ウラバン!~SF好色一代男~

万卜人

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工場の秘密

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〝支配頭脳〟が扉の向こうから全貌を現す。
「なんでえ、お前ら……。工場見学だなんて、物好きもいいところだぜ!」
 口調は不良じみていたが、声は甲高く、子供が精一杯ぐんと背伸びしているような印象がある。
 茜は「きゃっ!」と喜びの声を上げた。
「可愛い!」
 茜の歓声を耳にして〝支配頭脳〟は顔を顰めた。
「やめろよ、そんな言い方……。舐めんなよ!」
 茜は益々きらきら目を輝かせた。〝支配頭脳〟が苦りきればするほど、反対に可愛さが際立つ。
〝支配頭脳〟は、猫そっくりだった。しかも生後二、三ヶ月ほどの子猫である。
 その子猫が、額に鉢巻を締め、ガクランを着込み、なにやらチカチカ、ピカピカ無数のパイロット・ランプが瞬く機械のコンソールに向かって、一心に作業をしている。
「そうだ、俺たちゃ、この工場が完全に稼動できるよう見張っているところだ。おめえらのようなド素人に邪魔されたかねえや!」
〝支配頭脳〟は一匹……というのだろうか、やはり、どう見ても子猫そっくりに見える……だけではなく、数匹いた。
 数匹の子猫が、人間のガクランや、セーラー服を身に着けている。すっくと二本足で立って、分別臭く歩き回り、子猫の背丈に合わせた監視装置らしきコンソールの表示を覗き込み、あるいは幾つかのスイッチを操作して、忙しく作業していた。
「申し訳も御座いません。わしら、旅の者で御座いまして、番長星の色々なことを学びたく思い、ご迷惑と思いましたが、押しかけました。何卒、ご教授願えましたら幸いです」
 光右衛門はニコニコと満面の笑みを浮かべて愛想良く話し掛ける。光右衛門の馬鹿丁寧な口調に、最初に話し掛けてきた〝支配頭脳〟は明らかに狼狽した様子で、口元の髭がピクピクと震えている。
 白と黒の斑模様で、顔の半分が黒く、両目は金色に輝いていた。
「うん……まあ、そう下手に出るなら、おいらも考えを変えてもいいぞ。おいらたちに聞きたいことって、何だ!」
 光右衛門は腰を屈め、尋ねる。
「あなたがたは、そのう……猫そっくりに見えますが」
 子猫は即座に、そっくり返った。
「へっ! そう言うと思ったぜ! そりゃ、俺たちゃ、猫そっくりに見えるのは判ってら。しかし、俺たちゃ、猫じゃねえぞ。こう見えても、最優秀の猫型傀儡人なんだ!」
 猫型傀儡人……。世之介は内心、どこかで聞いたような文句だと思った。
 まさか、あの猫型傀儡人じゃあるまい。それが証拠に、腹の辺りには、ポケットが見当たらない……。
 光右衛門は質問を続ける。
「わしら、この工場を拝見致しまして、大変、感服いたしました。素晴らしい生産設備で御座いますな。この工場を監督なさる、あなたがたは非常に重要なお仕事をなさっておられるのでしょう?」
〝支配頭脳〟は、ひどく気分を良くしたようだった。口元の髭が、ピンと威勢良くおっ立つ。
「うん、ま、まあな! なんしろ、番長星の人間どもは浪費家だ。いくら二輪車や四輪車を供給しても、すぐ飽きて、次から次へ新車を欲しがる。だから、俺たちは、シャカリキになって、どんどん生産しなきゃならねえ……」
 ジロリと、その場に立っている茜と世之介を睨む。
「そこの二人! いくらタダだからって、ホイホイ新車を欲しがるんじゃねえぞ!」
「うふっ!」
 茜はまったく応える様子がない。逆に嬉しがっている。
 小走りに〝支配頭脳〟に近づくと、いきなり膝をつき、手を伸ばして、喉元を撫で上げた。
 ゴロゴロゴロ……。
 猫そっくりの〝支配頭脳〟は、うっとりと目を閉じ、喉を鳴らした。
 隣のセーラー服を身につけた、もう一匹の〝支配頭脳〟が、ぴしゃりと喉を鳴らしている仲間を叩く。
「あんた、この女に舐められてるわっ!」
 喉を鳴らした子猫は、びくっと身を震わせ、両目をかっと見開いた。
 ふーっ、と猫そっくりに威嚇すると、喉を撫でる茜の手に猫パンチを繰り出し、払いのける。
「舐めんなよ……!」
 茜は「ぷっ」と噴き出して、それでも謝った。
「御免……。でも、あたし、猫を飼いたいとずっと思ってたから……つい」
「だ~か~らっ! おいらたちは、猫じゃねえって言ってるだろう!」
〝支配頭脳〟は苛々と、地団太を踏んだ。
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