと、新しいのを一本取り出し、また咥えた。
二本の腕を腰に当て、一本を鼻のところへ持っていくと鼻頭をほりほりと掻き、もう一本で身体についた汚れを拭っている。
「ふーん、原型が宇宙船をねえ……」
親爺の言葉にジムは怒りを堪えた。
「来な」とばかりに親爺は首をかしげ、店の外へ出た。
出たところが駐機場になっていて、剥き出しの地面に数機の宇宙艇が停泊している。どれもこれも、恐ろしく古ぼけ、機体には宇宙塵がこびり付き、窓のガラスはまるで擦りガラスのようだ。
それらを指し示し親爺は、べちゃくちゃと喋り始めた。
「こいつは五年前の型で、超空間ジェネレーターはバクラン・スリーパーの空間緊張位相タイプだ! 扱いやすくて、修理も簡単だ。部品のスペアも揃っているしな!」
親爺の告げた値段に、ジムはガッカリとなった。先ほど見たコマーシャルよりはかなり下がっているが、それでもジムの手持ち金では届かない。
首を振るジムに親爺は次々と宇宙艇を案内していく。
「こりゃどうだ? 年式は古いが、出力は充分だ。値段は勉強してやるぜ」
親爺の告げた値段にも、ジムは首を振るだけだ。親爺は呆れて、尋ねる。
「いったい、幾ら持ってきているんだね?」
ジムは側頭葉に移植されている情報出力装置を働かせ、送信した。親爺もまた自分の情報装置を働かせ、ジムと同期する。二人の目の前の空間に、情報装置が視覚部位に現出させる映像が浮かび出た。
「おいおい……たったこれだけで、宇宙艇を手に入れようって算段かね?」
親爺は眉を下げた。顎を撫で首を捻った。
ジムは心細くなって尋ねる。
「無理かい?」
「無理もなんも、これじゃ、頭金にすら届かねえよ! それに、うちはクレジットはやっていねえしな。まあ、諦めるこった!」
しょんぼりと両肩を下げるジムを見て、親爺は何か妙案を思いついたのか、にやりと笑いかけた。
「待った! いいことを考えた。あんた、宇宙船操縦の資格は持っているんだろうな?」
ジムは頷き、記録を見せた。数ヶ月前、宇宙船操縦資格の記憶移植を受けている。
この時代、あらゆる資格は記憶移植という技術で植えつけることが可能だ。何年間もの年月習得が必要な技術、知識も、たった数時間で身につけることができる。記憶RNAを投与し、あとは下意識による直接刺激で、あっという間にものにすることができる。
従ってこの時代、いわゆる学校教育は行われていない。あるのは、ごく少数の研究者、科学者のための研究機関であり、大部分の人間にとっては知識は簡単に手に入るものになっている。
その中でも宇宙船操縦資格は人気のある資格だった。なにしろ宇宙船の操縦は、技術の裾野が広い。超空間をあつかう数学の知識にくわえ、宇宙船のジェネレーターの修理、操縦のための空間認識など様々な知識が一辺に身につく。必要なら資格者は工具を手にして、ばらばらの部品の山から一隻の宇宙艇を組み立てることすらやってのけるのだ。
親爺は宇宙艇を並べている場所の後ろにあるスクラップの山を指差した。
「あの屑山には、宇宙艇を何台でも組み立てられるほどの部品が積まれている。あんたがその気になれば、あの中から必要な部品を見つけ、組み上げることだって可能だ。どうだい、おれはあれをあんたに任そう。あの中にあるものは全部タダで進呈するよ! あの屑の山を片付けてくれれば、あそこで見つけるなんでも、あんたに呉れてやるよ」
呆然とスクラップの山を見上げているジムの背中を親爺は、どん、と叩き、大声で笑った。
「まあ、頑張りな! 十年もあそこで探せば、きっと一隻分の部品を見つけることもできるさ!」
我ながらいい思い付きだとばかりに親爺はぐずぐずと下卑た笑いを続けた。笑いすぎて、親爺は咽せ返っている。目じりに浮かんだ笑い涙を拭い、親爺は鼻歌を歌いながら事務所へ引き上げてしまった。
後にはジムが残された。
腕がなんと四本もある〝種族〟で、エンジニア向きの身体をしている。逞しい身体つきで、ジムが店を訪ねたときは忙しく四本の腕を動かして、なにか機械の調整をしているところだった。
「宇宙船が欲しいんだけど」とジムが声を掛けると、親爺は上半身だけ捻じ曲げ、じろじろと疑い深い視線を投げかけてきた。
「宇宙船? お前さんが?」
ジムが頷くと作業の手を止め、尻のポケットからウエスを取り出し、四本の手についた油を拭った。口許に楊枝を咥えている。その楊枝をぷっ、と吐き出すと、新しいのを一本取り出し、また咥えた。
二本の腕を腰に当て、一本を鼻のところへ持っていくと鼻頭をほりほりと掻き、もう一本で身体についた汚れを拭っている。
「ふーん、原型が宇宙船をねえ……」
親爺の言葉にジムは怒りを堪えた。
「来な」とばかりに親爺は首をかしげ、店の外へ出た。
出たところが駐機場になっていて、剥き出しの地面に数機の宇宙艇が停泊している。どれもこれも、恐ろしく古ぼけ、機体には宇宙塵がこびり付き、窓のガラスはまるで擦りガラスのようだ。
それらを指し示し親爺は、べちゃくちゃと喋り始めた。
「こいつは五年前の型で、超空間ジェネレーターはバクラン・スリーパーの空間緊張位相タイプだ! 扱いやすくて、修理も簡単だ。部品のスペアも揃っているしな!」
親爺の告げた値段に、ジムはガッカリとなった。先ほど見たコマーシャルよりはかなり下がっているが、それでもジムの手持ち金では届かない。
首を振るジムに親爺は次々と宇宙艇を案内していく。
「こりゃどうだ? 年式は古いが、出力は充分だ。値段は勉強してやるぜ」
親爺の告げた値段にも、ジムは首を振るだけだ。親爺は呆れて、尋ねる。
「いったい、幾ら持ってきているんだね?」
ジムは側頭葉に移植されている情報出力装置を働かせ、送信した。親爺もまた自分の情報装置を働かせ、ジムと同期する。二人の目の前の空間に、情報装置が視覚部位に現出させる映像が浮かび出た。
「おいおい……たったこれだけで、宇宙艇を手に入れようって算段かね?」
親爺は眉を下げた。顎を撫で首を捻った。
ジムは心細くなって尋ねる。
「無理かい?」
「無理もなんも、これじゃ、頭金にすら届かねえよ! それに、うちはクレジットはやっていねえしな。まあ、諦めるこった!」
しょんぼりと両肩を下げるジムを見て、親爺は何か妙案を思いついたのか、にやりと笑いかけた。
「待った! いいことを考えた。あんた、宇宙船操縦の資格は持っているんだろうな?」
ジムは頷き、記録を見せた。数ヶ月前、宇宙船操縦資格の記憶移植を受けている。
この時代、あらゆる資格は記憶移植という技術で植えつけることが可能だ。何年間もの年月習得が必要な技術、知識も、たった数時間で身につけることができる。記憶RNAを投与し、あとは下意識による直接刺激で、あっという間にものにすることができる。
従ってこの時代、いわゆる学校教育は行われていない。あるのは、ごく少数の研究者、科学者のための研究機関であり、大部分の人間にとっては知識は簡単に手に入るものになっている。
その中でも宇宙船操縦資格は人気のある資格だった。なにしろ宇宙船の操縦は、技術の裾野が広い。超空間をあつかう数学の知識にくわえ、宇宙船のジェネレーターの修理、操縦のための空間認識など様々な知識が一辺に身につく。必要なら資格者は工具を手にして、ばらばらの部品の山から一隻の宇宙艇を組み立てることすらやってのけるのだ。
親爺は宇宙艇を並べている場所の後ろにあるスクラップの山を指差した。
「あの屑山には、宇宙艇を何台でも組み立てられるほどの部品が積まれている。あんたがその気になれば、あの中から必要な部品を見つけ、組み上げることだって可能だ。どうだい、おれはあれをあんたに任そう。あの中にあるものは全部タダで進呈するよ! あの屑の山を片付けてくれれば、あそこで見つけるなんでも、あんたに呉れてやるよ」
呆然とスクラップの山を見上げているジムの背中を親爺は、どん、と叩き、大声で笑った。
「まあ、頑張りな! 十年もあそこで探せば、きっと一隻分の部品を見つけることもできるさ!」
我ながらいい思い付きだとばかりに親爺はぐずぐずと下卑た笑いを続けた。笑いすぎて、親爺は咽せ返っている。目じりに浮かんだ笑い涙を拭い、親爺は鼻歌を歌いながら事務所へ引き上げてしまった。
後にはジムが残された。
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