50 / 107
ジムの打ち明け話
6
しおりを挟む
《鉄槌》の格納庫から一隻の宇宙巡洋艦がするすると発進した。
宇宙船は鋭く尖った船首を持つ、見るからに性能の高そうな巡洋艦である。巡洋艦には《弾頭》という艦名がついている。
乗り込んでいるのはシルバーと、もう一人は原型の部下である。部下といっても、あの晩餐会で踊っていた一人で、ジェネレーターを始動させるため必要だからシルバーが乗り込ませているだけである。本来、数百人の要員を必要とする巡洋艦であるが、シルバーは一人で操船するため、ほとんどの部分を自動に任せていた。
原型は十代後半の少女で、シルバーの隣の副操縦席で退屈そうに欠伸を堪えている。
「ねえ、シルバーさん。まだ超空間ジャンプをしないの? あたしの役目は、ボタンを押すだけでしょ。さっさと終わらせて、船室へ戻りたいわ……」
シルバーは不機嫌に唸った。
「まだだ! 《呑竜》の航跡を調べ、あいつらがどの星系へジャンプしたか決定してからになる。しばらく黙ってろ!」
「はあい……!」
少女は詰まらなそうに生返事をする。
シルバーはコンソールのスイッチを忙しく操作し、《呑竜》のジャンプ先を突き止めようと必死だった。
自分でやるのは久しぶりで勝手が違い、焦っていた。
《鉄槌》の艦橋で部下に命じて《呑竜》の行き先を突き止めることをシルバーは諦めていた。
シュレーディンガー航法を続けている《呑竜》のジャンプ先を予測するのは、部下たちには一切できなくなっている。シルバーのように執念に突き動かされていないため、強い確信を持って機器を操作できないからだ。
必要なのは、揺ぎない確信であり、シルバーには、それがあった。しかし《鉄槌》の艦橋にいるかぎり、部下たちのあやふやな態度にシルバーの確信が影響される。
それで、この《弾頭》に乗り込み、自ら捜索の任に乗り込んだのである。観測者が一人きりなら、シュレーディンガー航法の影響を最小限に抑えられる。
重力波検出器が《呑竜》の超空間フィールドの重力場の影響を感知する。シルバーは手早く計算を終え、算出結果に満足の笑みを浮かべた。
確率分布は《呑竜》が十光年ほど離れた星系にジャンプしたことを示していた。
随分と近い。
おそらく《呑竜》は燃料が残り少なくなっているのだ。それで、燃料を補給するために大慌てでジャンプしたのだろう。
シルバーは少女に命じた。
「ジャンプの用意だ! 超空間ジェネレーターのスイッチを入れろ!」
「合点承知の介でござい!」
妙な返答をして、少女はスイッチを入れた。
シルバーの乗り込んだ《弾頭》は、超空間に消えた。
宇宙船は鋭く尖った船首を持つ、見るからに性能の高そうな巡洋艦である。巡洋艦には《弾頭》という艦名がついている。
乗り込んでいるのはシルバーと、もう一人は原型の部下である。部下といっても、あの晩餐会で踊っていた一人で、ジェネレーターを始動させるため必要だからシルバーが乗り込ませているだけである。本来、数百人の要員を必要とする巡洋艦であるが、シルバーは一人で操船するため、ほとんどの部分を自動に任せていた。
原型は十代後半の少女で、シルバーの隣の副操縦席で退屈そうに欠伸を堪えている。
「ねえ、シルバーさん。まだ超空間ジャンプをしないの? あたしの役目は、ボタンを押すだけでしょ。さっさと終わらせて、船室へ戻りたいわ……」
シルバーは不機嫌に唸った。
「まだだ! 《呑竜》の航跡を調べ、あいつらがどの星系へジャンプしたか決定してからになる。しばらく黙ってろ!」
「はあい……!」
少女は詰まらなそうに生返事をする。
シルバーはコンソールのスイッチを忙しく操作し、《呑竜》のジャンプ先を突き止めようと必死だった。
自分でやるのは久しぶりで勝手が違い、焦っていた。
《鉄槌》の艦橋で部下に命じて《呑竜》の行き先を突き止めることをシルバーは諦めていた。
シュレーディンガー航法を続けている《呑竜》のジャンプ先を予測するのは、部下たちには一切できなくなっている。シルバーのように執念に突き動かされていないため、強い確信を持って機器を操作できないからだ。
必要なのは、揺ぎない確信であり、シルバーには、それがあった。しかし《鉄槌》の艦橋にいるかぎり、部下たちのあやふやな態度にシルバーの確信が影響される。
それで、この《弾頭》に乗り込み、自ら捜索の任に乗り込んだのである。観測者が一人きりなら、シュレーディンガー航法の影響を最小限に抑えられる。
重力波検出器が《呑竜》の超空間フィールドの重力場の影響を感知する。シルバーは手早く計算を終え、算出結果に満足の笑みを浮かべた。
確率分布は《呑竜》が十光年ほど離れた星系にジャンプしたことを示していた。
随分と近い。
おそらく《呑竜》は燃料が残り少なくなっているのだ。それで、燃料を補給するために大慌てでジャンプしたのだろう。
シルバーは少女に命じた。
「ジャンプの用意だ! 超空間ジェネレーターのスイッチを入れろ!」
「合点承知の介でござい!」
妙な返答をして、少女はスイッチを入れた。
シルバーの乗り込んだ《弾頭》は、超空間に消えた。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
あまりさんののっぴきならない事情
菱沼あゆ
キャラ文芸
強引に見合い結婚させられそうになって家出し、憧れのカフェでバイトを始めた、あまり。
充実した日々を送っていた彼女の前に、驚くような美形の客、犬塚海里《いぬづか かいり》が現れた。
「何故、こんなところに居る? 南条あまり」
「……嫌な人と結婚させられそうになって、家を出たからです」
「それ、俺だろ」
そーですね……。
カフェ店員となったお嬢様、あまりと常連客となった元見合い相手、海里の日常。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる