27 / 124
河童淵の巻
一
しおりを挟む
「謝れっ!」
「いやだっ! 何で、おめえに謝らなければならねえ?」
「おれを〝土掘り〟と呼んだろ。おれは、河童の時太郎だ!」
「嘘だ! おめえは〝土掘り〟だ。なんで、おめえが河童の一人であるもんか!」
畜生っ! と叫んで、陽に焼けた真っ黒な肌の少年が、濃い緑色の肌をした同じくらいの年頃の河童に飛び掛かった。
たちまち取っ組み合いが始まる。
周りには、年頃も様々な河童の少年たちが目を輝かせて二人の喧嘩を見守っていた。
取っ組み合っている二人は、下帯一つの、ほとんど裸である。地面は濡れていて、二人の身体はすぐ泥だらけになる。
陽に焼けた少年のほうがやや体が大きく、体重も上回っているようだ。対する河童の少年は、ひょろひょろに痩せていて、とても相手になるような体格ではない。
が、二人の勝負は、ほとんど互角のようだ。
いや、河童のほうがやや優勢になっている。たちまち陽に焼けたほうを組み敷いて、腕を捩じ上げる。尖った口先を相手の耳もとに近づけ、ゆっくりと言い聞かせる。
「おめえは〝土掘り〟だよ。おめえに〈水話〉ができるか?」
勝ち誇ったように、にたりと笑った。
腕を捩じ上げられている少年は、利かん気そうな表情をした、人間の男の子だった。〈水話〉ができるか、と尋ねられ、悔しそうな表情を浮かべる。
「だけど、おれは、お前らの〈水話〉を聞き取ることができるぞ。〝土掘り〟に、そんな芸当、できるのか?」
へっ、と河童の少年は笑った。腕を離し、とんと肩を叩いた。
「それが〝土掘り〟じゃねえ証拠にはならねえな……。おめえに、おれたちの〝皿〟があるか? 背中の甲羅は、どうだ? なんにもねえ! おめえは〝土掘り〟だよ。時太郎ちゃん!」
捲し立て、けらけらと甲高い笑い声を上げる。周りの河童たちも、からかいに唱和して笑い声を立てた。
畜生……と、時太郎と呼ばれた少年は両拳を固めた。顔を真っ赤に染め、怒りを堪えて、その場を立ち去る。
河童の甲高い笑い声は、いつまでも続いていた。
「いやだっ! 何で、おめえに謝らなければならねえ?」
「おれを〝土掘り〟と呼んだろ。おれは、河童の時太郎だ!」
「嘘だ! おめえは〝土掘り〟だ。なんで、おめえが河童の一人であるもんか!」
畜生っ! と叫んで、陽に焼けた真っ黒な肌の少年が、濃い緑色の肌をした同じくらいの年頃の河童に飛び掛かった。
たちまち取っ組み合いが始まる。
周りには、年頃も様々な河童の少年たちが目を輝かせて二人の喧嘩を見守っていた。
取っ組み合っている二人は、下帯一つの、ほとんど裸である。地面は濡れていて、二人の身体はすぐ泥だらけになる。
陽に焼けた少年のほうがやや体が大きく、体重も上回っているようだ。対する河童の少年は、ひょろひょろに痩せていて、とても相手になるような体格ではない。
が、二人の勝負は、ほとんど互角のようだ。
いや、河童のほうがやや優勢になっている。たちまち陽に焼けたほうを組み敷いて、腕を捩じ上げる。尖った口先を相手の耳もとに近づけ、ゆっくりと言い聞かせる。
「おめえは〝土掘り〟だよ。おめえに〈水話〉ができるか?」
勝ち誇ったように、にたりと笑った。
腕を捩じ上げられている少年は、利かん気そうな表情をした、人間の男の子だった。〈水話〉ができるか、と尋ねられ、悔しそうな表情を浮かべる。
「だけど、おれは、お前らの〈水話〉を聞き取ることができるぞ。〝土掘り〟に、そんな芸当、できるのか?」
へっ、と河童の少年は笑った。腕を離し、とんと肩を叩いた。
「それが〝土掘り〟じゃねえ証拠にはならねえな……。おめえに、おれたちの〝皿〟があるか? 背中の甲羅は、どうだ? なんにもねえ! おめえは〝土掘り〟だよ。時太郎ちゃん!」
捲し立て、けらけらと甲高い笑い声を上げる。周りの河童たちも、からかいに唱和して笑い声を立てた。
畜生……と、時太郎と呼ばれた少年は両拳を固めた。顔を真っ赤に染め、怒りを堪えて、その場を立ち去る。
河童の甲高い笑い声は、いつまでも続いていた。
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる