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伝説のガクラン
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「どうした、助三郎。物凄い音が聞こえたが。何かあったのか?」
助三郎の背後から格乃進が現れる。
格乃進は、助三郎と対峙する世之介を認め、立ち竦んだ。
「あんた、世之介さん……だろうな?」
ガクランの襟が世之介の顔を半ば覆っているため、一瞬、誰か判らなかったのだろう。助三郎は世之介を見詰めたまま、答えた。
「ああ、間違いなく世之介さんだ。だが、気をつけろ! 今の世之介さんは、普通じゃない!」
「何?」
尋ねかける格乃進に、世之介は猛然と突進した。一跳びで、格乃進に体当たりを食らわす。
爆発音に似た衝撃音が響き渡り、格乃進の身体は十間近く吹っ飛んだ。背後の壁にぶち当たると、格乃進の身体は壁に大きな罅割れを作ってめり込む。
格乃進は、ばらばらと壁の破片を飛び散らかせながら立ち上がる。格乃進の顔には呆然とした驚きが浮かんでいた。
助三郎は、さっと身構えた。
──格乃進! 加速しろっ!
助三郎は圧縮言語で格乃進に話し掛ける。賽博格同士が戦闘の間に使用する、高速言語である。
数分の一秒という一瞬の間に、言葉を圧縮して会話する。当然、超音波で、普通の人間には聞き取れない賽博格専用の会話方法である。
が、世之介には、はっきりと聞き取れていた。
──なぜだ、助三郎? 加速状態になる理由は?
格乃進が高速の会話で尋ねかける。
──さっきの体当たりを受け止めたろう? あんなの、普通の人間にできることか?
助三郎は、すでに加速状態に入っていた。その助三郎に対し、世之介は攻撃を加えている。
完全装甲された世之介の拳は、ほとんど砲弾の威力を秘めていた。固く握りしめられた拳が助三郎の身体にめり込んで、助三郎は衝撃に耐え切れず、後方に引っくり返った。
──助三郎、大事無いか?
格乃進が心配そうな声を上げる。
──心配するな。多少、応えるが、機能には異常はない。が、自分の賽博格体をあまり過信するな!
助三郎は立ち上がり、油断なく身構える。
格乃進は頷いた。
──ああ、さっきの正拳突きは只事じゃないな! しかし、あれほどの打撃を与えて、世之介さんの身体には何もないのか?
──判らん。世之介さんの着ている学生服が変化して、今こうして見ている鎧のような形になった。多分、戦闘用の形態だろう。
格乃進の口調に、憂慮が滲んだ。
──どうする、助三郎。このまま世之介さんを好き勝手にさせておくのか? 何があったか知らないが、これは異常だ!
助三郎は頷く。
──ああ、危険だ! 俺たちだけじゃなく、世之介さんにとっても危険だと言える。何しろ、俺たち賽博格と互角に渡り合えるほどだからな。しかし、このままでは埒があかない。少し、お相手をしてみようじゃないか!
格乃進も賛同した。
──そうだな。だが、あまり調子に乗るなよ。何しろ世之介さんは生身の人間だ。それを忘れるな!
──判っている……! だが、この店内では狭すぎる。何とか外へ誘い出そう!
──よし! 俺が出口を開ける!
格乃進は叫ぶと、一番外に近い壁に向かって、まっしぐらに突き進んだ。格乃進は両手を水車のように回転させ、壁に向かって機関銃のごとく拳を叩き込む。
一瞬にして壁の真ん中に無数の窪みが出現した。格乃進は足を挙げ、賽博格の力を最大に解放して壁に大穴を開ける。
加速状態にあるため、壁が破壊される音は聞こえない。破片が空中にゆっくりと漂う中を、格乃進は外へと身体を投げ出す。それを見て、助三郎は世之介を誘い込むように後じさる。
助三郎の顔に、驚きが弾けた。
素早く格乃進を振り返り、声を掛ける。
──格乃進、気をつけろ! 世之介さんは俺たち賽博格の速度に従いてきているぞ!
──何だとっ!
助三郎の背後から格乃進が現れる。
格乃進は、助三郎と対峙する世之介を認め、立ち竦んだ。
「あんた、世之介さん……だろうな?」
ガクランの襟が世之介の顔を半ば覆っているため、一瞬、誰か判らなかったのだろう。助三郎は世之介を見詰めたまま、答えた。
「ああ、間違いなく世之介さんだ。だが、気をつけろ! 今の世之介さんは、普通じゃない!」
「何?」
尋ねかける格乃進に、世之介は猛然と突進した。一跳びで、格乃進に体当たりを食らわす。
爆発音に似た衝撃音が響き渡り、格乃進の身体は十間近く吹っ飛んだ。背後の壁にぶち当たると、格乃進の身体は壁に大きな罅割れを作ってめり込む。
格乃進は、ばらばらと壁の破片を飛び散らかせながら立ち上がる。格乃進の顔には呆然とした驚きが浮かんでいた。
助三郎は、さっと身構えた。
──格乃進! 加速しろっ!
助三郎は圧縮言語で格乃進に話し掛ける。賽博格同士が戦闘の間に使用する、高速言語である。
数分の一秒という一瞬の間に、言葉を圧縮して会話する。当然、超音波で、普通の人間には聞き取れない賽博格専用の会話方法である。
が、世之介には、はっきりと聞き取れていた。
──なぜだ、助三郎? 加速状態になる理由は?
格乃進が高速の会話で尋ねかける。
──さっきの体当たりを受け止めたろう? あんなの、普通の人間にできることか?
助三郎は、すでに加速状態に入っていた。その助三郎に対し、世之介は攻撃を加えている。
完全装甲された世之介の拳は、ほとんど砲弾の威力を秘めていた。固く握りしめられた拳が助三郎の身体にめり込んで、助三郎は衝撃に耐え切れず、後方に引っくり返った。
──助三郎、大事無いか?
格乃進が心配そうな声を上げる。
──心配するな。多少、応えるが、機能には異常はない。が、自分の賽博格体をあまり過信するな!
助三郎は立ち上がり、油断なく身構える。
格乃進は頷いた。
──ああ、さっきの正拳突きは只事じゃないな! しかし、あれほどの打撃を与えて、世之介さんの身体には何もないのか?
──判らん。世之介さんの着ている学生服が変化して、今こうして見ている鎧のような形になった。多分、戦闘用の形態だろう。
格乃進の口調に、憂慮が滲んだ。
──どうする、助三郎。このまま世之介さんを好き勝手にさせておくのか? 何があったか知らないが、これは異常だ!
助三郎は頷く。
──ああ、危険だ! 俺たちだけじゃなく、世之介さんにとっても危険だと言える。何しろ、俺たち賽博格と互角に渡り合えるほどだからな。しかし、このままでは埒があかない。少し、お相手をしてみようじゃないか!
格乃進も賛同した。
──そうだな。だが、あまり調子に乗るなよ。何しろ世之介さんは生身の人間だ。それを忘れるな!
──判っている……! だが、この店内では狭すぎる。何とか外へ誘い出そう!
──よし! 俺が出口を開ける!
格乃進は叫ぶと、一番外に近い壁に向かって、まっしぐらに突き進んだ。格乃進は両手を水車のように回転させ、壁に向かって機関銃のごとく拳を叩き込む。
一瞬にして壁の真ん中に無数の窪みが出現した。格乃進は足を挙げ、賽博格の力を最大に解放して壁に大穴を開ける。
加速状態にあるため、壁が破壊される音は聞こえない。破片が空中にゆっくりと漂う中を、格乃進は外へと身体を投げ出す。それを見て、助三郎は世之介を誘い込むように後じさる。
助三郎の顔に、驚きが弾けた。
素早く格乃進を振り返り、声を掛ける。
──格乃進、気をつけろ! 世之介さんは俺たち賽博格の速度に従いてきているぞ!
──何だとっ!
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