蒸汽帝国~真鍮の乙女~

万卜人

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魔王の哄笑

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 館から離れるにつれ、ヘロヘロの様子が変わっていく。
 漂うような歩き方は徐々にしっかりとし、とろんとした目つきは鋭くなった。
 やがてぶるっと頭をふると、立ち止まった。
「ここはどこだ?」
「エルフの森よ」
 ケイが答え、ヘロヘロは目を細め彼女を見た。
「お前はエルフの娘だな。なぜ、ミリィとこんなところにいる?」
「わたしがミリィと一緒に旅立つ使命を受けたからよ。それに、わたしは〝お前〟呼ばわりされたくはないわ。わたしにはケイという名前があるの」
 ヘロヘロは歯をむき出して笑った。ずらりと鋭い牙のような歯が剣呑なひかりをはなつ。
「生意気な奴! おれのことを知っているのか?」
「知っているわ。ヘロヘロちゃん。あんた、魔王なんですってね」
「なにおう……!」
 ヘロヘロは顔を真っ赤にさせ、怒りの表情を見せた。片手を奇妙な形にかまえ、ケイに向かって身構える。
 むっ、とヘロヘロが気合をいれると、その手の平からばりばりと音をたて、電光が放たれた。
 ミリィは棒立ちになった。
 しかしヘロヘロの電光はあらぬ方向へそれてしまった。ケイの身体にはかすりもせず、まわりの巨木にあたり閃光を発して消えてしまう。
 ケイはにやりと笑った。
「どうしたの? あたしを狙ったのじゃないの?」
 ヘロヘロは怒りに震え黙っていた。
 ケイはゆっくりと話しかけた。
「あなたがなぜ失敗したのか、教えてあげる。あたしにはあなたの〝オーラ〟が見えるのよ。その〝オーラ〟が、あんたには相手を攻撃することはできないということを示しているから、平気だったの」
 ケイの話を聞いて、ヘロヘロは目を丸くした。
「〝オーラ〟……?」
「そうよ、魔法を使う者同士、見ることの出来る〝オーラ〟よ。あんただって、見えるはずじゃない?」
 ヘロヘロはつぶやいた。
「そうだ……忘れていた」
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