82 / 107
地球の管理人
2
しおりを挟む
宙森の管理センターで、計器の表示を見つめていたシルバーは呟いた。
「《弾頭》は、あの岩の固まりの地下に停船しているようだ……。地下から僅かながら、エネルギーの放射がある。何か、ありそうだな」
背後から《大校母》が、じりじりとした声で詰問する。
「シルバー! 妾は待てません。これ以上ぐずぐず引き伸ばすなら……」
「なんだね?」
振り返ったシルバーは嘲笑った。
「この俺を、どうするというのだ?」
言われて《大校母》は、ぐっと詰まる。確かに不死身に近いシルバーに対し、肉体的な恐怖を示すことは不可能である。たとえ真空の宇宙空間に放り出されても、シルバーは平気であろう。
せいぜい太陽のど真ん中に放り込むくらいが、シルバーに与える最大の罰であるが、その前にシルバーのことである。どんな暴れ方をするか予想もできない。そのことはシルバーも《大校母》も承知している。
遂に《大校母》は、哀願するような声になった。
「どうするのです? 妾をいいように引っ張りまわす、あなたの考えは、さっぱり判りません」
シルバーは、だらりと下げた両腕を広げた。
「だから、待て、と言っている。必ず、何か動きがあるはずだ。それまで少し時間がある。俺は、あんたの〝楽園計画〟とやらを聞きたいな。原型の脳を使って、あんたは何をしようとしているんだ?」
「ふっ」と《大校母》は溜息をついた。
「しかたありません。それでは教えましょう。これをご覧下さい」
《大校母》の合図で、その場にいた〝種族〟の一人が、センターの空中にホログラフィー映像を投影させた。それを見て、シルバーは首を捻った。
「なんだ、これは? 透明なタンクがずらりと並んでいるが……あっ! これは総て原型の脳か?」
シルバーの言葉どおり、ホログラフィーに映し出されたのは、無数の透明なタンクである。
内部には一つずつ、灰色の脳がぷかぷかと浮かび、タンクには生命維持装置が繋がれ、タンク同士は複雑な配線が接続されている。
《大校母》が説明する。
「これら原型の脳を納めたタンクは、ご覧の通り、データ回線で繋がれ、ネット・ワークを構成しています。このネット・ワークにより、原型たちは仮想空間で共通の夢を見ているのです」
「夢とは、何だ? 原型たちは眠っているのか?」
《大校母》は、ゆったりと首を振る。
「いいえ、その種の夢ではありません。原型たちに見せている夢は、新たな世界の夢なのです。重力定数、弱い力、強い力などの、妾が設定した宇宙の物理定数に基づいた、宇宙の夢を!」
シルバーは頭を振った。
「判らんな。あんたの言うことは、さっぱり判らん! もう少し、おれに判るように説明してくれ」
「それには、フェルミ・パラドックスについて説明しなくてはなりません」
「《弾頭》は、あの岩の固まりの地下に停船しているようだ……。地下から僅かながら、エネルギーの放射がある。何か、ありそうだな」
背後から《大校母》が、じりじりとした声で詰問する。
「シルバー! 妾は待てません。これ以上ぐずぐず引き伸ばすなら……」
「なんだね?」
振り返ったシルバーは嘲笑った。
「この俺を、どうするというのだ?」
言われて《大校母》は、ぐっと詰まる。確かに不死身に近いシルバーに対し、肉体的な恐怖を示すことは不可能である。たとえ真空の宇宙空間に放り出されても、シルバーは平気であろう。
せいぜい太陽のど真ん中に放り込むくらいが、シルバーに与える最大の罰であるが、その前にシルバーのことである。どんな暴れ方をするか予想もできない。そのことはシルバーも《大校母》も承知している。
遂に《大校母》は、哀願するような声になった。
「どうするのです? 妾をいいように引っ張りまわす、あなたの考えは、さっぱり判りません」
シルバーは、だらりと下げた両腕を広げた。
「だから、待て、と言っている。必ず、何か動きがあるはずだ。それまで少し時間がある。俺は、あんたの〝楽園計画〟とやらを聞きたいな。原型の脳を使って、あんたは何をしようとしているんだ?」
「ふっ」と《大校母》は溜息をついた。
「しかたありません。それでは教えましょう。これをご覧下さい」
《大校母》の合図で、その場にいた〝種族〟の一人が、センターの空中にホログラフィー映像を投影させた。それを見て、シルバーは首を捻った。
「なんだ、これは? 透明なタンクがずらりと並んでいるが……あっ! これは総て原型の脳か?」
シルバーの言葉どおり、ホログラフィーに映し出されたのは、無数の透明なタンクである。
内部には一つずつ、灰色の脳がぷかぷかと浮かび、タンクには生命維持装置が繋がれ、タンク同士は複雑な配線が接続されている。
《大校母》が説明する。
「これら原型の脳を納めたタンクは、ご覧の通り、データ回線で繋がれ、ネット・ワークを構成しています。このネット・ワークにより、原型たちは仮想空間で共通の夢を見ているのです」
「夢とは、何だ? 原型たちは眠っているのか?」
《大校母》は、ゆったりと首を振る。
「いいえ、その種の夢ではありません。原型たちに見せている夢は、新たな世界の夢なのです。重力定数、弱い力、強い力などの、妾が設定した宇宙の物理定数に基づいた、宇宙の夢を!」
シルバーは頭を振った。
「判らんな。あんたの言うことは、さっぱり判らん! もう少し、おれに判るように説明してくれ」
「それには、フェルミ・パラドックスについて説明しなくてはなりません」
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
あまりさんののっぴきならない事情
菱沼あゆ
キャラ文芸
強引に見合い結婚させられそうになって家出し、憧れのカフェでバイトを始めた、あまり。
充実した日々を送っていた彼女の前に、驚くような美形の客、犬塚海里《いぬづか かいり》が現れた。
「何故、こんなところに居る? 南条あまり」
「……嫌な人と結婚させられそうになって、家を出たからです」
「それ、俺だろ」
そーですね……。
カフェ店員となったお嬢様、あまりと常連客となった元見合い相手、海里の日常。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
サイレント・サブマリン ―虚構の海―
来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。
科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。
電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。
小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。
「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」
しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。
謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か——
そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。
記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える——
これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。
【全17話完結】
アガルタ・クライシス ―接点―
来栖とむ
SF
神話や物語で語られる異世界は、空想上の世界ではなかった。
九州で発見され盗難された古代の石板には、異世界につながる何かが記されていた。
同時に発見された古い指輪に偶然触れた瞬間、平凡な高校生・結衣は不思議な力に目覚める。
不審な動きをする他国の艦船と怪しい組織。そんな中、異世界からの来訪者が現れる。政府の秘密組織も行動を開始する。
古代から権力者たちによって秘密にされてきた異世界との関係。地球とアガルタ、二つの世界を巻き込む陰謀の渦中で、古代の謎が解き明かされていく。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
滝川家の人びと
卯花月影
歴史・時代
勝利のために走るのではない。
生きるために走る者は、
傷を負いながらも、歩みを止めない。
戦国という時代の只中で、
彼らは何を失い、
走り続けたのか。
滝川一益と、その郎党。
これは、勝者の物語ではない。
生き延びた者たちの記録である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる