ウラバン!~SF好色一代男~

万卜人

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ウラバンの正体

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「それでは、お話ししましょうか。まずは、どうやって坊っちゃんを番長星へ招き入れることができたのか? 鍵は、そこにいるイッパチです」
 省吾の指摘に、イッパチは椅子の上で飛び上がった。
「あ、あっしが?」
 省吾は世之介に視線を当て、ちょっと首を傾げて見せた。
「坊っちゃんは、それも判っておられたようですね」
 世之介は高々と顎を上げたまま答える。
「俺は、尼孫《アマゾン》星に出かけるために【滄海】という船に乗り込んだ。その時に、見慣れない小型の宇宙船を見かけたが、あれはお前だったんだな。さあ、続けろ!」
「はい」と頷き省吾は言葉を続けた。
「イッパチをお供にするよう、申し上げたのは、わたくしです。イッパチには密かに行動予定《プログラム》を組み込み、坊っちゃんの乗り組んだ【滄海】が超空間に入って、ある時点でイッパチに非常脱出装置を動かすよう、指示を与えておきました。イッパチには自覚はなく、非常脱出装置をきっちりと手順どおりに操作したのです。いくらイッパチがお調子者で、偶然に手が触れたとしても、ちゃんとした手順を踏まなければ、脱出装置は動きませんからね。その結果、坊っちゃんの乗り組んだ【滄海】の船室は、番長星の近傍に予定通り、出現させることができたのです」
 世之介は静かに尋ねた。
「では〝伝説のガクラン〟は? 俺が番長星に漂着することを予想できたとしても、あの場所でガクランを手に入れることは、予想できなかったはずだ」
 省吾は肩を竦めた。
「簡単なことです。番長星の大規模量販店、美湯灰善ミュンヒハウゼンは、どこにでも存在する連鎖チェーン店です。いずれ坊っちゃんは、この番長星を脱出するために【ツッパリ・ランド】を目指すでしょうことは、予想できます。そのためには、必ず美湯灰善を利用する。総ての店の店員に、これこれこういう風体の客が来たら、ガクランを勧めるよう指示をしておいて、総ての店舗に、同じガクランを用意させたのです。番長星では極小機械ナノ・マシーンによる無限の生産能力により、同じ〝伝説のガクラン〟を何着でも用意できるのですからね」
 世之介は自分のガクランの裾を、ちょっと摘んで呟いた。
「一着だけじゃなかったのか……」
 省吾は指を一本ひょいっと立てて見せた。
「今は、一着だけです! 坊っちゃんが手に入れた瞬間、他の店にあるガクランは総て自己崩壊するよう、指示をしておきました。今では倉庫の中で、一山の埃に成り果てております」
 省吾は、得意そうであった。
 世之介は唇を舐めた。いよいよ肝心の疑問を尋ねる時がきたのだ!
「それで、どうして、俺を番長星におびき寄せたんだ? 何が目的だ?」
 省吾の唇が真一文字にニイーッと、微笑の形に引き伸ばされる。
「坊っちゃんに〝伝説のガクラン〟を身に着けて貰いたかったからです!」
 世之介は再び自分のガクランを見た。
「俺に?」
「はい。それで、そろそろ、わたくしにガクランをお返し頂きたいと思いまして。もう、よろしいでしょう? それは、わたくしの物です」
 省吾は座ったまま片手を差し出す。世之介は怒りの声を上げた。
「返せ、だと? 今更、何だ! なぜ、俺に着せる必要があった?」
「坊っちゃんでしか、できなかったからです。そのガクランは、見かけは唯のガクランでも、中身は一種の──まあ、知性体とでも言えるかもしれませんな。ガクランと着用者は一体となって、あらゆる事態に対応します。坊っちゃんが経験なすったことは、ガクランは着実に学び、成長するのです。もう、すでにガクランは、完全になりました!」
 世之介は軽く頭を振った。
「だから、なぜ、俺なんだ?」
「坊っちゃんは正直者……それも、馬鹿と超が付くほどの正直者です。しかも、真っ正直で、正義感もお強い。わたしは坊っちゃんが、こんな赤ん坊のころから見守っておりますから、ようく知っております。ですから、ガクランの着用者として理想的だったのです」
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